24.虎視(こし) 改稿
「……うまくいったんかね」
「……まぁそうなんじゃない?」
ベタつきもせず、穏やかに、大人しくソフィアの隣で頬杖をつくフィンを眺めてラックスが口を開けば、チラと視線を寄越したテレジアが息を吐く。
「…………何か買ってくるわ」
「…………あいよ」
苦笑したようにフッと笑うと、テレジアはガタリと席を立ってその赤い髪を揺らす。
人気の少ない柱の陰で、何もない壁をぼんやりと眺めた。
普通に元気づけるだけのつもりだったのに、気づいたら勝率0%の流れ告白をしてしまったことに、テレジアはショートした頭をゴンと壁に打ち付ける。
「私何やってんのかしら……」
はぁと大きなため息をついて、何度とも知れない問いを繰り返す。
「言うつもりなんてなかったのにーー」
壁にもたれたままに足先を眺め下ろして、ソフィアの側で穏やかに微笑んでいたフィンを思い出して、ふっと笑う。
「ーーまぁ、いっか」
「何がいいの?」
間近で掛けられた聞きなれた声にテレジアはその赤い瞳を見開く。思わずと声の方を伺えば、ラックスがいつもの飄々とした様子で立っていた。
「ちょっと!?」
「テレジアは見る目ないよねぇ。普通いかないよ? 姉弟とは言え、あんな明らかにめんどくさそうなところ。普通シャッター下ろすでしょ」
気のないそぶりで続けられる言葉に、驚きの冷めないテレジアは言葉を紡げない。
「不安定で力だけ強いフィンは、たぶん普通の感性じゃ相手仕切れないよ。増してや、テレジアも我慢できないタイプだし」
「ちょっと!! 急に出てきて何なのよあんた!! 関係ないやつはすっこんでなさいよ!!」
「関係なくないよ」
「どこがよ!!」
「僕はテレジアのことが気になってるからね」
「だから……っ! は、はぁっ!?」
ニッと笑うラックスに、見る見るうちに真っ赤になったテレジアが面白いように狼狽える。
「な、な、何っ、はぁっ!?」
ぶるぶるとその身体を震わせるテレジアに、ラックスはフッと息を吐いて苦笑すると眉尻を下げた。
「ーーほんとそっくりだよね……」
「………………はっ!! さてはあんた見てたわねっ!?」
「……なんのことかな」
「さ、サイテー!!!」
ベッと舌を出して悪びれないラックスに、テレジアが顔を真っ赤にして腕を振り上げて怒る。そんな腕をパシリと両手で受け止めると、ラックスは離しなさいよと暴れるテレジアを見下ろした。
「ーー悪いけど、私一途な男が最低条件だから、あんたはないわよ」
「えぇ? 僕一途だよ?」
「どこがよ」
ちっと舌打ちして半目で睨むテレジアに、ラックスはふっと笑って一歩近寄る。
「惚れちゃいそうって、前に言ったの忘れちゃった? 僕は強くてカッコいいテレジアしか、ずっと見えてなかったんだけど」
にっこりとその赤い瞳を覗き込まれるように見られて、テレジアは思わずと後退る。が、両腕を取られていて思うよりは動けない。
「わ、悪いけど将来有望な男しか興味ないから!」
「今度第一部隊に昇格するし、言ってなかったけど僕の家は裕福な方だと思うよ?」
「え」
思わずと目を瞬かせるテレジアに思わず苦笑したラックスは、その腕を離す。
「ちょっとは僕に興味出てきた?」
「ば、バカなこと言ってんじゃないわよ、出る訳ないじゃない!!」
笑みを浮かべるラックスは、真っ赤な顔でわなわなと震えるテレジアの髪を掬い取る。
「テレジアには、僕みたいのが合うと思うんだけどなぁ。素直でまっすぐ、強くて優しいけど意地っ張りなテレジアのこと、ちゃんとわかってると思うよ」
「はぁっ!?」
ギョッとして目を剥くテレジアに、ラックスはにこりと笑う。
「わっ、私はそんな軽い女じゃないのよっっ!!!!」
両手を軽く上げてニコリと笑うラックスに、真っ赤な顔で限界まで叫び倒したテレジアは一目散に退散する。
「ちょっと考えといてね!」
「うっさいっっ!!!」
真っ赤な顔で軽くずっこけそうになりながら走り去る後ろ姿を眺めて、ラックスは楽しそうに笑みを浮かべた。
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