第12話 僕は大丈夫

【正直私、あんたのこと全く持って好きじゃなかったのよね。まあ、今までは勉強も教えてくれたし掃除とかもやってくれて都合がよかったから付き合ってあげてたけどもういいや。イケメンの先輩にも告白されたしもう別れて。あと、この事父さんと母さんには言わないでね。面倒だからさ。じゃあね~。】


【本当海星って何にも取り得ないよね~運動ができるとかでもないし勉強も普通だし】


【顔も普通だし私みたいな美少女と付き合えてることを感謝してほしいくらい】


 ああ、懐かしいな。

 昔、茜によくこんなことを言われてたっけ?


【あんたと付き合えるのなんて本当私くらいしかいないんだからね】


 その通りだったのかもしれない。

 まずもって僕が誰かと付き合おうなんてこと自体が愚かしい行為だったのかもしれない。


「、、、、、せい」


「、、え、、、、、い」


「海星!」


「はっ!?」


「こんなところで何してるの?」


 眼が覚めると目の前には紫苑がいた。

 しかもかなり汗をかいていて肩で息をしている。


「いや、ちょっと。」


「ちょっとじゃないでしょ!もう11時だよ?」


「え?」


 どうやらかなり長いこと寝てしまっていたらしい。


「え?じゃないでしょ。何してるのよ。心配したんだから」


「ごめん。心配かけて」


 本当に紫苑はやさしいな。

 わざわざ僕なんかのことを探してくれるなんて。


「いいよ。とりあえず家に帰ろ?」


「うん」


 いつ別れを切り出されるんだろう。

 まあ、そのうち言われるか。


 ◇


 翌日もそのまた翌日も紫苑に別れを切り出されることは無かった。

 その間僕はご飯を食べることはおろか寝ることもままならなかった。


「おい。天乃?天乃?」


「ん?ああ。ごめんぼうっとしてた。なんか用か?」


 僕は大丈夫。大丈夫だ。

 自分にそう言い聞かせる。


「いや、用って程じゃないけどお前すごく顔色悪いぞ?大丈夫か?」


「ああ。問題ない」


 問題なんてない。

 僕は大丈夫なんだから。


「いや、そんなふらふらした足取りで言われても困るんだが」


「大丈夫だ」


「大丈夫だ。僕は大丈夫。僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕はだ」


「お、おい?天乃?お前本当におかしいぞ?」


「僕は大丈夫。僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕は大丈夫僕はだ」


「ごはっ、」


「天乃?おい!返事しろって天乃?天乃?」


「、、、」


「先生!天乃が倒れました!?」


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