第29話 やっぱり来るんだよね
「海星ってもしかしてラブコメ主人公だったりするの?」
「自分でもそうなのかもしれないって思ってきたよ」
紫苑はジト目で僕のことを見つめてきている。
理由は簡単だ。
目の前には昨日家を訪ねてきた従妹の海ちゃん。
土日に家に来るかもとは思ってたけどまさかこんなにも早く来るなんてな。
「えへへ~来ちゃった」
「来ちゃったじゃないだろうに」
海ちゃんは満面の笑みで僕の前でにやにやしていた。
可愛いとは思うけどやっぱり僕の中では紫苑が一番かわいい。
「せっかく久しぶりに会ったんだしお話でもしようよ」
「まあ、それは別にいいけど紫苑もそれでいい?」
「うん。さすがに断るのも申し訳ないですし、海星の昔のお話に私も興味がありますので」
紫苑は学校で見せる完全無欠の顔で言った。
どうやら海ちゃんの前ではそういうスタンスで行くようだ。
ならば、僕もその紫苑に合わせることにしよう。
「じゃあ、行こ~」
「わかった。わかったから引っ張らないで」
ぐいぐいと海ちゃんが引っ張ってくる。
僕は引っ張られるがままにリビングに連れていかれる。
「ちょっと星乃さん!?あんまり海星にべたべたしないでください!」
「いやで~す。従妹なんだからこれくらいのスキンシップは当たり前でしょ~」
「ぐぐぐぐ」
「ちょっと海ちゃん!?」
あんまり紫苑を煽らないでほしい。
海ちゃんが帰ってから怒られるのは僕なんだから。
「いいじゃん。最近あんまり会ってなかったんだしさ~」
「まあ、最近会ってなかったのはそうだけどさ」
「だ~か~ら~海星から離れなさいって!」
紫苑が海ちゃんに掴まれているのと逆の手を引っ張ってくる。
「痛い痛い痛い!?」
両腕を反対方向にとんでもない力で引っ張られる。
かなり痛い。
捥げそう。捥げそう。本当にヤバイ!?
「あ、ごめん」
「ちょっ!?」
いきなり海ちゃんが手を離すから紫苑のほうに倒れこんでしまう。
「んん?」
倒れこんだのに痛くない?
それになんだか柔らかい?
「ちょっ海星!?」
「ご、ごめん紫苑」
なんだか柔らかいと思っていたら紫苑の胸のだった。
本当、僕はいつからラブコメ主人公になったんだ?
「すぐ退くから」
「う、うん」
即座に紫苑の胸から顔を上げて立ち上がる。
正直な話少し幸せな気分だったけどこういうのはもっと手順を踏んでやるべきだ。
「ほら、紫苑」
尻もちをついている紫苑に手を差しだす。
ラッキースケベとはこういうものなのかと思ったけど必死にその思考を飛ばす。
「ありがと」
すぐに差し伸べた手を取って紫苑が立ち上がる。
「もぉ~二人でイチャイチャしないでくださいよ」
「いやいや!?海ちゃんが引っ張るからこんなことになってるんだけど!?」
「そうですよ。あんまり人のことを引っ張るのはよくないですよ」
「はぁ~い」
特に気にした様子のない海ちゃんはから返事だけするとそそくさとリビングのほうに歩いて行った。
「なんかごめんね。うちの従妹が」
「ううん。海星が謝ることじゃないよ。でもあのお転婆っぷりは昔からなの?」
「まあね。めんどくさすぎて適当に話しを流すことが多かったような気がするかな。だから多分適当に話しを流している話題の一つが結婚だったのかも」
「いやいや!?その話は流しちゃだめでしょ!?」
「だよね~」
僕も流しちゃだめだと思いました。
でも、当時は本当にめんどくさくて話なんて全く聞いてなかったんです。
「もお、早くいかないと星乃さんに怪しまれるよ」
「うん。じゃ行こうか」
ジト目を向けられて僕は眼をそらしながらリビングに向かった。
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