間話 フードコート

「ともあれ、まずは腹ごしらえですね」


 エスカレーターを四階まで上がると、開けた場所に出た。大小様々四肢の数も様々な種族が行きかう広場には、数多くのテーブルセットが設置されている。この広場は所謂、フードコートと呼ばれるものだ。


 入り口左には焼き物屋の月人つきじんギンダゴン、右の奥には白濁スープの中華麺専門店、銀河ぎんがーハット。その隣には丼ものとカレーの宙域(ちゅき)屋があって……


「えっと……なんか酷くないですか?」

「何がです?」

「いえ、なんでも……」


 うん、多分あんまり聞いちゃいけないんだろうな。なんとなくあまり触れない方がいい気がするし、そっとしておこう。


「ともあれ、今日は就任祝いでもありますから、ここは私が奢ってみせましょう」

「えっ! いいんですか!?」


 クリスタさんが控えめなジェスチャーでサムズアップしつつそう言うので、僕は思わず聞いてしまう。そしたら、真顔で遠慮するなと肩を叩かれた。相変わらず、クールなのか大雑把なのかよくわからない人だ。


「ふふ、ありがとう。じゃあ私もいつもの取ってくるわね」


 おや、ネネ先輩はもう何を頼むか決めたのか。それなら僕も僕で、何にするか決めないとな。


「じゃあ、僕もお言葉に甘えて……何かオススメはありますか?」

「そうですね、迷ったらあそこがいいですよ」

「小宇宙流ノレ人……? 何て読むんですかアレ」

「コスモナルドです。最近だと流人さすらいセットが……」

「あ、やっぱ自分で見てきます」


 うん、なんだろうなこの、平然と口に出されるのが気持ち悪いネーミングの数々は。


 察したくないけど、もしかして保護艦隊の方ってそういう洒落が好きなんだろうか。いや、ここは保護艦隊直営モールであって、出店しているのはまた別コミュニティの方々なのかもしれないけど。


 そんなことを考えながら多種多様な方々が行きかうコート内を歩いていたら、先程別れたネネ先輩の姿が見えた。どうやら、店先のレジ列に並び始めたところらしい。やっぱりお昼時は混んでいるようで、結構待つことになりそうだ。


 まあでも、せっかく先輩もいるしせっかくなら僕もここにしようかな。


「ネネ先輩は何を?」

「私はアルカナ星麺のカナうどんね」

「あ、そうなんですね……」


 う、うーん。なんというか……僕もこういうユーモアを身につけた方がいいのか?

 いや、ネネ先輩自身は別に気にしていないようだし、もしかして、気付いているのは僕だけなんだろうか。

 いや、今のは流石に偶然かもしれないけど、ちょっともう嫌になってきた……

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