家の完成

「家の完成だー!」

「「おぉーーー!!」」

「とりあえず中を見てくれ。希望通り2軒建てさせてもらった」


 クラフさんに促されて家の中を見ていくが、素晴らしい仕事だ。まさかこんなにいい家を持てる日が来るなんて。正面に建っている家は俺、スカーレット、ラピス、サクラが住む家。横にある家には使用人の5人の住まいとなっている。正直、どっちの家も人数に対して広すぎるぐらいなのだが、今後も増える可能性があるかもしれないからいいだろう。


「ありがとうございました。こんなにいい家を建てて頂いて最高です。大事に使いますね」

「おう! そう言ってくれると職人として嬉しい限りだ。また3軒目が必要になったら商業ギルドを通じて言ってくれ。今度は流石にすぐには出来ないかもだけどな」


 こうしてクラフさんは帰って行った。建設代金は商業ギルドに渡してくれればいいとのことである。直接のやり取りだと、トラブルの可能性があるため、そうしているらしい。

 今日中に商業ギルドに行かなきゃな。


「主様、今後はどうされるのですか?」

「うーん・・・宴会をしてから少しゆっくりするかな。その後はダンジョンにでも行こうかと思ってる。レストに卸してる肉もそろそろ厳しくなってきてるし」

「分かりました。では、妾はしばしの間ですが5人の指導を今一度させていただきますね。特にメルトは、まだまだ教育が足りないようですし」

「な、何で俺ぇ!?」


 使用人たちの家と俺たちの家を興奮しながら見てただけのメルトは可哀想だけど、何だかんだラピスに気に入られてるな。そのやり取りも慣れたものなのか、周りにいる使用人たちも笑っていた。


「そういえば、服装とかどうしようか。正直、俺は自由でいいんだけど、希望があれば揃えるぞ」

「でしたら、私たち女性陣はラピス様と同じ服はダメでしょうか?」

「え? メイド服? いいけど、本当にいいの? 恥ずかしくない?」

「ぬ、主様、妾の服装を恥ずかしいと思ってたのですか?」

「あ、いやー・・・そんなことないよ?」

「主様!」

「ふふふ・・・恥ずかしくはありません。ラピス様に教育して貰っている時に見ていて凄くカッコいいと思いました。可愛くもありカッコよくもある。だからこそ同じ服がいいのです」

「アリス、あなたは本当にいい子ですね」

「エレインとミスティもいいのか?」

「私は、動きやすそうだなと思ったのが大きい。着たことが無い服だから少し戸惑いはありますが」

「私も同じ理由ですね。犬耳のメイド服とか主であるグレンさん的にはどうです?」

「い、言わないでおくよ」

「俺たちは何の服でも大丈夫ですよ」

「ただ、ワシはドワーフ族で背丈も人間より小さいから、なるべく動きやすい服装がええの」

「まぁ、そこは自由に任せるよ。服屋に行って服を買ってきてくれれば、後でその代金分は払うから」

「え!? そ、そんなことまでして頂かなくても・・・私たちは高いお給金を貰っていますので」

「いいのいいの。ここでの仕事で着る服なんだから俺が出すのは当然でしょ」


 メルトとオルティスは俺にお礼を言って服屋へと向かった。夜に宴会をやるが、それまでにはさすがに帰ってくるだろう。

 さて、こっちはこっちで宴会の準備をしないとな。


「ガリアさんには事情を言って店を貸し切りにして貰ったから場所は大丈夫と。後は、食材か」

「主様、ある程度の食材は買い揃えてあるそうです」

「そうなると、メインになるようなインパクトがある美味しい肉が欲しいよな」

「と言っても何がいいのでしょうか」

「一つだけ心当たりがあります」

「エレイン、その心当たりを教えてくれ」


 エレインによると、美味しくてインパクトがあってメインになるような肉となると、ワイバーンの肉とのことらしい。

 いや、確かにすべての条件を満たす肉ではあるが、ワイバーンを倒せるのか? ファンタジーの作品だと結構強い魔物って認識だけど。


「確かにワイバーンは強いです。ですが、妾達の戦力であれば余裕です」

「ラピスさんの言う通りだねー。何ならスカーレットちゃんだけでも倒せると思うよ」

「やっぱりみんな異常な強さなんだな」

「グレンさん何言ってるのよ」


 サクラは大爆笑している。隣にいたラピスも呆れた様子でいる。そんなにおかしなことを言ったかな。


「グレンさんの方が私たちよりも遥かにヤバイですよ。私たちを従えているのに更に闇魔法まで使えるなんて異常です」

「はい。サクラの言う通りです。もっと主様は自信を持って下さい」

「あ、ありがとう」


 褒め慣れていないのもあって、照れ臭くなるな。さて、ワイバーンの肉の入手だったか。冒険者ギルドに行って情報を聞いてみるか。


「ワイバーンですか!?」

「ええ。目撃情報とかってありますか?」

「ありますが・・・本当に狩りに行くんですか?」

「そうですけど。何か問題ありましたかね」

「ワイバーンはSランク相当の魔物であり、竜種の中では弱い方ではありますが、それでも他の魔物に比べたら強いです。更にワイバーンは集団で生息してるのもあるので、難易度は上がります。それでも行くんですか?」

