第270話 たまには男友達とも遊びます
サラダや和え物、炒め物に鍋。クセのある野菜だけれど、そのクセを好む人もいる。
仙台市では代表的な鍋料理でもある『
お浸しや天ぷらが美味しい野草。すくすく育ってほしい、そんな意味を込められて女の子に名付けられたりもする。別名はペンペン草の『ナズナ』
天ぷらや和え物にするとおいしい。春菊に似た風味を持つ『ゴギョウ』。
雑草扱いの野草だが、その味はクセもなく食べやすい。汁ものやお浸しが代表的かもしれない『ハコベラ』。
本来はクセが強く食用に向かない『ホトケノザ』。現在、流通している物の名はコオニタビラコという物で、炒め物やお浸しにすると美味しい。
現代でも身近な野菜でポピュラーな食材の一つ。浅漬けや汁もの、炒め物、サラダにしても美味しい『カブ』。
カブ以上に一般家庭へ浸透している野菜で、調理方法は多岐にわたる『ダイコン』。
これら七つの野菜は『春の七草』と呼ばれるものだ。
1月7日の朝食におかゆとして食べることが習わしでもある。
その意味は、三日とろろにも通ずることがあるけれど。
今年1年間の無病息災を祈って食べる正月料理の一種だ。
他にも、正月に酷使した胃腸を休める意味合いもある。
美海に指摘されたばかりだと言うのにも関わらず、僕がどうしてうんちくを語っているかと言うと――。
「分かった、分かった、郡。聞いたのは俺だけど、聞いても覚えられないから!」
「いや、幸介が『七草って響きがカッコいいけど何があるんだ?』って、聞いたから説明したんだから覚えてよ」
「もういいって、悪かった。俺が気軽に触れていい話題じゃなかった」
「でもさ、高校生で春の七草を丸暗記している人って、郡くんくらいなんじゃないの?」
「いや、優くん。そんな人を希少種みたいに――それに今は、美海と美波だって暗記していると思うよ」
「うわ……それってさ、『兄さんの教えなんだから』とか言って、俺も覚えるまで美波に聞かされ続けるやつじゃね?」
「頑張れ、幸介くん」
「他人事みたいに言っているけど、美海は今日、佐藤さんにも聞かせるって宣言していたよ。優くん?」
「何してくれてんの!? 郡くん!? 望はあれで凝り性で負けず嫌いで、それでいて賭け事が好きだから、絶対覚えた上で勝負を持ち掛けてくるって」
会話の始まりは、土日に何をしていたかと質問を投げ掛けた幸介によって切らされた。
優くんは佐藤さんと室内に引き籠りゲーム三昧。
幸介は三が日を過ぎてから仕事三昧。
僕は、アルバイト三昧。
そのついでに昨日”七草粥”を食べたことを言った。
その流れで幸介が適当なノリで言った、選ばれた者に与えられる称号『七草』。
結果、僕のうんちく語りへと発展してしまったと言う訳だ。
さらに、ひと昔前は擬人化が流行っていたと言った優くん。
2人の意見を混ぜ合わせたとして、七草に人のような意志が宿ったならば。
まさかその七草も、厄介者のような扱いを受けるとは微塵も思っていなかったこと間違いないだろう。
粥にして食べるのだから、いずれにせよ微塵にはするのだが――と。
そんな馬鹿みたいな冗談が頭に過ぎってしまうくらいには、幸介と優くんと遊ぶ時間に浮かれているのかもしれない。
「てか、カラオケに来たんだから何か歌う? 俺はアニソンくらいしか歌えないけど」
「お、それなら一緒に歌うか優?」
「いいね、何にする?」
「忙しくて最近のは全然だからなー……昔の曲の方が助かるな――」
アニソンを代表する有名な曲。盛り上がるテンポの良い曲。
しんみりするような曲などなど。
2人が歌うアニソンメドレーを楽しみつつ、間に僕の十八番で2人の爆笑を掻っ攫ったりもした。
笑ってもらうために思い切り歌ったからな、満足だ。
よくよく思い返してみたら、男性同士でカラオケに来たのは初めてかもしれない。
始まりは美愛さん含むファンクラブたち。
次に美愛さんと2人で。
美海と2人で来た時もあった。
誰と来ても楽しいとは思ったが、男性同士の方がやはり気は楽かもしれない。
美海と2人だけというのも悪くないが、密室という状況は極力避けたいところでもある。
「はぁー……歌ったなぁ」
「だね。てか、郡くんが歌った曲のせいで分かり難かったけど、めちゃくちゃ上手だったよね?」
「優、聞いて驚くな。郡は『GReeeeN』のキセキで100点を出す男だぞ」
口に含んだ炭酸飲料を吐き出しそうな程の驚きを見せる優くん。
吐き出しはしなかったが、器官もしくはどこか変な所にでも入ったのだろう。
苦しそうに
あと、何食わぬ顔でアイスティを飲んでいる僕だけど。
優くんと同じように驚いている。
「優くん平気? あと、どうして幸介が知っているの?」
おしぼりを口元に当てながら『平気』と返事する優くん。
幸介はと言うと、あっけらかんと言い放った。
「誰が発端かは分からんが、郡の歌ウマは有名だぞ?」
「は、どうして?」
「そんなの俺が知るか」
僕が100点取れたことを知っている人は、美愛さんだけだ。
だから美愛さんから広がったのだろう。
別に口止めした訳ではないし、知られたからとて困ることでもない。
が、どこか恥ずかしい気持ちが残る。
「2人の会話に割り込むの悪いんだけどさ、郡くんのキセキ聴いてみたいな?」
「確かに! 俺も聴いてみたいし、歌ってくれ郡!!」
「別にいいけど、多分100点なんて取れないよ? あれはあの時の、本当に奇跡みたいなものだったから」
『それでもいい』と言う2人の願いを叶える為、リモコンへ手を伸ばそうとしたが、すでに確保されていた。
そして、やはりと言うか何というか。
当然のように採点モードにされてから、曲を送信される。
100点を期待してかワクワクした顔をしている幸介と優くん。
男性同士、気が楽だと思っていたけれど、今だけは妙に緊張してしまう。
2人の目から感じなくてもいいプレッシャーが伝わってきているせいだろう。
ただ、さっきも言った通り、今日は奇跡を起こす必要などない。
だから気楽に歌えばいいか。
そう結論付けたところで、歌いだしとなる――――。
――歌い終わり、あとは採点が終わるのを見守るだけ。
手応えも悪くなかったし95点くらいは取れたかな。
「あ、100点だ」
「「…………」」
まさか取れるとは思っていなかった。
満点なのだから当然に嬉しい気持ちはある。
けれど、なんだか奇跡の安売りのようにも感じるから、取れない方がよかった。
そんな相反する複雑な思いに駆られていると、固まっていた2人が興奮した様子を見せてきた。
「郡、お前やばいな!」
「郡くん、もう1回歌って。今度は動画撮るから」
「つか、美波の前で歌ったか? 俺が先に聴いたって知ったら間違いなく怒るぞ!?」
「あ、配信に出しても面白そうだね」
「今度、美波とカラオケ行け。な? 頼む」
「郡くん、予約入れるけどいい? いいよね? 入れちゃうよ??」
僕に返事をさせる隙など与えない。
まさに畳み掛ける勢いで矢継ぎ早に好き勝手言ってくる2人。
「落ち着きなよ2人とも。とりあえず、飲み物のお代わりでも取りに行こう?」
3人揃ってグラスは空だ。
ソフトドリンク飲み放題なのだから、料金を気にせずお代わりをしてもいいだろう。
室内にこもった熱気か何か。
そのせいで熱くなっている可能性もある。
それなら、廊下に出て頭を冷やしてもらうのが一番だ。
2人も提案に乗ってくれた為、
貴重品を持って仲良く3人でドリンクバーへ移動する。
「ごめん、郡くん。ちょっと興奮しすぎたかも」
「落ち着いてくれたなら大丈夫だよ」
メロンソーダのボタンを押しながら謝罪を口にする優くん。
普段の冷静な優くんが戻って来てくれたようだ。
「まあ、なんだ。今度、郡をボーカルにしてバンドでも組んでみるか?」
