第12話 FIRE
そんな中、「FIRE」という言葉に出会った。「Financial Independence, Retire Early」——経済的自立を達成し、早期リタイアを実現する生き方。そのコンセプトは、秋生にとってまさに今の自分が目指すべき道のように思えた。長年の工場勤務から解放され、自分の時間を自由に使える生活を手に入れるための道筋がそこにあった。
秋生はテスラ株の急激な値上がりに感謝しつつも、そのまま持ち続けることのリスクも感じ始めていた。株価がこれ以上上がる保証はなく、逆に大きな下落があれば、せっかく手に入れた自由も一瞬で失ってしまうかもしれない。そこで彼は、より安定した投資先に資産を移すことを決意した。
秋生は全てのテスラ株を売却し、その資金をSP500のインデックスファンドに移した。これまでの高リスク・ハイリターンから一転、堅実で長期的な成長を見込める投資先への変更だった。SP500はアメリカの主要企業500社を網羅しており、安定したリターンが期待できる。それは彼の心に安心感をもたらし、FIREを実現するための強固な基盤となった。
この資産配分の変更により、秋生は月々の生活費を十分に賄える安定した収入を確保できる見通しを立てた。もはや、毎日工場へ通い続ける必要はなくなった。
そしてある日、秋生は決意を固めた。工場の上司に辞表を提出し、これまでの人生を支えてきた仕事から卒業することを告げた。上司や同僚たちは驚きを隠せなかったが、秋生はすでに新たな人生のビジョンを見据えていた。
「今までお世話になりました。これからは、自分の時間を大切にして生きていきたいと思います。」
秋生は穏やかな笑顔でそう言い、長年働き続けた工場を後にした。これからの生活は、全く新しいものになるだろう。時間に縛られることなく、自分が本当にやりたいことを追求できる自由な日々が彼を待っている。
FIREを達成した秋生は、人生の次なるステージへと踏み出した。新しい趣味や学び、そして旅立ちの準備を始める。堅実に生きることを大切にしてきた彼が、今度は自分の夢や目標を自由に追求できる生活を手に入れたのだ。
テスラ株からSP500への転換と、それによるリタイア生活——秋生にとって、それはまさに第二の人生の幕開けだった。
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