「ええ。ワイバーンの肉を宴会で食べたいらしくて」

「は? ワイバーンの肉?」

「美味しいって聞いたので食べてみたくなったんですよね。まぁ、最初は自分も強そうな魔物だし厳しいだろうなって考えてたんですが、ラピスとサクラが余裕って言ってたから狩りに行くことにしました」

「いやいやいや、そんな理由でワイバーンを狩る人なんて初めて聞きましたよ」

「そ、そうなんですか?」

「はい。常識的にSランクの魔物を食べるために倒しに行こう! なんて人いませんよ」

「グレン達に常識なんて通じないわよ」


 気付いたら横にオーレリアさんがいて失礼なことを言っている。俺達だって常識ぐらいあるんだが。


「さて、ワイバーンを”食べる”ために狩りに行くのよね?」

「一応そのつもりですけど」

「だったら丁度いいわ! 受けて欲しいクエストがあるのよね」

「うーん・・・今回は少し厳しいかもです」

「あら、どうして?」

「実は家の完成を祝して宴会を今夜やる予定なんですよ。ワイバーンの場所がどこかは分からないのですが、スカーレットに竜化して貰って飛べば間に合うだろうって予定をしてたんです」

「へぇー宴会をするのね。私も参加していいかしら?」

「それはもちろん大丈夫です」

「ありがとう。クエストについても大丈夫よ。期限はかなり余裕があるから」

「そうなんですか? そのクエストって内容は何ですか?」

「ここガレリア王都からずっと東に行ったところにある砂漠にダンジョンが出現したの。そのダンジョン攻略がクエストの達成条件よ」

「ダンジョン攻略がクエストの内容ですか?」

「そう。本来ではありえないクエストなんだけど、なぜかクエストが発注されているのよね。しかも、よりにもよってダンジョンはSランク相当で生半可な冒険者を向かわせるわけにはいかなかったのよね。いやー、丁度いいところに来てくれたわ」

「ちょっと待って下さい! Sランクのダンジョンを攻略しろって言ってるんですか?」

「そうよ。あなた達なら行けるでしょ。困難になるとは思うけど、それがよりあなた達を強くするのよ」


 オーレリアさんは力説しているが、横にいる受付嬢の人は頭を抱えてしまってる。突然出現したダンジョンの攻略か。どう考えてもリスクの方がデカそうだけど、オーレリアさんの頼みなら断る訳にはいかないな。


「主様、妾は断るべきだと思います」

「あまりにも怪しいからか?」

「その通りです。ダンジョンが突然出現したのも怪しいですが、クエストの内容がダンジョン攻略という点です。どう考えてもおかしいです」

「そうなんだよな。だけど、オーレリアさんの頼みだから断るのもな・・・」

「なので、最終的な判断は主様に任せます。妾達は主様に付いて行きます」

「分かった。なら、このクエストを受けようと思う」

「ありがとうね。ワイバーンの情報と狩りに行くことは内密にしておくから」


 そう言ってラピスへとウインクしながらオーレリアさんは戻って行った。なるほどね。口止めの意味を込めてのクエストでもあったのか。クエストの内容的にワイバーンの件はそれだけのことなのか。


「さすがはオーレリアさんですね。全てを語らずとも動かすとは」

「ギルドマスターがすいません。正直、クエストはかなり危険になるかと思うので注意して下さい。ワイバーンの情報はこちらとなっています」

「ありがとうございます。しかし、ワイバーンを狩るのってもしかして違反的な感じだったんですか?」

「うーん・・・ワイバーンを狩る事は問題では無いのですが、ワイバーンを狩るほどの実力者がいるとなると問題になる可能性があります」

「Sランクの魔物を倒すほどの存在がいると知られるからですね」

「はい。高ランクの魔物を討伐出来る冒険者となると、どこの組織からも欲しがられます。まぁ、高ランク冒険者に勧誘で付きまとうとか自殺志願者なのかなと思いますが」


 受付嬢にお礼を言ってからワイバーンの情報が書かれた地図を見る。サクラと出会った北の山の山頂付近に生息しているようだ。あそこって結構な標高だから雪とか降ってそうだな。寒さ対策しなくて大丈夫かな。


「心配ないですよ。妾の魔法で周囲の温度を一定にしますので」


 全然大丈夫だった。魔法って凄い便利だなー。

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最弱マスターと最強の従者達 花千烈風 @chaos1991

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