第2話
「そういえば、知ってるかい? 『雨が
「えっ、同じじゃないんですか」
「うん。違いなんて気にせず使うやつも多いけど……」
後部座席では、岡田が山下くんに話しかけている。
ちょっと座席の配置をミスったかもしれない。
降りる際の支払いのことを考えて、そこに一年生を座らせるべきではないだろうという理由で、私が助手席。残り三人が後部座席だった。
てっきり岡田と阿部がくっ付いて座るかと思いきや、彼らは山下くんを真ん中にしている。先輩二人に挟まれる格好では、山下くんも少し息が詰まるのではないだろうか。
実際、特に興味もなさそうな岡田の話に対して、いかにも「仕方なく」といった感じで合いの手を入れている。
「……『雨が
「へえ、なるほど。じゃあ、こうしてまた降ってきたのだから、さっきの状態は『雨が上がった』じゃなく『雨が
「そう、そういうこと。覚えておくと、何かの足しになるかもしれないぜ! だから……」
いやいや、そんな
私は心の中でツッコミを入れるだけで、あえて二人の会話には口を挟まなかった。
とはいえ、そのままにしておくのは、少し山下くんが可哀想な気もする。一応は助け舟のつもりで、岡田の話を遮るように、わざと大きな声を上げた。
「ああ、運転手さん。次の交差点です。あの信号を越えたあたりで、停まってください」
もちろんタクシーの運転手はプロだ。最初に居酒屋の名前は告げてあるし、改めて停車位置の指示なんて必要ないだろうけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます