プロット集⑥

ここ、ダロス公国は、北の国境山脈にあらせられる老竜さま、フォ・ゴラーディン氏を国家元首としている。

人間種の実質的な統治を行っているのは、その老竜さまから自治権をお認め頂いている、現政府だった。


この国には過去、竜様たちの土地であったこの地を、決闘で住むこと認めさせ。勝ち取って繁栄していった歴史がある。

決闘を伝統的に、重要視しているのもその為だ。


まさしく英雄譚で、冒険譚だ。そいつらはどんな冒険をしたんだろうな。考えるだけでワクワクするもんだ。


現在では様々な人種・種族が入り乱れる多民族国家だった。


俺が昔住んでいた街であるアンデルは、辺境の地であるが、様々な国から船が訪れる大きな港町だった。


北の山脈の方に向かえば向かうほど、遺跡群があり、軍の補助や、狩猟の補助、その他雑務や、名も失った国の発掘と探索が主に俺たち冒険者の飯の種だった。…はずだった。


「…ここ、どこでしょう?」

「さぁ……?」


呆然としたあと、俺こと紙切れは、つい生返事を返してしまった。


4人で魔獣討伐の依頼を終えて、濃い霧の中を帰ろうとしたら、いきなり霧が晴れて「古城の中庭」に姫さんと突っ立っていた。


何を言っているかわかんねえと思うが、紛れもない事実だからどうしようもねえ。


周囲は城壁に囲まれて、戦の跡だろうか?、破壊されて風化していたり、錆びついた矢が突き刺さっている。

明らかに長く人の手が入っていないことは、一目瞭然だった。


城内は全く霧は出ておらず、空はどこまでも青く、トンビが優雅かつ呑気に鳴いていた。


「俺たち、霧の中歩いてただけ、だったよな?」

「はい…、そのはずですが…?」


頭目を先頭に、ギルドを目指して、4人で霧が出る街道を歩いている最中だったはずだ。なのに、どうして…?


「う、嘘、遭難っ、そんなっ、…!」

「───────っ、 まず持ち物を確認しよう、できることもだ、ゆっくりでいい、できるかい?」

「あ、…はい」


トントンと彼女の肩を叩いて、落ち着くように指示した。

最初こそ声が固くなりそうだったが、努めて落ち着くように自分に言い聞かせた。


心臓がバクバク鳴ってたが、仕方ねえだろう。それだけの事が、たった今起きたんだ。


持ち物を確認して、遺書もちゃんとある事を確認した。

無くなっているものは特に無いが、姫さんがまた、理由のわからないことを言い出した。


「何…これ…」


彼女の手の中に握られていた物は、鈍色に光を放っている、回転式拳銃。リボルバーだった。


「姫さん、リボルバーなんて使ってたのか?」

「い、いいえ!、ろくに撃ったことも無いです!!」


彼女は啞然としたあと、気持ち悪そうに袋の中に急いで戻した。俺も正直少し身震いした。


あどけない表情の彼女が、荷物からいきなりゴツい銃を取り出したんだ。それだけで絵面が心臓に悪すぎる。

もう勘弁してくれ、という心持ちになってきた。


「紙切れさんのじゃないんですか!?」

「いや、違う、だが見た事ある形のやつだ…?」

「へ?」

「確か、…確か、俺が若い頃、兵士さん方が持ってたモンに似てるぞ…、でも何で…?」


20年ほど前、アンデルは首長が暗殺され、そのまま他国に攻められたという歴史がある。

俺はまだその頃、若造で、実家の村で家業を手伝っていた。

そして、港に停留する兵士さんたちに防衛されていた時期があった。


だからこの形状は、朧げでも見覚えがあった。だがなぜ姫さんの荷物に、こんな古いもんが…?


「わけが、わからん…」

「…アレ?、ここに、名前が書いてあります」

「ルーシア・コーディー……?」


姫さんが銃の底をひっくり返して見せてくれた。

木製の銃床底には、ナイフで刻みつけたような、俺達が聞いたこともない、まるで化かされたような感覚で、名前が刻みつけられていた。

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