第17話 未来のお嫁さん現る

「こっちとこっちどっちがいいかな?」


 紫苑は二つの服をもって僕にそう問いかけてきていた。

 聞いたことがある。

 こういう時女性側はもう答えが決まっていて同意が欲しいだけなのだと!?

 つまり、紫苑の心の中ではもうすでに答えは出ていて僕はその答えを見抜かないといけない。


「こっちの白いワンピースは清楚な感じがしてすごく紫苑に似合うと思う。こっちのパーカーはゆったりしてて紫苑の可愛さが引き立つと思う」


 僕が出した答えはどっちも褒めることだった。

 でも、今僕が言ったのは嘘とかじゃなくて本心から出たものだ。

 だから、どうか修羅場だけはやめてください!?


「そっか~つまりどっちも似合うってこと?」


 少しドヤ顔気味に紫苑がそうつぶやく。

 実際どちらも似合うと思うしその服を着ている紫苑を見たいと思う。


「まあ、うん」


 素直に言ったけどなんだか恥ずかしくなって僕は紫苑から視線を逸らす。

 心臓がうるさい。

 紫苑はたまに顔をすごく近づけてくるときがある。

 もちろん嫌なわけじゃないけど心臓が持たない。


「ふふ~ん。じゃあ、二着とも買おうかな!明日のデートはおそろいの白いパーカーで行こうよ!」


 紫苑は片手に持っているパーカーを掲げながらそう提案してきた。

 ペアルックか。

 いいなそれ。


「うん。そうしよう!」


「やった!じゃあこれ買ってくるね!」


 紫苑はそういって服をもってレジのほうに小走りで向かっていった。

 足取りはとても軽そうで今にもスキップしだしそうだった。

 ん?いや、あれスキップしてるな!?

 そんなこんなで紫苑がレジに向かっていったあと手持無沙汰になった僕はスマホを取り出す。


「なんだこれ?」


 画面を見ると見覚えのない電話番号から三件電話がかかってきていた。


「誰だ?って見覚えがないんだからわかるわけないか」


 でも、三件もかかってきてるってことは大事な用事でもあったのかな?

 だとしたら掛けなおしたほうがいいのかな?


「まあ、かけても死ぬわけじゃないだろうしかけてみるか」


 見覚えのない電話番号に電話をかける。

 3コールしたくらいで電話がつながった。


「もしもし?どちら様ですか?」


「えっと、そちらから三件電話がかかっていたので何か御用があったのかと思いまして」


「ってことは海君!?やっとつながったよ~」


 電話相手は嬉しそうにはしゃいでいる声が聞こえる。

 誰だ?僕のことを海君なんて呼ぶ奴いたかな?

 同級生にはもちろんそんな奴いないし幼馴染は茜だけ。

 その茜も僕のことを海君なんて呼んだことは無いし。


「あれ?もしかして私のこと覚えてないの!?」


「えっと、はい。ごめんなさい」


 覚えていないものは仕方ない。

 素直に謝るしかなかった。


「私だよ私!」


 私私詐欺か!?

 だとしたら今すぐにでも電話を切ったほうがいいと思うんだけど。

 なんか聞き覚えある声なんだよな~


「どちら様ですか?」


 聞き覚えはあるんだけど、どこで聞いたか思い出せない。

 というか、最近の僕の交友関係はとても狭い。

 茜にかなり制限されてたからな。

 今では、紫苑か家族くらいしか連絡を取り合うような間柄の人はいなかったはず。


「もぉ~覚えてないなら教えてあげるよ!私は海君の未来のお嫁さんだよ!」


「は?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る