第23話 冷徹な一面

「ちょっと遅れたか?」


 いつも通りに学校の授業が終わり紫苑との待ち合わせ場所に向かっていた。

 途中に先生に頼みごとをされたせいで少し遅れてしまった。


「全く、提出物を運ぶくらい自分でやってほしいよ」


 悪態をつきながらも紫苑の下に急ぐ。

 いつも僕のほうが先についていたけど今回は紫苑のほうが速そうだ。


「やっと着いた、」


 待ち合わせ場所に行くとそこには男子生徒に絡まれている紫苑がいた。

 やっぱりモテるんだなと思うけどさすがに気分が悪い。

 僕は意外と独占欲があるほうなのかもしれない。


「最近は僕たちの関係は知れ渡ってると思うんだけどな。やっぱり僕がなめられてるからかな?」


 少しの苛立ちを抱きながら僕は二人の間に割り込もうとした、が


「なんなんですか?さっきから。しつこいですよ?」


「いや、やっぱりあんな奴より俺のほうが、」


「今、なんと?」


「え、あ?」


「いま、なんと言ったのですか?」


 紫苑が底冷えするほどに冷たい声で男子生徒に詰め寄っていた。

 僕が今まで見たことない紫苑がそこにはいた。


「紫苑ってあんな顔するんだな」


 目つきは鋭く、声は冷たい。

 視線だけで人を殺せそうな圧を紫苑は発していた。


「あんな奴?それは一体誰のことを言っているのでしょうか?もし海星のことを言っているのならあなた、、、」


「紫苑お待たせ~」


「え!?海星?」


「遅れてごめんね。ちょっと先生に呼び出されててさ。あっ!?ごめんお話し中だった?」


「いいえ?全然大丈夫ですよ。それじゃあ行きましょうか」


「うん」


 紫苑は男子生徒を無視してそそくさと歩いて行ってしまった。

 どうやらこの男子生徒は紫苑の逆鱗に触れてしまったらしい。


「、、、ちっ」


 僕のほうを見て舌打ちをして男子生徒はどこかに行ってしまった。


「全く、面倒ごとにならなければいいけど」


 ◇


「じゃあ、仕事を始めようか」


「うん。でも、生徒会の仕事って具体的には何をすればいいの?」


「えっとね~とりあえず文化祭とか体育祭の行事関係の申請を受理したり運営したりするのが主な仕事かな?他にも校則関係とかいろいろあるけど基本的には行事の運営かな?」


「そうなんだ。紫苑よく今まで一人でやってきたね」


「まあね。私はそういう仕事は結構得意だったから。時間もたっぷりあったしね」


「そういうもんなの?」


「そういうもんだよ」


 言いながらも紫苑は書類に目を通しながら何かを書いたりしていた。

 他にもハンコを押したりしていた。

 その速度には目を見張ることがあり、かなりなれていることがうかがえた。


「何その手際、、、」


「やってればなれるよ。ほらっ!やりかた教えるから海星も手伝ってよね!」


「わかりました、、、」


 紫苑のためとはいえ僕はとんでもないことを安請け合いしてしまったらしい。

 でも、この仕事を知ってしまったらなおさら紫苑一人に任せるわけにはいかないので頑張って仕事を覚えることにしよう。


「そういえば海星、、、見た?」


「ナンノコトカナ?」


「なんで片言なわけ?」


「ソンナコトナイヨ」


「嘘だ!絶対に片言だもん!見てたんでしょ!」


「まあ、はい」


「どこから!?」


「まあ、わりと最初から」


 話の流れ的に一番初めということは無いだろうけど結構初めのほうだと思う。

 僕的には普段見れない紫苑の一面が見られてよかったけど紫苑的には見られたくなかったのかもしれない。


「うそだぁ~~~見られたの!?あれを!?」


「うん。結構迫力あったよ?」


「やめて!言わないで恥ずかしいから!」


「むぐっ!?」


 いきなり口を押さえられて変な声が出てしまう。


「海星!盗み見はだめだと思うの。というわけだから記憶を消そうか!大丈夫少し後頭部に衝撃を与えるだけだからさ!」


「ふご、むごごごご」


 やばい。

 このままじゃ後頭部を殴られる。

 記憶が飛んでしまう!


「んん、ぷはっ。待ってくれ紫苑。大丈夫僕はどんな紫苑でも好きだから!」


 なんとか紫苑の手をどけて抵抗する。


「違うの!私が恥ずかしいの!あんな姿海星に見られるなんて、、、もうお嫁にいけない!」


「大丈夫だ。紫苑ならいける!というか僕のところに来てくれ!」


「え!?!?!?!?!?」


 ん?なんだかとっても不味いことを言ったような?

 でも、紫苑と結婚したいのは本当のことだし嘘でもない。

 いや、こんな場面でいう事じゃないか?


「とりあえず、その椅子を下ろしてくれ。な?」


「、、、、、、、」


 紫苑は顔を真っ赤にしながら振りかぶっていた椅子を下ろした。

 な、何とか助かった、、、


「海星、さっきのって本気?」


「当たり前だよ。こんなこと冗談で言わない。でも、僕はまだ未成年だしいろんなことに対して責任も取れないから責任が取れるようになったらまた改めて」


「、、、うん///」


 どうしよう。

 なんか妙な空気になってしまった。

 僕の責任ではあるんだけど、、、どうしよう。


「気を取り直して仕事するよ!教えるから!覚悟しといてよね」


「、、、はい」


 空気が戻ったのは良いけど気を紛らわせるように紫苑が張り切ってしまったので今日はとても大変な一日になりそうな気がする。

 でも、紫苑と一緒ならそれでいいかもしれないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る