第12話 夏祭り その2

 舞と一緒に夏祭りを楽しんで、いつしか俺と舞は二人っきりで手をつないで歩く。

 青春経験値の増加を感じながら、ドキドキとする。

 いつもそばに居たはずなのに、今日はなぜか初めて会った時のようで。

 花火大会がもうすぐだ。

 「またよん、花火だって。楽しみだなぁ」

 「あぁ、そうだな、転ぶんじゃないぞ」

 「大丈夫、大丈夫、平気だって……うわ!?」

 「舞!?」

 俺はこけそうになった彼女の体を支えようと思わず彼女の胸のところに自分の腕を出す。

 俺は腕に力を入れて、彼女の体を起たせる。

 「えへへ、危なかったね、ありがとうまたよん」

 「まったく」

 「えと……」

 「?」

 「腕、そろそろ話してほしいにゃぁ」

 「あっ悪い」

 舞の体は鍛えてばかりだから重くて硬いのだと思っていたら実際のところは軽くて、柔らかくて、思わず手を出してしまうことを後悔してしまいそうなほど儚く華奢だった。

 俺は大きな木に座る。

 舞も隣に座る。

 「疲れたな」

 「そうだね…………ねぇ」

 「ん?」

 「子供の頃の事覚えている?」

 「あぁ、泣いているお前をあやしたことをしっかりと」

 「そ、それは忘れてよ、もう、そうじゃなくてさ」

 俺は笑う。

 「あぁ、一緒に夏祭りに来て遊んだことなら昨日のことのように思い出せる」

 「そっか」

 「お前も覚えているよな」

 「うん……その時、またよん言ってた」

 「なんか言ってたっけ?」

 「うん、言ってた」

 ——————お前とは離れないって。

 「嬉しかったな。今もそばに居てくれるし」

 「たまたまだろ」

 「それでもだよ」

 座り込んで小首をかしげながら月明りに照らされている舞の瞳はどこか揺れており湖の水面のようにきれいで静かだった。


 俺と舞は立ち上がり手をつないで花火を見る。

 花火はアナウンスの後、ドンドンとパチパチと音を立ててはじけては消えていく。


 俺は舞の横顔を見ていた。

 舞も花火を見ていたけれど俺の視線に気づいていたずらをした子供のような笑みで見つめ返す。

 彼女の唇がどうしたのときいたのもかまわず俺は思わず本心をいった。


 ——————付き合おうか俺達。

 そしてその後に好きだよと俺は言う。


 舞は瞳を大きく見開きうつむく。

 嫌だったのだろうか。

 ひときわ大きい花火がはじける。

 その音に隠れて舞は俺の首に腕を絡めてキスをする。

 

 —————大好き!と彼女は花火にも負けないくらい大きな声で言った。


 そうして俺たちは恋仲になった。

 

 —————青春経験値が100増加しました。

 青春レベルが1上がりました。


 

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