第2話 金が歩いている。

あらゆる前世を耐え抜き、歴史をひとつずつ群雄とともに

闊歩し、踏破しうる英霊たち=たったひとつの御霊であった。


御霊はようやく、普通の人間の器を獲得した。

それが鑢トキユキであった。


鑢トキユキは得体のしれぬ記憶や苦痛を幼少期から

一身に背負った。体はおもく、身体はいつもうなだれた。


とうぜん気のやまいを負い、友人や知人、講師どころか

部外者の耳までに届き、オレをすべて嘲笑った。


だれもが俺の脆弱性とやさしさを信用し。

だれもが攻撃をしないと確信していた。


しかし、それは北条カズヤの遺言書。

つまり、文化媒体の遺書そのものによって破られた。


鑢トキユキは、北条カズヤの正体を知るまで

遡るにあたり、オベロニアスの前世をつかんだ。


オベロニアスはイタリアの島生まれの英霊である。

史実の現身には、心に得体のしれない空洞があり。

女家系に生まれ。日の射す祝福のニチアサに生誕しうる。

情に厚く。文化に鋭く。悪逆はすべて斬り果たさんとす。

そして、だれよりも弱音を漏らす。やぶけたお財布であった。



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