第15話 ある中

最初は軽く飲む程度だったが、次第にその量が増え、夜になるといつもお酒を飲む習慣が戻ってきた。酒を飲んでいる間は、現実の孤独や不安を忘れることができたからだ。鵜飼と遊ぶ日以外は、ほとんど一人で酒を飲み続ける生活が続いた。

やがて、秋生は次第に「うつ」っぽい状態に陥っていった。朝、目が覚めても何もする気が起きず、ただ無気力に一日を過ごすことが多くなった。何をするにも意欲が湧かず、日々がただ淡々と過ぎていく。何度も眠りにつく前に「こんな生活でいいのか?」という問いが頭をよぎったが、それに対する答えが見つからなかった。

お酒を飲んでいる間は、そんな考えを一時的に追い払うことができた。しかし、二日酔いの朝に襲ってくるのは、自己嫌悪と虚無感だった。以前は誇らしかった投資の成功も、今ではその大金をどう使うべきか分からず、ただ無意味に思えるばかりだった。

秋生は次第に社会とのつながりを失っていった。かつての同僚たちには連絡することもなくなり、外出も億劫になり、日々が酒とともに過ぎ去っていく。友人の鵜飼との時間さえも、以前のように楽しむことができなくなり、彼との会話も次第にぎこちなくなっていった。

ある日、鵜飼が心配そうに秋生に言った。

「お前、最近ちょっと様子がおかしいぞ。大丈夫か?」

秋生は無理に笑おうとしたが、その笑顔はどこかぎこちないものだった。

「大丈夫さ。ただ、少し疲れてるだけだよ」

と、彼は言ったが、その言葉には力がなかった。自分でも気づいていた。お酒に依存し、何もかもがどうでもよくなっている自分に。

心の中で、「このままじゃダメだ」と何度も思いながらも、具体的な行動に移す気力が湧かない。その繰り返しが続くうちに、秋生は次第に深い孤独と絶望の中に沈んでいった。かつて手に入れた自由は、今では彼を縛りつける鎖のように感じられるだけだった。

秋生は、もう一度自分の人生を見直す必要があると感じていたが、その一歩を踏み出すのが恐ろしくもあり、またそのためのエネルギーがどこからも湧いてこなかった。自分がどこへ向かっているのか、どこへ行けばいいのか、全く見えなくなってしまった。

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