第19話 デートの前には修羅場を添えて
「そういえば、私がレジにいってる時何があったか教えてよ!」
「あ!?」
完全に忘れてた。
でも、一体どういえばいいんだ?
従妹と結婚の約束をしていたらしいですなんて言えるかぁ!?
いや、無理ですよね~
「完全に忘れてたみたいだね。で、何があったのかな?」
「えっとですね」
迷う!
正直に言うべきか否か!
でも、ここで素直に言わないのは紫苑に対する裏切りのように思えるし。
「紫苑がレジに行ってる時に見覚えのない番号から電話がかかってきてることに気づいて掛けなおしてみたんだよ」
「それで?」
顔は笑ってるけど目が笑ってない。
最近この表情の紫苑をよく見ているような気がする。
ははっ、これごまかさないほうがいい奴や。
「出てみたら昔仲良かった従妹でして」
「従妹がいたんだ?」
「まあ、普通にいたね。最近は全くあってなかったから忘れてたけど」
「いや、普通忘れる?」
「まあ、忙しかったから」
当時は茜の世話などをしていて周りに目を向ける余裕があんまりなかった。
言い訳にすぎないけど。
「で?どうせそれだけじゃないんでしょう?」
やっぱり勘が鋭いな~
と僕は思いながら肩をすくめて次の言葉を紡いだ。
「えっとですね。昔に結婚の約束をしてたらしくて。しかも、来年にうちの高校に入学する予定みたいで」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
今まで聞いたことのないくらいの悲鳴?が部屋中に響き渡った。
「は!?え!?海星結婚の約束してたの!?しかもベッタベタな奴?」
「まあ、らしいです。僕も本人に聞くまで忘れてたけど」
「それは許嫁とかだったりする?」
「違う違う。子供同士のたわごとみたいな感じかな?まあ、海ちゃんは本気にしてるらしいけど。」
「海星は結婚する気は無いの?」
紫苑は少し不安げに僕のことを見つめてくる。
正直、忘れていたことに負い目はあるけど僕が今一番大切なのは紫苑だ。
勿論海ちゃんと結婚する気はないし、紫苑以外の女性と結婚する気もない。
「もちろん。結婚するなら紫苑だけかな」
自分で言ってて恥ずかしい!?
でも、こういうのはしっかりと言葉にしないといけないし。
「…バカ///」
え、可愛すぎない?
紫苑は顔を真っ赤にして俯いていた。
「まあ、そういうわけだから心配しなくてもいいよ?僕は紫苑しか見て無いから」
「私も海星しか見て無いから!もう変な勘違いしないでよね!」
カウンターを喰らってしまった。
紫苑がこう言ってくれるのだから僕はこの言葉を信用しよう。
「わかったよ。今度海ちゃんには事情を話しておくよ。納得してもらえるかはわかんないけど」
「そっか。確かに申し訳ないよね。でも、海星はもう私のだから」
「わかってるよ」
僕たちは少しの気まずさを感じながらそれぞれの部屋に帰った。
「はぁ~にしても結婚の約束とかほんとにべたな展開だな」
忘れてたのは申し訳ないけど僕にはもう紫苑がいる。
たとえどんなことがあっても僕は紫苑から離れるつもりはない。
「さて、海ちゃんになんていえばいいんだろ?」
とはいったもののなんて断りを入れればいいのかあんまりわかんないんだよな。
何とか正直に言ったほうがいいだろうな。
「ここでごまかしたりしたら海ちゃんに失礼だしな」
こう考えると気が重くなってきたけど、とりあえずは明日の水族館デートに専念することにしよう。
楽しみだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます