第22話 話し合い

 紫苑の風邪が治って少し経った。


「紫苑ちょっといいかな?」


「ん?どうしたのいきなり」


「いやさ、この前紫苑が熱出したじゃん?」


「うん。あの時は看病してくれてありがとね!」


「それは全然良いんだけどさ。それよりもその時に病院の先生が寝不足だって言ってたんだよね。紫苑夜に何かしてるの?」


「、、、、、何のことかな~?」


「今の間は何だい?絶対に何かをしてるよね!?」


「海星あんまり女の子のプライバシーを侵害するものじゃないよ?」


「それは確かにそうだけど。はぁ。仕方ないか。紫苑選んで。夜ご飯が無くなるか話すか」


 あんまりこういう手は使いたくなかったんだけど、なんか隠してる気がするししょうがないか。

 僕としては紫苑がご飯をおいしそうに食べてるのを見るのが好きなんだけどな。


「か、海星!?それはちょっと卑怯じゃない!?」


「許してくれ。紫苑はこうでもしないと絶対に話してくれないだろうしなんだか無理してる気がするからさ」


「くっ、やっぱり海星に隠し事は無理か~」


「話す気になってくれた?」


「うん。さすがにご飯を人質に取られたらね~」


「ならよかった。じゃあ、聞かせてもらえる?」


「怒らない?」


 気まずそうに見つめてくる紫苑だけど怒るか怒らないかは話を聞かないと判断できないから無言を返すことにした。


「なんで無言なの!?」


「まあまあ。とりあえず話してよ」


「むう。今日の海星は意地悪だ」


 そんなことは無いと思うんだけど紫苑が言うならそうなのかもしれない。

 でも、昔紫苑も僕のことを聞いたんだからこれはある種の意趣返しだ。

 本当に紫苑の体が心配っていうのが一番大きいけどね。


「実は最近あんまり寝てないんだよね」


「でも、そんなに遅くに部屋にいってるわけじゃないでしょ?それに宿題とかも紫苑が終わらせれないわけないし」


「生徒会の業務だよ。さすがに学校では終わらないんだよね~」


 やっぱりか。

 普通の生徒会メンバーなら複数人でやる作業だし、放課後に残ってやるものだ。

 それに対して紫苑は一人だし僕と出会ってからは放課後に残っているような素振りもなかった。

 今までずっと夜遅くまで起きて作業をこなしていたのだろう。

 それなのに僕は紫苑のそんな様子に気づかずにのうのうと一緒にいたなんて自身の至らなさに頭痛がしてくる。

 紫苑に並び立てるような人間になりたいのにこんな体たらくだとそれはまだまだ遠そうだ。


「海星?」


「あ、いや、何でもない。ごめん気づけなくて」


「いやいやいや!?私が海星に気づかれないようにしてたんだから気づかなくて当然だって!」


「でも、紫苑が無理してるのに気づけなかった。彼氏として不甲斐ないよ」


「もう、すぐにそうやって自分を卑下するんだから。言ってるでしょ?気づかれないようにしてたってさ。だから海星が気にすることじゃないんだって」


「そうは言ってもね。」


 やはり、さすがに自分をもっと見つめなおすべきだろう。

 勿論紫苑と一緒にいる時間を増やすこともそうだし、並行して体も鍛えていかないといけない。

 週一回で通ってる一条さんの所のことはまだ秘密にしたままだったけど、もうそろそろ体もいい感じに仕上がってきたしサプライズ計画を実行してもいいかもしれない。


「あと、紫苑。今度から学校に残って生徒会の仕事は終わらせようか」


「へ!?それって海星と一緒に帰れないってこと!?」


「違う違う。僕も手伝うから一緒にやろうってこと。一人よりも負担が減るし夜も早く寝れるようになる。一石二鳥でしょ?」


「それはそうだけど、、、海星に迷惑かけちゃうし」


「前も言ったぞ?紫苑のことを迷惑だなんて思わないって。だからそんなことを気にする必要はないしそもそも学校で紫苑と一緒にいる口実みたいなものだから気にしないで」


「そういうならいいけど、、、」


「というわけで明日からそうしようか!」


「うん!わかった。でも、そういえばわたしももうそろそろ生徒会長の役目が終わるのか」


「そういえばもうそろそろだったね。やっぱり悲しい?」


「う~ん。あんまり肩書には興味ないしな。だって海星は私が生徒会長じゃなくても一緒にいてくれるでしょ?」


「もちろん。僕はどんな紫苑でも一緒にいるつもりだよ」


「だから、別にどうでもいいかなって。ただ、後任がどうなるのかは気になるけどね」


「ああ~」


 うちの学校の生徒会は少し特殊で会長を選挙で決めて他の役員は会長に選択権がある。

 つまり、会長が無能だとこの学校の運営にかかわる。

 紫苑もそれが分かっているので心配してるんだと思う。


「まあ、僕はやるつもりないよ?紫苑みたいに一人で業務はこなせないしそれに何より紫苑と過ごせる時間が減っちゃうしね」


「嬉しいこといってくれるじゃん!でも、確かにそのほうがいいかも。生徒会の業務って結構多いからね」


「そんなのを一人でやってるってやっぱり紫苑もなかなかだね」


「まあね~」


 紫苑がこういうってことは相当に業務量が多いのだろう。

 少なくとも僕はごめんだな。


「ということで話はこれでおしまい。でも、紫苑?さっき言った通り僕が紫苑のことを迷惑だなんて絶対に思わないから何かあったらすぐに相談してね?それで僕が紫苑を嫌いになったりは絶対にしないからさ」


「う、うん。わかった///」


「約束だよ?」


「わかったって!じゃあ、今日はおとなしく寝るね」


「うん。おやすみ紫苑」


「おやすみ海星」


 こうして僕たちの話し合いは終わった。

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