第10話 甘えと依存
「ただ、いま~」
「おかえり?どうしたの海星なんだか元気なさそうだよ?」
「いや、大丈夫だ。早く晩御飯作るね」
早く晩御飯作らないと、
あれ?
なんだか視界がぼやけ、
「海星?海星?どうしたの?」
声が聞こえる。
でも、体は一向に動かない。
全身に鉛でもつけられているような感覚だ。
瞼すらも上がらない。
「え!?海星?どうしたの?海星?ちょっと返事してよ。海星!海星!」
体が動かない。
「どうしよ、救急車とか呼んだほうがいい?でも、」
「だい、じょうぶ。ちょっと、休めば治るから」
「で、でも」
いけない。
紫苑に心配をかけてしまった。
でも、全身が痛くて立ち上がれそうにない。
このまま少し寝ころんで痛みがひくのを待つか?
「海星、何をしたらそんなことになるの?」
「いや、何でもないさ。今日はちょっと体調が悪いのかもしれない」
「嘘だよね。朝は体調が悪くなさそうだったし学校で別れたときも体調は悪そうじゃなかった。つまり、海星は私と別れてからの数時間で体調が悪くなったんでしょ?」
「、、、」
「無言の肯定かな?」
やっぱりこういう時の紫苑は鋭い。
あの場所のことを言うわけにはいかないし、かといって変にごまかすと紫苑を不安にさせてしまう。
一体どうすればいいんだ。
「この前海星は私に言ったよね?僕の前では頑張らなくてもいいって。同じことだよ?海星も私の前でくらい気を抜いてもいいんだよ?いっつも海星は頑張りすぎてるんだから気を抜く空間である家でまで気を張ってたらいつか壊れちゃうよ」
紫苑は寝ころんで動けない僕の頭を膝の上にのせて頭を撫でてくる。
なんだか気恥ずかしい。
「きっと海星にも私に言えない悩みや苦労があるんだと思う。別にそれを無理に言う必要はないけど本当に辛くなったら私に甘えていいんだよ」
「十分甘えてるよ。僕は紫苑に」
「そんなことないでしょ。今まで海星が私に甘えてくれたこととかないと思うけど?」
「それは紫苑が気づいてないだけ。僕はずっと紫苑に甘えてるよ」
「む~絶対そんなことないもん!」
「あるよ」
ずっと僕は紫苑に甘えてる。
今の僕は紫苑がいないと生きていけない。
勿論住む場所がなくなるとかそういう話じゃない。
僕は彼女に依存してしまっているんだ。
彼女は僕にとって唯一のよりどころだ。
依存するのは良いことではないって頭では理解してる。
でも、僕は弱いから依存していないと生きていけない。
だから僕はずっと紫苑に甘えてる。
「そんな話はこれくらいにして、体調大丈夫なの?」
「うん。だいぶ楽になったよ。」
「そう?ならよかったけど」
「じゃあ、今から晩御飯をつく、」
「何言ってるのかな?その調子で!」
僕が起き上がりながらそういうと紫苑が両手で僕の頭を膝に戻した。
膝枕は確かに心地いいし男の夢だけどそれより今は気恥ずかしさが勝る。
「でも、」
「でももクソもないよ。そんな体で無理しようとしないで!」
真剣な表情でそう言われてはどうすることもできない。
素直に紫苑に従おう。
「今日はもうベッドで休んで。晩御飯とかは良いから」
「わかった」
何とか重い体に力を込める。
瞬間全身に鋭い痛みが走る。
筋肉痛だ。
それも重度の。
「ごめんね紫苑」
「謝らないで。別に晩御飯は無くても大丈夫だけど海星に何かあったら私、」
「私?」
「な、何でもない!早く寝て!」
「わかった」
顔を真っ赤にして怒ってたけど僕なにか気に障るようなこと言ったかな?
わからないけど今日は素直に寝ることにしよう。
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