優くんが退いたことで、グラスをセットしてコーラのボタンを押す幸介。
突拍子もないことを言う幸介に対して全力で拒絶を示す。
「いや、無理でしょ。飛躍しすぎだって」
「そう? ありだと思うけど? 幸介くんと郡くんならビジュアルもいいし」
「他人事のように言ってるけど、組むなら優も一緒だぞ」
「いやいやいや」
全力で首を振って、拒絶を示す優くん。
それに対して僕と幸介は目を合わせてから。
「「いやいやいやいや」」
と、首だけでなく手も振って真似をする。
「幸介くんはともかく、郡くんまで真似しないでって」
「ちなみに優くんは何か楽器できるの?」
「ベースなら……あ、何もできない。だから俺にバンドは無理かな」
「いや、優よ。それは苦しいだろ」
項垂れる優くんには悪いが幸介の言う通りだ。
でも、すぐに気を持ち直したのか、注いだメロンソーダの上にソフトクリームを乗せている。
なんちゃってメロンフロートか。
美味しそうだけど、寒くないのかな。
「にしても、明後日から学校かぁー……勉強、頑張らねーとな」
「一緒に頑張ろう、幸介」
「郡は余裕だろって。いや、もしかして、また1位でも狙ってんのか?」
「そのまさかなんだよね――」
僕が飲みたい紅茶。ホットコーナーには女性客が固まっていたが、ようやく順番が回って来た為、カップに注ぎ入れる。
「またって、郡くん前回1位だったの?」
「背水の陣で頑張ったんだよ」
ぼそっと『やば』と言葉を口にして驚く優くん。
待ち切れなかったのか、スプーンでソフトクリームを食べている。
こういったところは幸介に通ずるものを感じる。
「で、さっきの言い方だと今回も背水の陣ってか?」
「ちょっと理由は言えないけど、美海に1位を取って欲しいって頼まれて」
「かぁー……美波も大概だけど、上近江さんも郡への期待が重いな」
『じゃあ、それなら――』と、口にした優くんだったけど、それを遮る者が現れた。
「あの、突然すみません――」
「え、なに?」
幸介に声を掛けた人は、さっきホットコーナーにいた3人組の1人だ。
他の2人は幸介に声を掛けた子の後ろに立っていて、1人は優くんをチラチラ見ている。
残りの1人は誰を見るでもなく、鋭い目付きで壁に視線を送っている。
「皆さんは3人で来ているんですか?」
「そうだけど?」
「仲良いんですね。すごく楽しそうに見えました」
「まあな」
「それで……あの、私たちも3人で来ているんです」
「そう、それで?」
「その、年齢も近そうですし……もし、よかったらご一緒できたらなぁって」
見た目から判断するに、同い年くらいに見える。
そしてこれは、初めから察していたが幸介と優くん目当てのお誘いなのだろう。
もしかしたら何か用事があるのかもしれない、それを考慮して聞いていたが時間の無駄だった。
幸介も同じ判断を下したのか、ハッキリと彼女たちへ告げた――。
「今は男だけで楽しんでるから――じゃ、俺らは戻ろうぜ」
「あの、でしたらアトスタだけでも――」
「俺ら彼女いるからそれも無理だ」
SNSサイトの”アトスタ”の交換を願った女子に対してぴしゃりと言い放つ。
落胆する様子を見せた女子に背を向けて、スタスタ歩いて行く幸介の後に僕と優くんも付いて行く。
器用に片足を使って扉を開いた幸介。
行儀が悪いけど、開けてくれたのだからとやかく言ったりしない。
「なんか白けたな――」
「相変わらず幸介くんはモテるね。大変そうだけど」
2人の声に完全同意だから、紅茶を飲みつつ頷いておく。
「俺を知っているファンだったら、もうちょい対応は変えるけど。誰かも知らないやつにモテてもな? 嬉しくねーよ。つか、後ろにいた子は優狙いだったかんな?」
『うんうん』と、これまた頷いておく。
「はは、まさか。でも、背の高かった子は郡くんのことを意識していたよね」
「ああ、郡が目を向けたら壁を睨み始めた綺麗な子な」
