魔法の才能
王様との謁見を終えて宿に戻ってきた俺は、ラピスから約束していた魔法の指導を受ける。スカーレットも一緒になって魔法の指導を受けると言って聞かなかったため、街から少し出たところの平原で授業が開始された。
「魔法とは魔力と空気中の四元素が反応し合って生まれる物です」
「うーん・・・?」
あまりにも抽象的な表現に俺は思わず首を傾げる。横にいるスカーレットは寝始めちゃったぞ。
「少し簡単に言い過ぎました。主様は魔力というのはご存知ですよね」
「魔力があるってのは知ってる。ステータスで言うならINT値だっけ」
「そうです。そして、MP値というのは魔法を使用すると消費される魔力の体力みたいなものです。これが多いと魔法をいっぱい打てます」
「なるほど。何となく魔法関係のステータスは分かったな。実際にどうやって使えばいいんだ?」
「魔法はイメージです。世界には火、水、風、土の四元素があります。この四元素と魔力を結合させることで魔法が発動します。そして、魔法が発動したと同時にマナが排出されるのです」
「ラピスは魔法を使うのに四元素って感じ取ることが出来るのか?」
「何とか感じ取れるレベルです。一般的な魔法使いは魔法をイメージしてしまえば魔法を発動させることが出来てしまうので、四元素をほぼ感じ取れていません。本来は周囲の四元素と魔法の属性を合わせることが出来れば、より強大で強力な魔法を打てることが出来るのですが・・・。
四元素を把握しつつ魔法もそれに合わせることが出来るほどとなると、人間なら賢者クラス以上で魔物であれば魔王の幹部レベル以上の強さになります」
賢者がどれぐらいの強さなのかは分からないが、ゲームだとかなり上位の職業とかだから相当なんだろうな。この世界に溢れてる四元素を感じ取るのがそんなに難しいだなんてな。
「属性一致ボーナスみたいな感じか・・・。それほどの使い手でしか使いこなせないとなると、俺には無理だろうな」
「・・・主様は魔力を感じ取れないんでしたよね?」
「アカツキさんと対峙した時とかも魔力は分からなかったんだよな。アキラ達に聞いたら魔力を感じ取れるみたいだったから、俺にセンスが無いだけかもな」
「いえ、そんなことありません」
「そうなのか?」
「はい。ステータスの魔力値がある以上は魔法を使えて魔力も感じ取れることが出来るはずです。もしかしたら、魔力の流れが止まっているだけなのかもしれません」
「魔力の流れが止まってる?」
「主様の素の魔力とは違い、従者からのステータス補正による魔力値が加算されて魔力の流れが悪くなっているのだと思います。
解決方法がありますが・・・どうしましょう」
「何か問題があるって感じだな」
「その・・・無理に魔力を流すので痛みが伴います。しかも、主様の場合は加算された魔力が多いです。それに伴って痛みが増加してしまうかと」
「マジか。んー・・・痛いのは嫌だが、俺だけスカーレットやラピスの足手まといになるのだけは嫌だから、やってくれ!」
俺は覚悟を決めて宣言したが、それを見ていた従者の2人が励ましてくれる。
「グレンお兄ちゃんは足手まといじゃない! 私たちの大切な主様!」
「そうです。スカーレットちゃんの言う通りです。妾達にとって主様はいなくてならない人なのです。なので、そんなに卑下しないで下さい」
「ありがとう。だけど、これは俺の覚悟なんだ。今後の戦いで2人だけでは対処出来ずに俺が危険になる時が絶対に来る。そんな時は俺の事を気にせずに2人は全力で2人のために戦えるようにしたいんだ。
まぁ、何だかんだ言いつつも俺も隣に立って戦えるようになりたいってだけなんだけどな。女の子に守られてばっかってのもカッコ悪いじゃん」
「主様らしいですね。分かりました。では、妾が魔力を通します。行きます!」
ラピスの合図と同時に俺の体に力が流れ込んでくる。おぉー! これが魔力か。今までも微かに感じてたけど、本来はこんなにも魔力を感じ取れるものだったのか。
