第14話 デートの約束
「ねえ、海星」
「どうしたの?」
あの勘違い事件から数日。
すっかり僕と紫苑はいつも通りの日常に戻っていた。
そんな時、リビングで読書をしていたら紫苑に声をかけられた。
「私たちって付き合ってるんだよね?」
「いきなりどうしたの?付き合ってるよね?」
「だよね!?でも、なんだか私達って恋人らしいことしてなくない?」
そうだろうか?
同棲して登校時はいつも手をつないでお昼も一緒に食べて。
充分恋人らしいことをしてると思うんだが。
「そうかな?結構恋人らしいことしてると思うけど。」
「でも、デートとかしてなくない?」
「、、、確かに。」
それは紫苑の言う通りかもしれない。
今まで学校や家ではイチャイチャしてきたけど二人でどこかに出かけるのはあんまりなかった気がする。
「でしょ!だから次の休みにどこかに遊びに行かない?」
少し興奮気味に詰め寄ってくる紫苑をどうにか落ち着けてから僕はうなずく。
「そうだね。確かにあんまりどこかに行ったことは無かったかもしれないしどこかに行こうか。」
「やったぁ~」
花が咲き誇ったかのようにぱぁと笑顔になる紫苑を見ているとこちらまで嬉しくなってくる。
そういえば、紫苑の制服とパジャマ以外。
所謂私服は見たことが無いような気がする。
結構楽しみかも。
◇
「しまった。完全に忘れてた。」
自室でクローゼットをあけた僕は少し唖然としてしまった。
僕はあんまり頻繁に外出をするタイプじゃなかったからおしゃれな服というのを持っていなかったのだ。
「どうしよう。紫苑の隣を歩くのに下手な服を着ていくわけにはいかないし。」
ネットで注文しようか?
いや、それだとサイズが合わないかもしれないし。
う~ん。
「さすがに今持ってるような地味な服で行くわけにもいかないし、どうしよう」
自分を卑下するわけじゃないけど僕には服のセンスがあるとはいいがたい。
今まで見た目よりも機能性を優先した結果持ってる服のほとんどが地味なものになってしまったのだから。
「素直に紫苑に言いに行こうか」
先日の件もありしっかり紫苑にいろんなことを相談するようにした。
そのほうが彼女と関わる時間も増えるから僕としても喜ばしい。
◇
「紫苑ちょっと今いい?」
紫苑の部屋をノックして少し待つ。
「海星?入ってきていいよ~」
すぐに部屋の中からそんな声が聞こえてきたので僕は扉をあけて紫苑の部屋の中に入る。
「どうしたの?海星が私の部屋に来るのって珍しいね。なんかあった?」
いつも着ているパジャマ姿で紫苑は机に向き合っていた。
机の上を見ると参考書が開かれていた。
「まあうん。その今度デートに行くことになったじゃん?」
「うん。まさか嫌とか言わないよね!?」
椅子から飛び上がって詰め寄ってくる。
「言わないから落ち着いて。そうじゃなくてその、僕あんまり私服とか持ってなくてさ。もしよかったら今度一緒に買いに行ってくれないかと思って」
「全然良いよ!私が海星をコーディネートしてあげるから任せといてよ!」
紫苑は胸を張って得意げに笑っていた。
そんな紫苑の姿が可愛くて少し面白くてつい吹き出してしまった。
「はははっ」
「え?なんでいきなり笑うの?」
「いや、紫苑は可愛いなと思って」
「私もしかしてバカにされてる?」
ジト目で見つめながら紫苑は僕の横腹をつついてくる。
「してないしてない」
「もぁ~本当かな~」
「もちろん。紫苑のことをバカにするわけないでしょ」
そもそも、紫苑をバカにできる点がほとんどない。
あるとしたら家事全般が苦手なことくらいか?
意外とあるな。
「ならいいけど。じゃあ、明日の学校終わりに一緒に服買いに行こうか」
「ありがとう。ごめんね。わざわざ付き合わせちゃって」
「私もついでに服見たかったから気にしないでいいよ~」
「ありがとう」
紫苑に服を選んでもらうっていうのもなかなかに楽しみだ。
明日がとても待ち遠しい。
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