第十四話 処理班
僕がそんな決意を固めている横で、ネネ先輩はダウンしたリーゼルさんに駆け寄っている。
「あんた……いいパンチだったぜ……」
「ほんっとうにごめんなさい!」
ああよかった。喋れるってことは案外無事そうだ。やっぱり見た目通りタフな人みたいだね。
いやしかし、こんな騒ぎを起こして、処理班の方を妨害してしまっていたら申し訳ないな。一刻を争う作業だろうに、お騒がせして申し訳ないって謝りに行った方がいいかな……?
なんて思ったのも一瞬だけで、僕はその後すぐに、処理班が僕らのことを蚊ほども気にしていないことに気が付いた。
彼らは自分たちの仕事に集中しているようで、その証拠に、道路の修繕はもうほとんど終わっている。
例のヤツが飛び出した穴はすでに塞がっているし、アスファルトのひび割れもあとちょっとでつなぎ合わされそうだ。
「彼らもプロですね……」
「ええ、だから早く帰りたいんですよ」
そんな言い方しなくてもいいと思うけど、事実ではあるんだろうな。
作業を一つ終えるごとに、お互いに声を掛け合っているし、耳をすませば仕事後の打ち上げをどこにするだの、今日は誰々のおごりだのといったような会話も聞こえてくる。
案外、クリスタさんの言う通りなのかもしれないな。
「むむむ、おや……?」
「どうしました?」
僕が考えこんでいたら、何やらクリスタさんが唸り声を上げ始めてしまった。ネネ先輩は相変わらずリーゼルさんに謝りこんでいるし、今オペレーターの声が聞こえているのは、僕だけのようだ。
「いえ、大したことではありません。ただ……」
「ただ?」
「駅ビルに突入したはずのC班からの連絡が、途切れてしまったようです」
「結構大したことですね、それ」
何を思って大したことないって言ったんだろうか。僕らが使っているのはクリスタさんによる電子とサイキックテレパシーの複合回線だぞ。衛星軌道上からここまで届く通信が、急に途切れるわけないじゃないか。
「まあ、彼らには彼らのオペレーターがいるはずなので……いやしかし、え?」
「どうしました?」
「ちょっと待っていてください」
お、おう。もちろん僕には言われた通り待つことしかできないけれど、何があったんだろうか。
流石に、ネネ先輩とリーゼルさんの二人も僕が一人でブツブツ言っていることが気になったのか、僕の方へ駆け寄ってきている。
「どうしたの?」
「いえ、処理班の方で何かあったそうで、クリスタさんが……確認してくれているのかな?」
「どうして疑問形なのよ」
「だって、いきなりどこかに行っちゃうんですもん……」
しょうがないじゃないですか、本当にそうなんだもの。僕だって確実なことが言えるなら言いたいですよ。
めちゃくちゃ気になる引きで待っていろと言われて、落ち着いていられるほど僕の思考回路は大人じゃないので。
「失礼しました。事態がわかりましたよ」
「お、こっちにも来てるってことは、そこそこ重大な事態だな?」
「私にも聴かせてくれるのね」
なにやら二人が張り切っているけれど、僕はと言えば全く呑み込めていないわけで。
「結局何が起こったんです?」
僕がそうやって尋ねたら、クリスタさんは少しだけ黙って、簡潔に要点を伝えてくれた。
「駅ビル内八階にて、敵性外星人による襲撃が発生。処理班が助けを求めています」
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