プロット集④
探検家と冒険者の違いとは、武力の違いだ。
探検家は過度な武力をあまり持たない、せいぜい持っていても護身用の武器だ。
冒険者と違い、過度な武力を持たないので、各国に出入りしやすいという利点がある。
飛べるか、足の早い者が多く、単独で素晴らしい地図を書き上げて生還、あるいは死体で帰ってくるか、帰ってこない。
冒険者は世界連盟の国連ギルドが大本で、民兵として各国で働いている者も多い。
その分情報の共有力も、他組織と段違いだ。
実質的な傭兵に近いが、傭兵と違い、有るか無いかのブツも探索したりする。
例えば同じ迷宮に挑み、何かを探し続けていたりするので、そのあたりも大きな違いだ。
傭兵の場合は、賃金をもらっての護衛や強襲が、主な傭兵団の仕事となる。
武装も彼らのほうが強く、兵器も所持できる。
だが、それ故に国からの許可が必要で、足回りがその分かなり遅い。
柔軟に徒党を組み、足回りが早く、情報が早く拙速で、魔術や経験での探索力の強さを持つのが、冒険者の能力と言えるだろう。
朽ちた聖堂で俺達ふたりは顔を突き合わせて、毛布にくるまって。焚き木を囲んで休んでいた。
季節は春だが、この地方の夜は寒い、日が暮れる前によく燃えそうな薪を集めて焚き付けていた。
これで通算、3度目の依頼達成になる、帰還さえできればなるが。まだ焚き木の焦げ臭さにはあまり慣れない。
窯がないと、やはり焦げ臭い。
だが、それも良いもんだと最近では思うようになった。まさしく旅の香りだからな。
「おはよう、よく眠れた?」
「…んっ、おはようございます、ラランさん」
「寝起きいいわね、あなた、それに比べてこの堕竜は…」
「仕方ないっすよ、連日でしょう?」
「まあね、ほ〜ら〜!、起きなさい!、クック!」
ラランさんは遠慮なく視界の端で、頭目の頭を軽く数度、小突きながら彼を起こした。
俺もそこそこ寝入っていたらしい。大あくびをかましたあと、ゴーグルを外して目を擦って起きた。
姫さんが集めた薪をたくさん持って、くべるために戻ってきた。
「薪、これでいいですか?」
「悪い、手伝うよ」
いけねえ、女の子ばっか働かせちゃ良くない。こういう時、気が利かないのが俺の欠点だった。
「頭目、眼の前に蜂蜜酒が」
「何っ!、…て、交代か、おはよう」
3度目ともなれば、各々のあしらい方というのもある程度板についてくるものだ。彼は3度の飯より酒好きだった。
固定で彼と徒党を組んでいる訳では無いが、それでも団の雰囲気は居心地がいいもので、きっと俺と相性がいいのだろう。
彼は、よほど深い眠りについていなければ、夢見心地でもこれで目を覚ます。
冒険者ギルド「鱗の団」第13班の頭目は、名をクック・ヤンと言い、誉れも高きドラゴニュートだった。
この国のおよそ3分の1を占める人種で、背中に大悪魔のような、丈夫で分厚く、大きい竜の翼。
磨き上げられた蛇腹剣みたいな、鋭く分厚い尻尾。
額から伸びる反り返った太い角は、歴戦の証か、傷ついて誇らしげだった。
そして、2mを軽く越す大きな恵体に、筋骨隆々の鍛えられすぎた身体。
装備はそれこそ、鱗のような鉄製のスプリント・アーマーに、骨のメイスだ。
空戦を想定して見た目より軽い装備らしく、ラランさんいわく「メイスの扱いはいつも雑で笑える」とのことだ。
人であり、竜であるその姿は、…恥ずかしがらずに言えば、俺の幼少期からの、永遠の憧れだった。
だが、顔は厳しい傷が残る割には、童顔な方だった。俺と同じように。
「しかし人間で、36で、駆け出し冒険者とはな」
「物笑いの種だろうよ、だがよ、60の爺さんとかも、団の面接には来ていたぜ?」
「あの爺さんも、変わり種だがな、いい目してやがったぜ」
「どんなだい?」
「乾いた目さ。欲しいもんがある、いい目だった」
聖堂の壊れた入口に腰掛けて、毛布を軽く被る。武器を持ち、ある程度余裕を持って警戒していた。
朝までは警戒を続けるので、頭目と会話して過ごすのが、もうすっかり慣れてしまった。
「いいじゃねぇか、笑いってもんは力になるもんだ、そうだろ?」
「違いないな、戦士として、違いない」
何にせよ、これで帰れば晴れて渾名卒業だ。
彼を相手にするといつもそうだが、肩肘に力も入るってものだ。
俺は彼の事を一方的に知っていたが。彼との出会いは1年ほど前に遡る。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
少しでもこのプロット集が、読者様のご参考にしていただけるなら幸いです!
他にも「冒険者の仕立て屋さん」シリーズはあるので、是非御一読して頂ければ嬉しいです♪
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