第8話

   

「……その乗客たちは、みんな死んじゃうんだ。それぞれが思っていた色に対応する死に方で」


 自分たちの状況に合致する都市伝説を語る中で「みんな死んじゃう」という言葉が出てくれば、聞いている私たちは、さすがにゾッとする。

 岡田も黙ったほどであり、この場が静まり返った分、離れた場所の喧騒もよく聞こえてくるくらいだった。

 しかし、そんな静寂は一瞬しか続かない。あえて陽気な声で、岡田が再び口を開いたのだ。


「おいおい、色に対応する死に方って……。『赤い紙、青い紙』のパクリか? あれも『トイレの花子さん』みたいに、トイレを舞台にした学校怪談の一種だったよな?」

「お化けか何かに質問されて、その答え次第で殺されてしまう話だろう? 確か『赤い紙』と答えれば体中からだじゅうから血を噴き出して真っ赤になって、『青い紙』だと体中からだじゅうの血を抜き取られて真っ青になって……」

 岡田の発言に私も続いたが、阿部は再び首を振ってみせる。

「うん、だいたいそんな感じ。だけど具体的には少し違っていて、血を噴き出すとか抜き取られるとかじゃなくてね。『雨上がりの白いタクシー』の場合は……」

 肝心の話は、その先だったのかもしれない。

 しかしそれ以上、阿部は続けられなかった。

 体の震えが急に激しくなったかと思いきや、真っ赤な顔のまま白目を剥いて、テーブルに倒れ込んでしまったのだ。


「おい、阿部……」

「どうした? しっかりしろ!」

 私と岡田だけでなく、他の者たちも慌てて集まってくるが……。

 阿部は完全に意識を失っており、もはやピクリとも動かなかった。

   

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