・・・激痛が来るからと身構えてたけど、全然来ないな。
「ラピス、激痛は―――凄いな。世界に四色の妖精のような物が大量に飛んでる」
「グレンお兄ちゃん大丈夫? ラピスお姉ちゃんが言ってたみたいに体痛くない?」
「スカーレット大丈夫だぞ。心配してくれてありがとうな。それよりもこの四色の妖精は四元素なのか?」
「ぬ、主様・・・」
「どうしたラピス?」
「あ、あなたは大賢者になるほどの潜在能力の持ち主だったんですね!!!!」
ラピスのテンションが今まで見た中で最高潮になってる。興奮し過ぎて俺の手を持ちながらピョンピョン跳ねる。目の前で大きな山が2つ大きく揺れている・・・。いや、そんなことを考えてる場合じゃない。
「ラピス落ち着け!」
「はっ! す、すいませんでした」
「大賢者がどうとか言ってたけど、どういうことなんだ?」
「はい。先ほども言った通り、四元素を把握して魔法を使えるのは賢者など上の職位の存在です。ですが、そんな存在であっても四元素の全てを見極めることは出来ないのです」
「見極めれなくても把握して魔法を使えるってことは、何となくこれぐらいかなーって感じの目分量で四元素を捉えてるのか」
「その通りです。それだけでも異常なことではあるのですが、主様は四元素の精霊を見ることが出来ています。
全世界の魔法使いが欲している力を主様は持っているのです!」
「えぇー・・・そんなになのか」
「ちなみにですが、過去に大賢者と呼ばれ、魔王からも恐れられた英雄がいたのですが、その人も同じように四元素の精霊を見ることが出来たそうです。
そして、それ以降は同じ力を持った人は存在しておりません」
「そう聞くと異常な力ってことが分かるな」
「こんなにも凄いことなのに主様のあっけからんとした様子を見ていると、妾がおかしいのかと思ってしまいますね」
「グレンお兄ちゃん!」
「ど、どうした、スカーレット」
「凄い力があったのが分かったし、私と手合わせしてよ!」
「いやいや、流石にスカーレットには敵わないよ。それにこの力がどう作用するのかも分からないしな」
力を集中するような感じで世界を見ると四元素の精霊とやらがそこら中に見えるが、集中を切らせば見えなくなる。何とも扱いが難しい力だ。
「さて、んじゃ、そこら辺にいる魔物で試しに魔法でも打ってみるか」
「ぜひお願いします! あぁ~・・・四元素の精霊を見る力を持った方の魔法を目の前で見れるなんて。魔法を使える身として、これほど幸せなことはありません」
「自分の世界に入ってるところ悪いんだが、魔法の使い方を教えてくれるか?」
「は、はい! 主様、この周辺に見える四元素の精霊はどの色が多いですか?」
「うーん・・・赤色が多くて次に緑色かな。後は少なくて見えないぐらいだ」
「ということは、火と風が恐らくはこの場所では魔法が強くなるという事ですね。そうなると火の魔法がベストでしょうか。
では、まずはイメージして下さい。自身の体内にある魔力と赤い色の四元素が結びつくイメージです」
ラピスに言われた通りにイメージする。赤の四元素である精霊は見た目が妖精のようでイメージしやすかった。後は、さっき感じ取ることが出来た体内の魔力とを結合するイメージ。うん、これも問題無いな。
「結合のイメージが出来た」
「はい。主様の魔力が練り上げられているのがよく分かります。次に火をイメージして下さい。そして、それをどう魔法として打ちたいのか。手から出したり口から吹いたりなどなど・・・千差万別のイメージがあります。
主様が思う魔法を打って下さい」
「俺が使いたい魔法か」
RPGのゲームとかでみる魔法は手から火を打ってるのが多かった。目の前にいるスライムには申し訳ないが、俺が思いつく限り最高の魔法を打ってみるか。
