第26話 恋人と二人きりの時に他の女の子と考えたらだめだよね?
予定を決めて夏休みへの期待が高まっている中、僕たちの前に立ちはだかるのは学生がみんな嫌いであろう期末テストだ。
「海星って成績は良いほうだよね?」
「まあ、それなりにはいいと思う。さすがに紫苑みたいに高い点数は取れないけどね」
「ふふ~ん。まあ私は頭いいからね~でも、良かったよ。これで海星が赤点とかとるような人だったらどうしようかと思ったよ」
「まさか。さすがに赤点なんかは取らないよ。それで補修とかになったら海行けなくなるしね」
「そういう事。だから一緒に勉強しよ!私が教えてあげるからさ」
休日
2人で机に座りながら紫苑は胸を張ってそういっていた。
紫苑に勉強を教えてもらえるなら今回は学年でも上位を狙えるかもしれない。
勿論、紫苑に教えてもらうだけじゃなくしっかりと教えてもらった後に復習とかはしないといけないけど。
「じゃあ、お願いしようかな」
「任せなさい!私にかかれば海星を学年一位にすることなんて簡単なんだから!」
「いや、別にそこまで求めてな、」
「やるからにはとことんやろうね?か、い、せ、い?」
「はい。わかりました」
紫苑から発せられる圧に負けてとんでもないことを口走ってしまった気がする。
でも、紫苑が大学に進学したら僕もその大学を目指すつもりだから今のうちにしっかり勉強しておいたほうがいいのかもしれない。
僕は自分をそう納得させた。
◇
「ここ違うよ。ここの式はね、こうしてこの公式を使ったほうが簡単にできるよ」
「あ、そうなの?知らなかった。ありがと」
「全然良いよ~確かにこのやりかたって授業でやんないもんね」
隣にいる紫苑が適宜教えてくれるので一人でやるときよりも断然はかどる。
「紫苑は本当にすごいね」
「いきなりどうしたの?」
「いや、僕の勉強を教えながらしっかり自分の勉強もしてるし」
「まあね。今までそれなりに勉強はしてたからね~でも、海星だってかなり飲み込みが速いよ?」
「そうなのかな?」
「うん。一回言ったらすぐに覚えて次はミスしないし」
「それは紫苑の教え方がうまいからだよ」
実際に紫苑の教え方は本当にうまいと思う。
なんでこうなったか、どういう式を使いどういう考え方でその式を使うのかを丁寧に教えてくれる。
「そうかな~でも、ほめられて悪い気はしないかな」
「ならよかったよ」
こんな感じに時々雑談を挟みながら僕たちは期末テストに向けた勉強を進めていく。
好きな人に勉強を教えてもらうのがこんなに楽しいことだなんて思わなかった。
そういえば、茜はどうなったんだろうか?
あいつは一人で勉強するわけじゃないし、
自分には関係ないと思いながらもついつい気にしてしまう。
それに、茜にあんな仕打ちをされたけどそれで退学にでもなったら目覚めが悪い。
「海星、今他の女の子のこと考えてたでしょ?」
「なんでそれを、あ!?」
とっさに言い訳をしようと発言したけど、これは暗にほかの女のことを考えていましたって認めているようなものじゃないか?
「やっぱり考えてたんだ。誰の事考えてたのかな?従妹の女の子?それともこの前の幼馴染ちゃん?もしくは私の知らないほかの人だったりするのかな?」
やばい。
顔は笑ってるのに眼が据わってる。
「え~と、」
「正直に答えたほうが身のためだよ?いつもみたいにごまかしたり話をそらそうとしたら、ね?」
どうやら、逃げ道はないらしい。
覚悟を決めて深呼吸をして正直に話す。
「茜のこと考えてた。今こうやって紫苑に勉強を教えてもらってたらなんか思い出しちゃってね。ごめん」
「別に謝ることじゃないと思うけど私と二人っきりの時にはあんまり考えてほしくないっていうか、ちょっともやもやする」
「うん。気を付けるよ。ごめんね」
言って僕は隣にいる紫苑を抱きしめる。
最近こういう恋人らしいスキンシップをしていなかったので緊張するけど、安心させるためにもできるだけ優しく紫苑を抱きしめた。
「だから、謝らないでいいってば。今度からはやめてよね」
「もちろん。不安にさせてごめんね」
「いいよ。でも、もし海星が私から離れたら私なにするかわからないかもだからね?」
「離れる気なんてミリで無いから安心して」
なんだか、紫苑のヤンデレのような一面を垣間見た気がするけどまあいいか。
それだけ深く愛されてるって考えたら悪い気はしないな。
と考えることにしてそのあとは黙々とテスト勉強に勤しむのだった。
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