第5話 楽園
「誰だ君は。」
王子のその言葉でリリアは思い出した。
(令嬢じゃない言葉使いが出ちゃった〜〜。)
悪役とはいえ、リリアは令嬢である。そんなリリアがあんな言葉使いをしていたら、誰だって不思議がるのは当然である。
リリアは必死で言い訳を考える。どう説明すればこの場を切り抜けることが出来るのか。そしてある説明が出来た。
「いや、私気が高ぶるとああいう性格になってしまう癖があって……。」
それを聞くと王子は、
「そうなんだ。すまなかった。変なことを聞いてしまった。」
その言葉にリリアはホッとした。その時、ドアを叩く音がした。
「リリアさん!!」
「アカネ!!」
アカネが駆け込んで来た。
「リリアさん大丈夫ですか。怪我とかは?」
「私は大丈夫。」
アカネの姿を見てリリアは嬉しかった。
リリアは完治して寮に戻った。
リリアは一人であることを考えていた。
『あの男は一体誰なのか。』
小説ではあのようなイベントはなかった。そのせいでリリアは男との戦いに苦戦してしまった。
そして、リリアの脳内をある可能性がよぎる。
『私がこの小説を変えた?』
そう思うと身震いした。だが、すぐに違うと気づいた。なぜならリリアに男の意識が芽生えたのは2〜3週間ほど。しかもそのほとんどを学校で過ごしている。学校で王子を嫌っている人がいたとしてもその勢力に関わった覚えはない。
思考がぐちゃぐちゃしていると誰かがドアを叩いた。
「リリアさん、一緒に風呂行きませんか。幸い今、誰も風呂入っていないので。」
アカネのその提案にいかがわしい思考がよぎる。だが、二人きりなら、ギリギリ何とかなるだろうという気持ちと今日は激しく疲れたから湯船に浸かりたいという気持ちで承諾した。
風呂はアカネの言っていた通り二人きりだった。
「リリアさん、お風呂気持ちいいですね。」
「あっ……ああ。」
今、目の前に乳房を丸出しで楽しそうに話している女性がいるという状況をリリアは全く整理出来ていなかった。
「ごめん。アカネ。先上がる。」
そう言って風呂から上がり、着替えとか諸々すると誰かの声がした。
「聞こえますか?リリア。今頭に語りかけています。」
「え?どちら様ですか?」
「詳しい話は教会で話します。」
謎の存在に言われ、教会に入る。
そこには女神像と誰も座っていない椅子があった。
「ようこそ。リリア。いや、リリアに転生したものと呼ぶのが正しいですか。」
「あなたは?」
「私は女神。あなたをこの世界に呼び寄せたのは私です。」
リリアは驚いたが、すぐに懐疑的に
「本当ですか?本当なら私の前世の名前くらい言ってみてくださいよ。」
すると女神は前世での名前、住所、クレジットカードの番号といった個人情報を晒してきた。
「わかった。信じるからやめて。」
「信じてくれたみたいですね。では、今この世界で何が起きているのか説明しましょう。」
女神は真剣なトーンで話出す。
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