第68話 結婚
時間はあっという間に流れて今は4月
互いの両親との挨拶も済ませてからはより一層僕たちの距離感が近くなったような気がする。
もう少しで僕の誕生日。
誕生日が来て僕が18歳になり次第籍を入れる予定だ。
「じゃあ、行ってくるね紫苑」
「行ってらっしゃ~い」
紫苑は大学一年生になったため朝一番の講義があまりないらしく高校三年になってからはほとんど紫苑に見送られている気がする。
「おはよう海星」
「ああ、おはよう」
登校中後ろから声をかけられた。
最近この時間にいつも会う茜だ。
あの一件以降僕への態度も柔らかくなって傲慢な彼女からは想像ができないくらいには謙虚になったと思う。
「海星は警戒心とかないの?」
「いきなり何だよ」
「だって元カノにべたべたされたら少し嫌だな~とか思わないの?」
確かに振られ方を考えたらそうなってもおかしくないのかもしれないけど。
「だって僕たちは幼馴染だろ。確かに嫌な振られ方はしたけど警戒するほどじゃないな」
「そっか」
茜はそっけなく答えて歩く速度を上げた。
「なんなんだ一体」
茜が何を考えてるのかわかんないけど、まあ機嫌が悪そうじゃないからいいか。誕生日まであと二週間ほど。
籍を入れても入れなくてもそう変わらないような気はするけどそれを言ったらおしまいなので考えないようにしている。
◇
「海星誕生日おめでとう!これで結婚できるね!」
「ありがとう。朝にでも一緒に婚姻届出しに行こうか」
「うん!」
正月あたりに互いの両親に挨拶をした後僕たちは婚姻届に記入をしておいておいたのだ。
だから、後は本当に出しに行くだけ。
「ふぅ~でもこれでやっと変な男の人に絡まれなくて済むよ」
「やっぱり紫苑は大学でも人気なんだ」
「まあね。私は海星にしか興味ないから鬱陶しいだけなんだけどね。告白とかされてもって感じ。薬指に指輪つけてるんだから察してほしいよね」
紫苑は心底うんざりしたように顔をしかめている。
本当に大変らしい。
「でも、もう苗字も変わるからこれでさすがに告白してくる人はいなくなってくれるといいな」
「あはは。なんか頑張ってね?」
「他人事みたいに言わないでよ!今日から君の奥さんになるんですけど!?」
「それはそうだけど大学内のことは干渉できないからな。本当に困ったことがあったら呼んでね?すぐに行くから」
少し奥さんという言葉に恥ずかしくなって大学内は干渉できないとか言ってしまったけど紫苑に何かあったら大学内だろうがどこだろうが駆けつける。
「う、うん。でも、そうそう変なことは起きないよ」
「それフラグって言うんだけど?」
そんな会話をしつつ僕たちは少し談笑してから眠りについた。
宣言通り朝になったら二人で市役所に行って婚姻届を提出してきた。
何ら問題なく受理されて晴れて僕たちは今日から夫婦になったのだった。
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