第十二話 ドカァン! あるいはBOOOM!
「リーゼル。彼も保護艦隊の一員ですよ」
「お、そうかそうか、よろしくな!」
「は……はい」
ということはこの、リーゼルと呼ばれた方もエージェントなのか。考えてみれば、地球上にこんな生物がいるわけないし、僕を助けてくれたということは、友好的でもあるはずだ。
つまり、味方の外星人というわけだから、この人も保護艦隊のエージェントであるというのは、そこまでおかしな話ではないのか……ないのか?
「ともあれ、不安の種はどうにかなりましたね」
「不安の種?」
「あの自動車ですよ。ああも投げつけやすいものがあっては、民間人に被害が及びかねません」
確かに、巨木のような見た目をしているから気がつかなかったけれど、あの枝はなかなか器用なようだ。
自分の幹をかばったり、側面から回り込むように攻撃したり。あの分だと、自動車を投げ飛ばして民間人を攻撃したり、建造物を破壊しようとすることもありえたわけだ。
近くに僕がいたから、僕を狙ってくれたけど、向こうのビルに当たっていたらどうなっていたかわからないわけで……うん? いや、それって……
「ひょっとして僕、オトリにされました?」
「おや、よくわかっているじゃないですか」
「ええ……」
どおりで。ネネ先輩だけ許可が下りて、僕に待っていろだなんて、おかしいと思ったんだよな。確かに僕のいるあたりにはビルもないし、広場みたいに開けているから、被害は少なく済むだろうけどさ。
「さておき、オペレーター。そろそろ俺も加勢したほうがいいんじゃないか?」
そうだ、ネネ先輩の方は……と思って、交差点の中央を見ると、勝負はもう決しようとしているところだった。
ネネ先輩の方は、白い体毛に汚れこそあれ、傷の一つもないのに対して、巨木の化け物のほうは、満身創痍といった様子である。
あれだけの数伸びていた枝はほとんどが根本から叩き落され、残っている数本も、前に見た半分ほどの長さになってしまっている。
はっきり言って、加勢が必要なようには見えないけれど……
「そうですね、逃げられないように、お願いします」
「OK!」
ああなるほど、そういうことか。僕がリーゼルさんの役割に納得したのも束の間、彼は再び羽を激しく動かして、大きくしゃがみ込んだ。
「CHAAARGE!」
迫力のありすぎる雄叫びと共に、射出されるリーゼルさん。その勢いはすさまじく、風切り音を通り越した爆発音が僕の耳に響く。
携行型のロケットランチャーでも、初速はこれほど出ないんじゃないだろうか。なんにせよ、地面が縮まったように突撃したリーゼルさんは、その額にそそり立つ一角を前方へ向け、四本の腕を開いていた。
――ドカァン! あるいはBOOOM!
そんな音すら生温いほどの勢いで、今まさに地中に潜り直そうと試みていた紫の巨木は貫かれる。幹にリーゼルさんの一角が突き刺さり、その後四本の腕でカッチリ固定されたのだ。
そのまま、スープレックスの要領で根本から引っこ抜かれる巨木。流石に残った根のせいで、背後に叩きつけるとまではいかなかったものの――
「ナイス! これでとどめよ!」
ネネ先輩が必殺の一撃を放つには、十分すぎる隙を、リーゼルさんは作っていた。
「
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