第28話 嵐な海ちゃん
「初めまして。海君と結婚の約束をした星乃 海です」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。海星の恋人の藤音 紫苑といいます」
冷戦かな?
2人とも向かい合って表面上は穏やか?な自己紹介を始めていた。
2人とも顔は笑ってるのに目が笑ってない。
それに、紫苑は海ちゃんがいるからかいつもの生徒会長モードで冷徹な雰囲気をかもしだしていてちょっと怖い。
海ちゃんも海ちゃんでかなりの圧を放っている。
「で、今日はどんなご用件で来たのかしら?」
「別に私は海君に会いに来たかったから来ただけですよ。でも、まさか海君が他の女と一緒にいるなんて思いもしなかったけどね」
「ぐっ、」
流れ弾が飛んできた。
正直反論とかもないので黙っていることしかできない。
ああ、本当どうしてこうなったんだろ?
自問自答するけど答えは依然として見つからなかった。
「そうでしたか。でも、人の家を訪ねるなら本人に連絡することをお勧めするわ」
「ありがとうございます。次回からはそうしますね」
「所で、海ちゃんも今日テスト終わったんだよね?にしては来るのが早すぎない?」
海ちゃんの家はここからだと数時間はかかる場所に位置していたはず。
なのにこんなに早く来ることは可能なんだろうか?
中学三年生でもうそろそろ受験だろうに。
「まあね~成績的に推薦がもらえることは確定してるしテストもほぼ満点だろうから終わった瞬間にお母さんに送ってもらったの!というわけで泊めて?」
「、、、、、は?」
「えっと、星乃さん?それ本気で言ってますか?」
「もちろん本気ですよ?というかそのつもりでここまでお母さんに送ってもらいましたし帰るにも日曜日に迎えに来てもらえないと私帰れないんだよね」
「、、、無計画過ぎない?」
「泊まるって言ってもどうするの?まさかこの家に泊まろうとしてるわけじゃないですよね?」
「全然そのつもりですけど?」
「「はぁ」」
ため息が重なる。
どうやら紫苑も僕と同じ気持ちのようだ。
「えっとね?海ちゃん。さすがにこの家に君を泊めるわけにはいかないんだ。だから泊まるなら僕の実家にしてくれ」
「え~なんでだ~」
「僕はこの家の家主じゃないし何よりも僕は紫苑と付き合っている。そんな中で他の女の人と同じ屋根の下で寝るのは少し抵抗がある。昔の約束を忘れていた件については本当にごめん。僕はもう君と結婚するつもりはないんだ」
正直な気持ちを吐露する。
海ちゃんには悪いけど僕はもう紫苑以外と付き合う気なんてさらさらない。
海ちゃんとは少し仲のいい従妹くらいの関係性がちょうどいいのだ。
「む~そこまではっきり言われると流石に心にくるな~」
「ごめんね。でもこういうのははっきり言葉にしたほうがいいと思うから」
人の思いは言葉にしないと伝わらない。
言葉にしても完璧に伝わるとは限らない。
でも、だからこそしっかりと気持ちは言葉にしないといけない。
「そっか~海君少し変わったね?」
「そうかな?もし変わったと思うならそれは紫苑のおかげかもな」
「ふふっ。ぞっこんだね~さっきから藤音さんが顔を真っ赤にしてるしアツアツだ~」
「、、、、海星のバカ///」
「えっと、ごめん?」
「謝ることじゃないけど」
「じゃあ、私は海君の実家のほうに泊めてもらおうかな。でも、私は海君のこと諦めるわけじゃないですから。うかうかしてると私が海君のことを奪っちゃうからね?」
「、、肝に銘じておきます」
紫苑はウインクをする海ちゃんに苦い顔をしながらうなずいていた。
僕としては何があっても紫苑から離れるつもりはないし紫苑を手放すつもりもない。
「じゃ、私は海君の実家に挨拶に行ってくるから。また今度ね?」
「はいはい。ごめんね海ちゃん」
「謝らないで。それに私は絶対に海君を手に入れるから」
そういって海ちゃんは実家のほうに歩いて行った。
もしかしたら僕には女難の相があるのかもしれない。
「海星よかったの?」
「何が?」
「、、、星乃さんのこと」
「全然良いさ。僕は紫苑が好きだから」
そっと隣にいた紫苑を抱きしめる。
少し震えている。
「海星」
「さて、とりあえずこれからどうする?多分あの様子だと明日あさっては海ちゃんが家に来るような気がするけど」
「どうするって言われても。さすがに断るわけにはいかないしまあ、いいんじゃない?二日くらいさ」
「そういう割には少し震えてるけど?」
「うるさい。私だって不安になることくらいあるの。相手があんなに可愛い子ならなおさらにね」
胸に顔をうずめながら紫苑が不満げにそういった。
「全く不安になることは無いんだけど、気持ちはわからなくもないかな」
「でしょ?」
「うん。とりあえずお昼ご飯にでもする?」
「うん!海星のご飯食べたい!」
海ちゃんという嵐がやってきた。
でも、別に悪いことじゃなくて茜に比べたら本当に平和的だったと思う。
明日からくる海ちゃんへの対応を考えながら僕は昼ご飯を作るのだった。
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