第8話 新型コロナウィルス

そんな世の中が変わってしまったのは、あっという間だった


新型コロナウイルスが発生し、世界が一変する出来事が秋生の生活にも大きな影響を与えた。そのニュースが最初に報じられたとき、秋生はテレビのニュース番組を見ていた。最初は遠い国の出来事のように思えたが、ウイルスが瞬く間に世界中に広がり、日本でも感染者が増加していく中で、その危機が身近なものとなっていった。

工場でもすぐに対策が取られた。従業員たちにはマスクの着用が義務付けられ、作業前後には手洗いや消毒が徹底された。また、作業エリア内外でマスク越しでの会話が徹底されるようになり、飲み会は中止、従来のように密接なコミュニケーションは難しくなった。秋生も、いつもとは違う緊張感の中で日々の仕事をこなすようになった。

工場での仕事は生活必需品を製造するため、稼働を続けなければならなかったが、それでも感染のリスクはどこにでも潜んでいる。秋生は自分だけでなく、同僚たちや家族のことも心配しながら、毎日を過ごしていた。

外出の自粛要請が出されると、秋生の生活はさらに制限された。休日の外出は極力控え、スーパーでの買い物も必要最低限に抑えた。家にいる時間が増え、自炊の頻度が高まり、インデックス投資に関するYouTube動画を見ることが以前にも増して習慣となった。

一方で、工場内でも感染者が出る可能性が現実味を帯びてきた。職場全体がピリピリとした空気に包まれ、誰もが無言のプレッシャーを感じながら働いていた。秋生も、少しの体調不良にも過敏になり、日々の健康管理に細心の注意を払っていた。

やがて、ついに工場内でも感染者が確認されたという報告が入った。食品工場はそれでも稼働を停止できず、少ない人数ながら、できる限り製造した。秋生は社内に感染者が出たという知らせを聞いたとき、胸が締め付けられるような不安を感じた。自分が感染していないか、同僚たちは大丈夫か、家族に影響が出ないか、次々と心配事が頭をよぎった。

その後、工場は感染対策をさらに強化し、勤務シフトを見直すなどの措置が取られた。秋生は、自分の仕事が続けられることに感謝しながらも、これまでとは違う生活に順応していく必要があると痛感した

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