俺は腕を上に上げてイメージする。空中に超高密度で巨大な火球を。火の魔法としてゲームやアニメなどでよく見るような巨大な火球を敵にぶつけるイメージだった。それをもっと具体的に鮮明にイメージする。まぁ、元の世界でそういった作品と触れ合ってきた俺からしたら、イメージするのなんて容易いけど。
「おぉー! こ、これが主様の魔法・・・。巨大な火球なのに魔力密度が圧倒的であり、離れていても異常な熱さを感じる火魔法。
最初に打つ魔法がこれほどとは。やはり大賢者の素質があります」
「グレンお兄ちゃんとやっぱり戦いたかった。私でもあんな火の魔法あんまり使えないよ」
「スカーレットちゃんは素質だけで魔法を使ってるのにあれほどの威力というのが異常なんですよ。それも竜種としての強さです」
「ということは、私はもっともーっと強くなれるってこと?」
「もちろんです。竜種というのは世界を終わらせるほどの種族なのですから」
「そっかー。他の竜種とも戦ってみたいなー」
「竜種同士の戦いになれば世界が確実に終わるので勘弁して欲しいです」
「あ! グレンお兄ちゃんが魔法を打つよ!」
イメージした魔法になったと感じ取れたので、それをスライムに向けて打つ! 巨大な火球は地面を焼き尽くしながらスライムへと一直線に進んで行く。
スライムもそのことに気付いて逃げようとしたが、時すでに遅し。眼前にまで迫った火球は避けることが出来ずに当たってしまう。
「嘘だろ。スライムが跡形も無く消えるどころかクレーターみたいに地面が吹き飛んだぞ。しかも土が焼き焦げて真っ黒になってる。それだけの熱だったってことか」
「あまりにも高威力な魔法でしたね」
「ラピスどうだった?」
「完璧・・・とも言えませんかね。主様のステータスをご覧になってください」
「ステータス? なるほど。MPが枯渇してる」
「そうです。魔法とは威力があっても1回しか打てなければ戦闘の時は意味が無いのと同じです。ボス戦であれば良いのですが、全部が単体相手ではないですので」
「そうだな。まぁ、そこは追々と魔法の精度を上げていくとしよう。MPが枯渇したからかお腹が空いたな。
街に戻ったら夕飯にちょうどいい時間になるだろうし戻るか」
「はい主様」
「ご飯が食べれる!」
後日、街から少し外れた平原に巨大で焼き焦げたクレーターが出来上がったことが街中で噂になっていたが、俺たちの知らない話だ。多分、恐らく、きっと。
「国王が暗部に任務を出したと思えば、あんな化け物を偵察しろなんて。そもそも王も王だ。従者が仲間になったことを知っているのなら何で暗部に連絡が無いんだ」
「イリアス様、恐らくはギルドマスターのオーレリア様が報告したのだと思います」
「アイツか・・・。全く困ったもんだ。それで? 増えた従者について何か分かったか?」
「はい。種族は吸血種であり、ステータス値はSランク相当。名はラピスと言うそうです」
「なるほど。情報はそれだけではないんだろ?」
「・・・真祖の吸血種が動き出しそうだと言われております」
「それはそれは。真祖が出てくるとは思わなかったな。
「イリアス様、その事ですが王から新たな任務が出されました」
「ん? どれどれ・・・厄介な任務を」
「何ですか?」
「対象者であるグレンに接触しろとのことだ」
「なっ!? それは何故ですか? 暗部が対象者に接触などと」
「暗部としてではなくイリアスとして接触するように書いてある。なるほど。王女としての繋がりも持っておけということか」
「どうするのです?」
「もちろん接触する。父からの任務だからな」
「分かりました。我々は呼び出しがあるまで待機します」
そうして、周りにいた暗部の連中が消える。私がまさか王女としてグレンに会わないといけないなんて。それもこれも姉上であるオーレリアが王位継承権を捨ててギルドマスターになるからだ。まぁ、私は私で好きなことが出来てるからいいんだけど。
さて、明日は最高におめかしして出会わないとな。
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