新たなる仲間とギルドへ報告

「さて、俺たちは1回帰るけどアキラ達はどうするんだ?」

「俺たちも流石に帰る。MPもアイテムも底を尽きかけてるからな」


 先ほどのボス戦でアイテムと魔法を使ったからか、かなり疲弊していたようだ。

 ラピスはマイがアイテム袋から出してくれた服を一旦着ることで何とか街に帰ることとなった。まぁ、いろいろな部分(主に胸)が窮屈だとラピスが文句を言ったことでマイの怒りを買うことになるのだが。


「あのポータルから帰ることが出来る。グレンさんも覚えておくといい」

「ありがとう。そういえば、奴隷商の常連となってる勇者ってアキラ達じゃないよな」

「奴隷商なんかに俺たちは行ったこと無いぞ。まさか、グレンは奴隷商から奴隷を買ったのか!?」

「いや、実は―――」


 スカーレットが元は奴隷だったことなどをアキラ達に話した。その時に奴隷商から勇者が来ていたことなどを聞いたことなども言ったが、どうやらアキラ達は行ったことがないようだ。

 だったら他にも勇者がいるってことなのか?


「俺たちも他の勇者については聞いたことが無いな。王様は何十年かぶりの召喚成功だーって喜んでたからな」

「最初は単独行動をしてた私たちだけど、奴隷商で奴隷を買ってたら再開の時に分かるからね」

「・・・実は、他の勇者のことについて俺は知っている」

「ヘイジ知ってたのか!?」

「うむ。まぁ、と言っても噂程度なんだがな。酒場で情報収集している時に聞いたんだが、30年前に召喚した勇者がいたらしい。だが、その勇者は性格に難ありで、国でも扱いに困るほどだったようなんだ。実力はSランク冒険者以上なのに人間として破綻している。そんな勇者だったが、ある時を境に急に消息不明になり国は大慌てになったんだと」

「そんなことが」

「実力はあっても国として対処に困る勇者だったため、ある程度の期間を捜査したら打ち切られたらしい」

「てことは、その勇者が奴隷商の常連だった可能性があるのか」

「恐らくは」


 そもそもこの世界にはどれだけの勇者が召喚されてるんだよ。何かいろいろと闇が深そうだけど、俺は俺の生活がまったりと送れればそれでいいな。


「あと気になったんだが、鑑定スキルでアキラ達の能力値が見れないのって何でなんだ?」

「あぁ、多分なんだが召喚された勇者には鑑定スキルが効かないんだ」

「効かない? だけど、名前とか種族とかは見えるぞ」

「鑑定スキルの効く範囲がそこまで何だと思う。だから、俺たちも最初は驚いた。種族の欄を見て勇者なんだと気付いたが」

「そういうことか。なぁ、能力値ってどれぐらいだと高いんだ?」

「俺たちも全てを知ってるいるわけじゃないが―――」


 冒険者のランクごとに能力値がある程度決まっているので、それで基準となる部分が分かるらしい。

 F~Sランクまで冒険者のランクはある。


 Fランク→能力値平均 100

 Eランク→能力値平均 200

 Dランク→能力値平均 400

 Cランク→能力値平均 1,000

 Bランク→能力値平均 2,000

 Aランク→能力値平均 5,000

 Sランク→能力値平均 9,000


「とまぁ、こんな感じに冒険者のランクごとに能力値は決まってる」

「なるほどなー。勇者だとどれぐらいに位置してるんだ?」

「俺たちはまだレベルが低いのもあってB~Aランクの間ぐらいだ。ただ、勇者の場合は単純な能力値だけでなく強大なスキルもあるから実際のランク的には上になる」

「そういうことか。だったら俺は外れスキルだし従者がいなかったら、かなり下になるな」

「マスターサーバントが外れスキル? おいおい冗談はよしてくれ」

「え?」

「従者を増やせば増やすだけ強くなるマスターサーバントが外れな訳無いだろ。それこそスカーレットやラピスのような強力な従者を従える必要はない。ただただ数を揃えるだけで能力値が上がっていくんだぞ。異常なスキルだ」

「やっぱりアキラ達も知ってたのか」

「グレンさんも気付いてたんだろ? ゲームに触れてきた世代なら誰だって気付くさ」


 談笑を続けていたら、スカーレットのお腹が鳴る。


「グレンお兄ちゃん、お腹空いた」

「そうだな。さっさと地上に戻って飯にしよう」


 ポータルに魔力を込めて地上へと戻る。辺りはすっかり暗くなっていた。それぞれ解散をして目的の場所へと向かう。

 飯屋へと思ったが、ラピスが服を欲しいと言ったので服屋へと向かった。


「えっと・・・本当にその服でいいのか?」

「はい。妾が主様に仕えるのであれば、この服装が適切かと思いますので」

「ラピスお姉ちゃんの服なんだかヒラヒラだね~」


 ラピスが選んだ服はメイド服だった。こっちの世界にもメイド服って存在するのかよ!

