第3話

   

 タクシーから降りた私たちは、大きな看板の下に小さな提灯が掲げられた、灰色のビルへと入っていく。何度も利用している、お馴染みの居酒屋だ。

 団体客用の大部屋は二階以降にあり、予約してあるサークル名を告げると、私たちは三階へ案内された。

 階段を上がってすぐの、畳敷きの部屋だ。壁や天井はブラウン系で統一されており、照明の色合いの関係だろうか、畳も緑というより茶色っぽく見えていた。

 長方形のテーブルをいくつか繋げて、横に長いテーブルが二列用意されている。私たちはタクシーで来た分、かなり早く着いたらしく、まだ座っている者は少なかった。

 それでも、手前のテーブルの真ん中あたりに、既に数人のグループが形成されている。一年生同士のようで、ちょうど男女が半々くらいだ。


「ほら、お仲間がいっぱいいるぞ」

「あっ、はい」

 岡田にポンと背中を押されて、山下くんは軽く私たちに頭を下げた後、一年生グループの方へと向かっていった。

 もちろん私たちはそちらに混ざるつもりはなく、山下くんが座るのを視界の片隅で見届けてから、別の場所へ。

 奥のテーブルの右端、まだ誰も座っていないところを、男三人で陣取った。


 それから少し経つと、ようやく他の者たちも来始めた。

 やはり雨の影響があったのか、いつもと比べて集まりが悪い。今回の新歓コンパの幹事も、本来ならば幹事役は早く来ているべきなのに、全体の半分よりも遅かったほどだ。

 予定の開始時刻から五分か十分くらい遅れて、コース料理だったり、コースに含まれているビールだったりが運ばれてくる。

 こうして、その日のコンパが始まったのだが……。

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る