第6話

   

「しかも、それだけじゃなくてさ。小島さんと話が合わない点は、他にも合って……」

 岡田の不可解な報告は、私が内心で驚いている間も、さらに続いていた。

「……俺たちが乗ってたタクシー、小島さんは『白いタクシーだった』って言うんだが」

 白いタクシーという言葉で、私は一瞬、白タクを思い浮かべてしまった。

 日本では、人を乗せて営業するタクシーは、ナンバープレートが緑と法律で決められている。白ナンバーは自家用車なのに、それで違法にタクシー業務をやっている場合「白タク」と呼ばれるわけだ。

 しかし小島さんがわざわざ、通り過ぎた車のナンバープレートに注目するはずもない。実際、ここで話題に上がっているのは車体の色であり……。


 白タクについて考えて、頭の中で寄り道していた私より先に、阿部が岡田の発言に応じていた。

「それはおかしいよね。僕たちが乗ってきたのは、真っ赤なタクシーだったよね」

「はあ? それも違うだろ。赤じゃなくて青だ。全体的には青色で、白いラインや白い文字がワンポイントで入ってた」

 小島さんの目撃談どころか、岡田と阿部の間にも食い違いが生じている。

 しかも、どちらも間違っているではないか! 私たちが乗ってきたタクシーの色は……。


「おいおい、二人とも……」

 私は割って入ろうとしたのだが、私の言葉は、今度も遮られてしまう。

 阿部が素っ頓狂な声を上げたのだ。

「あっ! これって『雨上がりの白いタクシー』だ……!」

   

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