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 ジュラに気をとられていたが、ジュラと向き合っている方がはるかにヤバそうだった。まず、ジュラはギリギリ人型ともとれる姿だが、相手は最早化物だった。何と形容したらよいのか。縦横に数メートルずつありそうな巨大な体躯の全身に、余すことなく黒い蛇のような生き物が絡みついている。最早本来の姿がどのようなものかは推し量ることができない。ぐちゃぐちゃに絡まった電化製品のコードのようだ。全身に隙間なく蛇の鱗肌が張り巡らされており、唯一ある隙間からは、目のような光が見えていた。あそこが頭部なのだろうか。

 勢いで山頂まで来たが、この光景を前に僕は何をすればよいのか分からなかった。ここにくればジュラの秘密が分かるかもと思って来たが、いざ現場に到着してみれば一気にいろいろなことが起こりすぎていてどれがジュラの秘密だか知れたものではない。

「ハクア、危険だ、下がっていろ。こいつは危険な宇宙生命体だ………!」

 化物と睨み合ったまま、二足立のトカゲのような風貌となったジュラが言う。言われるがまま、僕は後ずさる。

「ジュラ、一体全体何が起きてるんだ。ここで何があったんだ。あの蛇の化物は何なんだ。なにより、お前の姿はどうしてしまったんだ!」

 僕は叫ぶ。異常事態を目の前にして、何が分からないのかが分からなかった。

 ジュラは一瞬迷いを見せたようだが、ついに口を割った。

「こいつは、地球を滅ぼそうとする宇宙生命体だ。ヨらは、こやつらと対峙するために、この星を守るためにこの星に潜伏していたのだ………! ヨの今の姿は、こやつを退けるために本来の姿に戻っただけのこと」

「地球を———滅ぼす———」

 何だって? 地球を、滅ぼす? この蛇みたいな化物が? そしてそれを、ジュラが守る———?

「くふふ、滅ぼすとは随分な言い様だな。この星は元より我らの所有物だというのに」

「は?」

 蛇の化物がとんでもないことを言うので、突拍子の無い発言に僕は面食らう。所有物?

 僕がどういう事だと言う前に、ジュラが口を開く。

「ハクア、こいつは、遥か昔に地球に住んでいた種の末裔なのだ。人間が生まれるよりもずっと前のな。そして———ヨも、そうだ」

「え———」

 僕の理解が追い付く前に、今度は蛇の化物が話し出す。

「あぁ、我々はかつてのこの星に生きていた。そこな若い□□□□□らと共にな。」

 何やら聞き取れない箇所があったが、察するにジュラたちの種族を指しているようだ。

「ハクアも知っているだろう。今から6600万年前、この星で言う白亜紀に、多くの生物が滅んだ大絶滅があった」

「あ、あぁ」

 知っている。化石教授の授業で聞いた覚えがある。

「ヨらの先祖は、その時代に生きていた恐竜の一部だ。そして、滅びの運命から逃れようとして、この星から旅立ったのだ」

「な、な、な———」

 怒涛の情報量に眩暈がしてきた。だって、そんなことは有り得ない。宇宙でも生きていける生物なんて存在するのか。

「そして長い長い放浪の果て………ヨらの先祖は、生存に適した惑星を見つけ、そこを新たな故郷としたのだ。そこで種を残し、ヨらの代まで連綿と遺伝子を継いできた」

 急に目の前のジュラの姿に、妙な既視感を覚えた。あぁ、そうか、この姿のジュラの顔は、教科書に載っていたある肉食恐竜に酷似しているではないか。

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