第8話 将来の夢は君の妻
「海星はいますか?」
「えっと、天乃ですか?」
「はい。そうです」
「ちょっと待ってください」
「天乃~生徒会長が呼んでるぞ~」
「え!?紫苑が。わかったすぐ行く」
今は昼休み。
いつも紫苑と生徒会室でご飯を食べてたんだけど今日は紫苑が用事があるとかだった気がするけど、どうしたのかな?
「どうしたの紫苑?」
「えっと、用事が早めに終わったので海星とお昼ご飯を食べようと思って」
「あ~なるほど。わかった。いつもの場所でいい?」
「はい」
「じゃ、行こうか」
紫苑の手を取って握る。
僕の手より小さくて暖かい。
「あの二人やっぱり付き合ってるのかな?」
「そりゃそうでしょ。いっつも一緒にいるし天乃君と居るときの会長の笑顔を見たらだれでもわかるでしょ」
「クソっ、会長のこと狙ってたのに」
「お前じゃ無理だろ。鏡見てから出直して来いよ」
「いや、天乃で行けるなら俺にもチャンスあるだろ!?」
「どういう理屈?」
教室からどんな会話が聞こえてくる。
いい気はしないけどいちいち気にしてたらキリがないため気にしないことにしよう?
「痛い痛い痛い。紫苑痛いって!?」
紫苑の手にとんでもない力がこもって僕の手を握りしめてる。
とっさに紫苑の横顔を見ると笑顔なんだけど目が笑ってなかった。
それに眉間がぴくぴくと引くついていた。
「あ!?ごめんなさい海星」
「いや、大丈夫だけど何かあったの?」
「それはお昼を食べながら話します」
「わかった」
まさか、紫苑の握力があんなに強いとは思わなかった。
正直手が潰れるかと思った。
◇
「何あの会話!許せない!!」
生徒会室に入るなり紫苑は腕を組んで怒り出した。
「会話って?」
「海星のクラスの男子生徒が海星のことをバカにしてた!何が天乃で行けるなら俺にもチャンスあるかも!?よ。ないわよ。ゼロでしょ!」
「まあ、まあ落ち着いてよ」
「でも、」
「大丈夫。僕は気にしてないから」
「私が気にするの!許せない」
紫苑は怖い顔で腕を組んだままだ。
僕的には紫苑が僕のことを思って怒ってくれてるのがうれしいとも思うけど、そんなことで紫苑が気にしてしまうのはどうなのかとも思ってしまう。
「まあまあ、とりあえずお昼ご飯にしよう。」
「む~わかった」
頬を膨らませて入るけど紫苑は素直にお昼を食べ始めた。
なんやかんや紫苑は素直だ。
「そういえば紫苑って進路どうするの?」
「進路か~あんまり考えて無かったな~」
「そうなの?てっきりそういうのはしっかり考えてると思ったんだけど。もう三年生だし」
「まあね~大学とか行こうと思えばどこでも行けるしな~」
「言うことが優等生過ぎる。」
まあ、紫苑は家でだらけてるとは言ってもしっかり勉強とかしてるし努力してるからそういう事が言えるんだろうけど。
「まあね~でもやりたい事とかは無いしな~」
「そうなの?」
「うん。あ!でもなりたいものならあるよ!」
「何?」
「海星の妻!」
「お、おう」
ド直球だな。
でも、紫苑らしいといえばらしい。
「何その反応?嫌なの?」
「まさか。嬉しいよ。ただ、直球過ぎない?」
「そんなことないでしょ。私は海星のことが大好きだから」
何とも嬉しいことを言ってくれる。
「僕も大好きだよ」
「あ、ちょっ」
つい身を乗り出して紫苑に抱き着いてしまった。
「海星って意外と大胆だよね」
「そうかな?もしかして嫌だった?」
「いや、じゃないけど、恥かしい」
それを証明するように紫苑の心臓の鼓動はとても速い速度で鼓動している。
まあ、僕も人のことは言えないんだけど。
「いきなりごめんね」
「あ、」
僕が離れると紫苑は少し名残惜しそうな声をあげた。
そんなところがまた可愛い。
「そういえば海星は今日も用事があるの?」
「まあ、うん。ごめんね」
「いや、謝ることじゃないけど一人で一体何をしてるの?」
「それは秘密だよ。今度教えるから楽しみにしてて」
「む~絶対教えてよね。待ってるから」
「あいよ」
今日は学校終わりに紫電さんが紹介してくれた部下の方に会いに行こうと思っている。
場所は家から15分くらいの場所にあるのでそこまで距離はない。
とりあえずは午後の授業を何とか頑張らないと。
◇
「こんにちわ」
「こんにちわ。あなたがボスの言っていた天乃 海星様でよろしいでしょうか?」
「はい。天乃 海星と申します」
訪れた場所はジムのような施設ではなく普通の一軒家だった。
こんなところで体を鍛えられるのか?
「では天乃様こちらにお入りください」
「はい」
僕を案内してくれている人は一見普通の社会人に見えるけど、なんだか雰囲気が普通じゃない。
きっと紫電さんの言っていた部下っていうのはこの人のことなのだろう。
「こちらです」
先を進む部下の人についていくと普通の一軒家にはないはずの地下室の扉がそこにはあった。
「安心してください。ここから先は完全防音室となっていて何をしても外部に音が漏れることはありませんので」
え?僕もしかしてこれから拷問でもされるの?
完全防音室って何?
頭の中に不安がよぎるけどこんなところで立ち止まってても仕方がない。
僕は意を決して地下室に足を踏み込んだ。
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