第11話 絶頂

テスラ株を購入してからの2年間、秋生の生活は劇的に変わった。あの夜、泥酔状態で貯金のほぼ全額を投資したことを悔やんでいた彼だったが、やがてその決断が思いもよらぬ大成功へとつながっていった。

最初の数ヶ月は、株価の動向に一喜一憂しながらも、日々の生活を淡々と過ごしていた。しかし、半年が過ぎた頃からテスラの株価は急激に上昇を始めた。秋生は最初、それが一時的な現象だと思い込もうとしたが、株価の上昇は止まることを知らなかった。

「まさか…こんなことが…」

秋生は毎日株価を確認するたびに、信じられない思いに駆られた。購入時の数倍にまで跳ね上がった株価は、まるで彼の心を揺さぶるように、さらに高みを目指していた。

その後の1年で、株価はますます上昇し、秋生の投資額は最初の13倍にまで膨れ上がった。1,000万円が1億3,000万円。驚愕の数字を目の当たりにした秋生は、現実のものとは思えない高揚感に包まれた。これまでの慎重で堅実な生活とは一変し、彼の心は浮足立ち、日々の生活が色鮮やかに変わっていくのを感じた。

「信じられない…俺が…こんなに…」

彼は株価の急上昇に酔いしれ、かつての後悔や不安はいつしか消え去っていた。お酒を飲みながら、豪華なレストランでのディナー、国内外の旅行、そして一度も手にしたことのないような高価な品々—すべてが彼の手の届く範囲に入ったと妄想しているのが日課となった。

「これが…成功者の気分なのか…」

秋生は自転車に乗って工場へ向かう日々とは全く異なる、非現実的な幸福感に包まれていた。株価が上がるたびに、彼の心はスリルと歓喜で溢れ、さらに高いリスクを取ることさえ楽しめそうな気分にになった。

秋生は日々、携帯電話の画面を凝視しながら、テスラの株価がさらに上昇するのを期待していた。その疾走感は彼の心を駆け抜け、もはや彼の生活は以前のような地に足のついたものではなく、常に高揚し続けるアドレナリンに支配されていた。もはや堅実さとは無縁の世界—彼は、新しい自分を手に入れたかのような感覚に酔いしれていた。

「俺は、このままどこまで行けるんだろう…」

秋生はそう考えながら、次の大きな波を求め、さらにアクセルを踏み込む準備をしていた。株価の上昇に合わせて、彼の欲望もまた、果てしない高みに向かって疾走していくのだった。

秋生は、テスラ株が13倍にまで膨れ上がったことで、一気に1億3,000万円の資産を手に入れた。まるで夢のような出来事だった。彼はその資産がもたらす自由を感じ、これまでの堅実な生活から大きく一歩を踏み出す決断をすることになった。

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