「あの鋭い目付きをした子? 気のせいでしょ」
その子は最初から壁と睨めっこをしていたからな。
「鋭い目付きというか、郡と似た目元をした子だな。そう言えば、優を見ていた子は優と似た目元だったな」
つり目というか切れ長で大人っぽい印象をした子。
柔らかい印象を与える柔らかな垂れ目をした子。
確かに僕と優くんの目元に似た子たちだった。
幸介に声を掛けた子はお洒落な雰囲気が漂っていたから、女性版の僕らみたいな3人組だったかもしれない。
けれど、それが分かった所でどうにもならない。
気分を害した生産性の無い会話を広げても仕方がない。
とっとと話を変えてしまうのが吉だ。
「この話は終わり。ところで、優くんはさっき何を言おうとしたの?」
「だな。何を言おうとしていたんだ?」
「え? あーなんだっけ…………あ、そうそう。テスト近くなったら、勉強会でもしない? って、言おうと思ったんだ」
「いいね、賛成」
「そんな提案がくるなら広げなければよかったぜ」
「はは、残念でした。で、どうする? 男3人でする? それとも、それぞれ彼女に呼び掛ける?」
「いや、男3人でいいだろ。美波を呼んだら郡の邪魔ばっかりしそうだからな」
「女子がいたら賑やかで楽しそうだけど、勉強から逸れそうだよね。集中して真面目に取り組むなら男3人の方がいいかな。ところでさ、いい機会だから2人に聞いてみたいことがあるんだけど――いいかな?」
女子がいたら賑やかになる、そのことへ同意をしつつ『なに?』と聞き返す優くん。
付き合いが長いだけに、何か嫌な予感を察したのだろう。
ストローを咥えてコーラを飲みながら警戒した様子を見せる幸介。
「2人はさ、彼女のどんなところが好きなの?」
「それはちょっと……言うには恥ずかしくない?」
「そうかな? 僕は平気だけど」
『えぇー』と言葉を詰まらせる優くんに沈黙を維持する幸介。
僕がどうしてこんな質問をしたかと言うと。
先日、万代さんに頼まれた歌詞作りが発端だ。
美海から快諾されたと嬉しそうに報告してきた万代さん。
だから重い腰を上げて、少しだけ書いてみたのだが。
僕のノートに、人に見せるには恥ずかしい言葉が羅列されることになった。
だから、自分だけの経験を歌詞に落とし込むことは『危険』と判断した。
「さっきは歌って欲しいと言った2人のリクエストに応えたんだから、2人も僕のお願いを聞いてくれるよね?」
「そうだった……郡くんってこういう人だった……」
背もたれに体を預けて天井を仰ぐ優くん。
きっと、タピオカをご馳走した時のことを思い出しているのだろう。
後だしジャンケンのような不意打ちだから、小狡いと思われたとて仕方がない。
「郡、でもさ。俺と美波は――」
「そうだね、幸介には酷なことを言っているかもしれない。でも、短くない付き合いなんだから、幸介だって少しは美波の良い所を理解しているよね? まさか『無い』とは言わないよね?」
「目がマジじゃんかよ……」
美波の良さが分からないのに偽装交際を続けられる幸介ではない。
そしてそれは美波も同じだ。
だから少なからず2人は惹かれ始めていると、僕は考えている。
だから『無い』とかふざけた冗談は許すことなどできない。
それに――。僕は全力で2人を巻き込もうと画策しているのだから、やはり真剣になってしまう。
「ちなみに僕は美海のイタズラ好きの子供っぽい性格も好きだけど、大人っぽく僕を上手に転がしてくれるところも好きだよ。ギャップに弱いのかもしれない」
「郡くん、聞いてないんだけど……」
「いや、優よ。郡は言ったんだから言えよって言いたいんだろ」
「そんなの知ってるよ……」
それから――。
お調子者な面もあるけど情に厚く、周りをよく見ている気遣い上手なところ、2人になると凄く甘えん坊になるところが好きだと。
顔を赤くした優くんが、最後は声が細くなるほど恥ずかしそうになりながら言った。
