第24話 修行の成果
「や、やっと終わった」
「お疲れ様。やっぱり海星って覚えるの早いよね」
「そんなことないよ。それより紫苑のほうがすごいよ。毎日こんな仕事をやってたの?」
「まあね~でも、本当に慣れだよ。海星が手伝ってくれたからかなり早めに終わったし」
「ならよかったよ」
紫苑はそういってくれてるけど今日に関してはほとんど作業のやり方を教えてもらっただけだ。
なんなら足を引っ張っていたと思うんだけどな。
「それよりも早く帰ろ!さすがにお腹がすいてきたよ~」
「だね。早く帰ってご飯にしようか。何か食べたいものとかある?」
「お任せで!というか海星が作ってくれたものなら何でもいいよ!」
「わかった。じゃ、早いとこ帰ろうか」
「うん!」
こうして生徒会の仕事を終わらせた僕たちは足早に帰路に就いた。
◇
紫苑の生徒会作業を手伝うようになってからしばらくたった。
流石に毎日のように手伝っていると僕も慣れてきて紫苑と同じとまではいかないけどまあまあ仕事をこなせるようになってきた。
「海星って本当に物覚えが速いね。こんなに早く仕事を覚えるなんて」
「そうでもないよ。紫苑の教え方がうまいからじゃない?それより今からちょっとだけ席を外してもいい?」
「もちろんいいけど何かあったの?」
「いや、ちょっと呼び出されてさ」
「それって女の人?」
やばい、なんか室内の温度が数度下がったような気がする。
慎重に発言を選ばなければ。
とはいっても今回呼び出されたのは女の人じゃないんだけどね。
「違うよ。男の人」
「本当に?」
「嘘なんかつかないよ。まあ、すぐ終わると思うからちょっと待ってて」
「わかった」
少し不服そうではあるけど紫苑は納得してくれたようで僕を送り出してくれた。
「さて、どうせ面倒ごとだろうけど何とかしますかね」
生徒会室から出て体を伸ばす。
面倒ではあるけど無視したらさらに面倒なことになりそうなので行くことにした。
◇
「で、来たわけだけどやっぱりこんな感じか」
指定された校舎裏にたどり着くとそこにはガタイの良い男数名が立っていた。
果たし状のような紙が入っていた時から大体想像はついてたけどやっぱりこうなったか。
「やっと来たか天乃。待ちくたびれたぜ」
男たちの中心にいた男には見覚えがあった。
紫苑に絡んでた男か。
「一体何の用でしょうか?」
「おいおい。単刀直入だな。まあいい。俺もそのほうがありがたいしな」
ニタニタと笑いながら中心の男は僕のことを見据えてくる。
全く、こんな単細胞な奴が未だにいるなんて。
義務教育の敗北かな?
「藤音 紫苑と別れろ」
「いやだね」
こんな奴に敬語を使う必要性も感じないな。
それにこいつの要求も大方想像通り。
「そうか~なら仕方ないな。お前らやれ」
男がそう指示を出すと周りにいた男たちがニタニタと笑いながら僕に近づいてくる。
「いや~残念だな~俺たちもこんなことしたくないのにな~」
「ぬかせ。そんなことミリで思ってもいないくせによ」
「バレたか。まあ、いい。お前は死んどけよ!」
一人の男がそう言いながら僕に向かって殴りかかってくる。
「遅い」
拳を避けてからカウンターを入れる。
昔の僕ではこんな芸当到底できなかっただろうけど一条さんのおかげでこれくらいなら楽勝になってしまった。
「ぐはっ」
男が白目をむいて倒れる。
その光景に動揺したのか男たちの動きが少し鈍くなる。
その瞬間を見逃さずにもう一人の男に拳を叩き込む。
「これで二人目。あと三人か」
周りを見渡しそう告げる。
あまりにも弱い。
群れて気が大きくなっただけのただの不良だ。
「はっ?なんなんだよお前!?」
「なにって紫苑の彼氏だよ」
「そんなことを聞いてるんじゃない。なんでお前がそんなに強いのかって聞いてるんだ!」
「お前に教える意味がないな。それにお前たちは僕をリンチにしようとしたんだからもちろんやり返される覚悟があるんだろ?」
「くっ、」
顔をゆがめながら紫苑に絡んでいた男は後ずさる。
「ひっひぃ」
他の男二人は早々に逃げ出した。
残りいるのは紫苑に絡んだ男だけだ。
「これで一対一になったわけだけどさ、どうする?」
まあ、何を言われても見逃す気はないけど一応ね。
「なめるなよ!」
顔を真っ赤にしながら男は殴りかかってきた。
大ぶりの拳はとても軌道が読みやすい。
そのため避けるのも容易だ。
「もう紫苑に絡むなよ?」
いいながら前傾姿勢になっていた男の鳩尾に膝を叩き込んだ。
これで終わりか。
あっけなく終わった。
「これで紫苑に絡まないといいんだけどね」
それよりも早く紫苑の所に帰ろう。
あんまり待たせて心配させると良くないからね。
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