第4話 視野が狭い
「第一から四部隊、配置に着きました!」
「よし、全部隊俺に続け!出動!」
「「「「おう!」」」」
東北地方本部のアブソリュートタワーからジェットパックを背負って飛び立つ。
相も変わらずランウは生身である。学生が着る休日の私服の状態からベルトを使った変身で、戦士へと変化する。スサノオノミコトの力で風を操り空を飛んでいる。
今こうやって出動する場面は、戦地よりも確実的に安全なため、一般人が撮影する動画になりやすい。だから俺は昔から部隊員と同じ服装とヘルメットを着用している。
指定区域に近付いたところで無線が繋がる。
『隊長!被害状況は!?』
「まだ海辺辺りで被害はない。避難誘導も既に終えている。安心してぶっぱなせ!」
『『『『了解!!!!』』』』
本来はこうだ。前回の結界の中の破壊活動はほとんど起こりえない。
あぁ、本当に頭が痛い。あのASから情報が引き出せていれば…………!いや、止めよう。過ぎたことだ!
頭を振ってクリアにし、いつも通り相棒を差し込み、火縄銃を構える。
「リリース!」
武装の縮小を解放し、俺は戦士へと変化する。
『隊長、現着します!』
「あぁ、了解だ。全員警戒態勢!
着地!」
『第一、着!』『第二、着!』
『第三、着!』『第四、着!』
「よし!問題なしだな!方陣で構え!」
俺を中心に第一から第四が全方向に銃を構える。
「導け!敵の居所へ!」
八咫烏の能力で光の道を形成する。
「……西北1.2km!左右を警戒しつつ前進!」
「「「「おう!」」」」
「ランウ、聞こえるか?」
一応敵の位置を伝えるために、ランウへの無線を繋いだ。ほうれんそうは大事だからな。
『何ですか?』
繋がったことを確認して、光の道をランウの元へも繋げる。距離は……
「ランウから見て西に2.5km。そこに今回の敵がいる。至急向かってくれ。」
「あなたに言われなくても分かってます!」
そんな、怒らなくても良いのに………
ドン!
「っ!今のは!?」
「……いや、敵ではない。ランウの攻撃だろう。」
さっきランウに繋げた光の道が、敵を示す光の道とぴったり合わさっている。
「では!」
「我々も急がなくてはな。また胡座をかいた高給取りと言われてしまうぞ!」
「それは隊長でしょう?」
部隊長の一人が突っ込み、笑いが起こる。
ガチトーンでボロクソに言われると傷付くが、こんな風に笑えるなら言われても構わない。これも、緊張を解すのに最適だ。
「うわ………」
誰が言ったか分からないが、戦場は想定よりも悲惨だった。
ランウなのかASかは知らないが、地面はボコボコで木々は薙ぎ倒されていた。
「……よし、部隊員はASを逃がさないように散開!隙を見て追撃だ!」
「「「「了解!!!!」」」」
俺はランウのサポートに回る。
「御祓払い!」
ランウが手から水を生み出し、ASに向かってぶつける。
「小癪なクソガキが!我に水遊びな…ぞ?」
「はっ!ソイツは穢れを清める水だ。てめぇには良い薬だろ?」
なるほど、ASは禍津日神に作り替えられた神だから、その禍津日神を払おうってことか。なかなか考えたじゃないか。
「調子に乗るなよ!」
っ!
光の道が作られる。それが俺の意思以外で現れた場合、誰かが死ぬということ。
「手がかかるな!」
俺はランウを横に突き飛ばす。
「な!?」
それによってランウに向かっていた光の道が消え、ASが放った攻撃を目の前に、また光の道が変化する。
俺はそれに沿って跳躍し、ASの攻撃を避ける。
「ふ、骨のあるやつもいるではないか!」
ASのさっきのダメージは回復したのか外見は元に戻っていた。
「どけ!」
「がっ!?」
突然横から衝撃を受ける。
「目立ちたいだけのロートルなんて要らねぇんだよ!俺の邪魔をするな!」
ランウはそう言ってASに突撃をした。
「ぐ、ってて。」
『隊長、大丈夫ですか?』
「恥ずかしい所を見られたな。」
『いいえ、ああしなければランウが危険だったのでしょう?我々は知っていますよ。』
「………ありがとう。
さぁ、気を引き締めろ。」
『は!』
本当に、有難い限りだ。
俺は身体についた砂埃を払い、光の道を使った援護をする。
「着火。…………照準クリア。」
ダン!
光の道の弾道とタイミングを見て銃を放つ。火縄銃ではあるが、普通の銃としても使える。ただ手順を踏むと威力が格段に上がる。
そのタイミングでASはランウの攻撃でバランスを崩し、ランウは深追いしないようにバックステップをした。
光の道はやはり便利だな。俺が火縄銃を撃ったタイミングで四方から部隊員達の射撃も追加だ。
「ぐぅ!?やるではないか………!」
「余計な!……暴風斬!」
「舐めるなよ、ガキが!」
「チッ!」
あの暴風斬を受け止めるか…………
「土泥閃波!」
ASは辺りの地面を操り、暴風斬を受け止めながらランウを突き飛ばした。
「ぐう!?」
周辺の土や泥を操るのか。まずいな、ただの氏神ではなさそうだ。
「全部隊員、撃て!」
返事はなく、発砲音が響く。
俺は一発走り撃ちをしてからランウの安否を確認に向かう。
「猪口才な!」
「ランウ無事か!?」
「うるさい!どけ!」
俺の手を振り払い、ASに向かって走る。
「待て!ランウ!」
「うるさい!ハアァァァァァァァァァァ!御祓払いの太刀!」
「この程度………ぐ!?」
同じように剣を掴もうとしたASが驚きの表情を浮かべる。
「くらえぇ!」
その掴まれた手すらも切り裂き、ASを袈裟斬りにする。
「ガアァァァァァァ!?!?」
ASが粒子となり始める。
「ふぅ。ヤタラス、今日もあなたは使えませんでしたね。」
ランウがドヤ顔で俺を睨む。
「……そうですね。」
もーどうでもいいよ。俺はやることやればいいし。ちょっと吹っ切れたわ。
っ!?
光の道が……っ!
俺の意思以外で出た光の道の猶予は……五秒!
すかさず火縄銃を手放し、右手で八咫烏のアクリルカードを抜き取り、右足で火縄銃を受けつつ手元まで蹴り上げ、アクリルカードを挿入する。
三
火縄銃を構え、照準を合わせる。
二
「ショット!」
引き金を引き、弾を打ち出す。
「土……」
パン!
わずかな動きでランウにかざしていたASの手が地面に落ち、完全に粒子となって消える。
「な!?」
ランウが驚いて俺を見つめる。
流石にこれは注意すべきだな。
「ランウ、トドメは最後まで……」
「いい加減にしろよ!」
「………え?」
そんな怒んなくても……
「俺の手柄を取ったつもりか!?その程度で、よく今まで戦ってこれたな!どうせ全てロウマに任せていたんだろ!」
俺の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らかした後、不機嫌に東北地方本部へと飛んで帰っていった。
「…………酷。」
俺は暗い気持ちのまま部隊員に指示を飛ばした。
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