郡を大切にしているところ、不器用で生意気で口も悪くて我儘な女だけど……根は優しいところは悪くないと思っていると。
ぶっきらぼうに、どこが投げやりに聞こえる言い方で幸介が言った。
「ふむふむ――ありがとう。参考になったよ」
「ちょっと待て、郡。参考にってなんだ?」
僕の肩に腕を回してきた幸介。その拍子に爽やかな匂いが漂ってきた。
香水か何かかもしれないけど、男なのに良い匂いがする。
ちょっと羨ましい。
「一般的なカップルについて知りたかっただけ。だから今度は順平にも聞いてみるよ」
誤魔化してはいるが嘘はついていない。
それでも、幸介はどこかまだ疑っている表情をしているけど。
「俺はちょっと顔が尋常じゃないくらい熱いからトイレ行ってくるね」
手の平でパタパタと仰ぎながら立ち上がり、優くんは廊下へ出て行った。
「つか、勉強会とか抜きにしてさ」
「うん?」
「今度は男子だけでお泊り会開こうぜ。優と順平がいいって言うなら4人でさ」
「楽しそうだし賛成かな。でも場所はどうする?」
家に呼んでもいいけど、クロコは幸介を嫌っているからな。
互いのためにもよくない。
そうすると外泊一択になるため、クロコを残すことになってしまう。
そのことは心配だが、一泊くらいなら母さんと美波にお願いすれば大丈夫だろう。
「俺の家でもいいけど、早百美と母親がうっとうしいからなぁ……」
早百美ちゃんには聞きたいことがあるし、久しぶりに千恵子さんと会いたい気持ちもあるけど。
「まあ、今すぐ決めることないか。他の2人にも相談しないとだし」
「それもそうか。んじゃ、優が戻ったらカラオケ大会の続きといきますか」
「いいけど、僕は他に歌える曲ないよ?」
「でも、最近は前よりいろいろ聴いているだろ?」
「まあ、それなりには」
言った通りそれなりにだ。
美海のお勧めや、街を歩いていて耳に残った曲など適当に聴いているだけ。
だから練習などしていないから、歌える曲のレパートリーは増えていない。
「真面目か!! そーいや、郡は生真面目ちゃんだったな。忘れてたわ!! つかよ? 別にカラオケは練習した曲を披露する場じゃないぞ? 適当なノリで歌っていいんだからな?」
「なるほど、確かに幸介の言った通りかも。別に上手に歌う必要なんてないのか」
「そうそう、そう言うこと。お、優も戻ったな」
「ただいま――って、何? 2人して? ずっと肩を回し合っていたの? とりあえず写真撮らせて」
「なら、3人で撮ってあいつらに送ってやろうぜ」
「いいけど、先に2人の写真ね。ちょっとライト点けるよ――」
そう言った優くんが室内照明を点けたことで、オレンジ系統の照明が室内を照らす。
そして僕と幸介のツーショット写真を撮り、次にスリーショット写真を撮って、それぞれの彼女へ送信した。
するとお返しにスリーショット写真が届いた。
お宝のような写真を保存しつつメプリで会話しているうちに、駅前で遊ぶ彼女たちが合流することになり、カラオケ大会は6人で開催されることになった――。
美波は歌を歌えないから楽しめるか心配だったけれど、
鼻歌を口ずさみ、体をゆらゆらさせるくらいには楽しめたようだ。
美波と佐藤さんから出された七草クイズ。
それに答えられなかった罰で科せられた謎のバラード縛り。
口を滑らせた優くんによって、惚気話の説明をする羽目になったり。
はたまた、悪意的に口を滑らせた幸介の言葉で、女子に声を掛けられた話を詰められたり――――と。
大変な場面もあったが、恋人、家族が隣にいて、友人もすぐ近くにいる空間は、とても楽しい時間だった。
室内を照らすだけのオレンジ色の暖色照明がまるで、明るい青春を可視化させたような錯覚をしてしまう程に――充足感を覚えさせる時間となったのだ。
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