 しかも、元々のスタイルが良いから目のやり場に困る服装になったな。メイド服によって強調される胸と白のニーソから見える絶対領域。うーん・・・ありがとうございます。


「スカーレット様もどうですか?」

「む~! ラピスお姉ちゃん!」

「は、はい。何でしょう」

「様はダメって言ってるでしょ! 私とラピスお姉ちゃんは同じ立場なんだから」

「で、ですが・・・私よりも先に従者となった方であり、なおかつ竜種であるので様と呼ぶのは当然かと」

「スカーレットがそう言ってるんだから様は止めるように。あと、俺も主様は止めてくれな。普通に名前呼びでいいから」

「それは出来ません! 妾のマスターである以上、呼び方を変えれません」

「うーん・・・まぁ、ラピスがそこまで言うなら仕方ないか」

「ありがとうございます。では、スカーレット様はスカーレットちゃんとお呼びします」

「うん! ラピスお姉ちゃん!」


 まぁ、姉妹みたいな関係とは違うけど、スカーレットに親しい人が出来たのは喜ばしいことだ。そして、行きつけのレストへと向かった。


「主様、ここは?」

「俺が投資をしている料理屋 レストだ。クエストなどで手に入れた肉をこの店で料理として出して貰ってるんだ」

「まさか投資をしている店があるなんて」


 ラピスに説明をしてから扉を開ける。そこにはいつも通りの常連がカウンターに座っており、店にはいつもよりも客が座っていた。


「いらっしゃい! 何だまた新しい人が増えてるな。兄ちゃんの恋人か?」

「いえ、妾は主様の従者です」

「従者ねー・・・兄ちゃんよ」

「何ですか?」

「女の従者ばっか増やすのは意図があるのか?」

「無いですよ」

「羨ましい限りだな」

「そんなこと言ってたらミリアさんに怒られますよ」

「確かにだな。それで、飯を食べていくんだろ?」

「はい。結構疲れたのであっさりしたのが食べたいですねー」

「あっさりかー・・・何か前みたいに食べたい物とかあるか?」

「しゃぶしゃぶとか久々に食べたいな」

「しゃぶしゃぶ?」


 鍋にお湯を入れ、コンロで熱しながらオーク肉をさっと通して食べる食べ方を教えた。使うのは確か肩ロースだっけ。それをさっとお湯に通す。

 ごまだれがあれば最高だが、さすがに無いので、醤油に似た調味料で食べる。


「うん! あっさりしてて美味しい」

「グレンお兄ちゃん美味しい」

「主様、これは美味しいですね。調理一つでオーク肉が変わるとは」

「ほぉ、あっさりしてて美味しいな。前に食べたトンカツはガツンとした感じで悪くなかったが、これも悪くない。

 よし。これは夜に出すメニューとして入れよう」


 新たなメニューが増えたようで何よりだ。かなりの量の肉があったが、あっさりしていたのもあり、3人で食べ切ってしまった。


「そういえば、新しい食材が手に入りましたよ」

「お! マジか。ありがたい話だな。じゃあ、肉はギルドに卸してからこっちに仕入れるって形か」

「そうなりますね。他にも素材が手に入ったので、そちらをギルドに持っていかないといけないので」

「なるほど。まぁ、今日はダンジョンからの帰還したばっかだしゆっくりしな!」


 ガリアさんはそう言うと厨房へと戻っていった。少し休憩してから宿へと戻る。部屋を別にしようとラピスにも提案したのだが、従者として身の回りのことをやりたいから一緒の部屋がいいと押し切られてしまった。

 流石に今の部屋ではベッドが少ないと説明しても、むしろそれがいいのですと熱弁された。まぁ、それは俺が無理なので、ベッドが多い部屋へと変更をして貰って何とかなった。

 そして、次の日の朝には冒険者ギルドへと足を運ぶ。


「すいません。ギルドマスターのオーレリアさんっていますか?」

「はい、いますよ。面会の希望ですか?」

「すいませんが、連絡お願いします」

「分かりました。少々お待ちください」


 受付嬢がギルドマスターの部屋へと向かう。うーん・・・ギルドにいる冒険者からの視線が痛い。

 理由は分かってる。スカーレットという美少女とラピスというメイド服を着た美女が隣にいるからだ。スカーレットは一撃でCランク冒険者を吹っ飛ばしたという事があったため、有名になってる。なので、余計に目立つ。


「ギルドマスターが部屋に来るようにとのことです」

「ありがとうございます」


 オーレリアさんの部屋に入ると早速ダンジョンのことなどについて話した。


「勇者2パーティで挑んでも10階までしか行けなかったのね」

「それが、こっちにいるラピスが10階層のボスにいて苦戦してしまいました。まさか吸血種でスカーレットと同等の強さのボスがいるとは思いませんでしたよ」

「ん? 10階層のボスが吸血種? それに竜種と同等の強さ? いやいや何を言ってるの?」

「どういうことです?」

「10階層のボスなんてCランククラスのボスなのよ」


 まさか過ぎる答えに俺は更なる疑問が生まれた。ラピスの体に纏っていた黒い霧も恐らく関係しているのだろう。俺は、オーレリアさんに全てを話す。

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