プロット集③
廃墟になった朽ちた聖堂に、魔獣が住み着きやがったらしい。
だが依頼主は、朽ちた聖堂自身はあまり壊してほしくないと依頼した。
聞けば子供との思い出の地で、できれば魔獣の血で汚したくもないらしい。
追加報酬まで用意しての大盤振る舞いだった。羽振りのいいことで何よりだ。
調べればかなり由緒正しい跡地で、そりゃあ地元の連中だって愛着湧く場所ではあった。
それで、誉れも高きギルド「鱗の団」内で、閑職。
…失礼、確かな実力があり、駆け出しを2名伴っても、無事依頼達成できそうな、総勢4名の徒党が組まれた。
結果、可能な限り相手を釣り出して、森での乱戦になりかけて、俺のスクロールの出番って訳だ。
「よし!、残しはねえな!?」
「は、はい!」
「こっちもいいわ!、クック!」
「警戒しながら事切れてるか、各々確認しろ!」
「承知した!」
戦闘は、ほぼ勝利で終わっていた。
周囲には血溜まりがいくつも広がっていて、犬に似た魔獣の身体はボロボロ崩れていた。
大物のトロルは死骸となって、横たわっていた。
トロルは怪物で、死体が残ってくれる。
コイツを活用しない手はない。
俺は早速自分の仕事に取りかかることにした。
腰に差した幅広の剣をゆっくりと引き抜いて、ラウンド・シールドを構える。
よく目を凝らして、警戒して近づく。
まず確実に、崩れていく魔獣が死んで、動かない事を目視で、さらにじっくり確認。
残心は大事だ。前衛だろうと後衛だろうと、クソみたいな油断と、思い込みで死んでいく。
「しまっ……!」
「オラァ!」
視界の済で、頭目が人ひとり分はある骨メイスを、魔獣の一匹に振り下ろした。
どうやら姫さんが、トドメを刺しそこねていたらしい。
「気をつけるんだ、一匹一匹、丁寧にな?」
「は、はい、すいません!」
俺は集中して魔獣たちの血を、なるだけ不純物が混ざらないように、掬って瓶詰めしていった。
血だけは残るんだよなコイツら、どうなってやがるんだか。
魔獣共は不思議に満ちていた。
次に、トロルの解体を始めていた頭目の相棒、ラランさんを手伝いに行った。
「やってみる?、紙切れくん?」
「すいません、ちょっと自信無いんで…」
「分かった、任せて」
トロルの皮は脂身が多く、まだ俺では上手く解体できないので、ラランさんにしてもらった。
俺の眼の前で、魔法のようにスルスルと骨と皮と肉に解体されていく。
スプリント・アーマー姿と、俺よりもずっと短い手足で、本当によくできるもんだ。
返り血すらほとんど浴びていないのは、まさしく職人技だった。流石はドワーフ。
まるで貴婦人が編み物でもするかのような、ナイフ捌きだった。
血生臭くて仕方ない事を除けばだが。
「こんな風にするのよ、できる?」
「やってみます。アドバイス、おねがいします」
俺も挑戦してみたが、やはり脂分が多く、悪戦苦闘した。
解体の腕だけでも、いつかはこんなふうになりたいもんだ。
血も油分が多いが、コレもいい素材だ。大きめの瓶に詰めて回収しよう。
「私も手伝いますね」
「お、ありがとうな、瓶詰め頼む、…乾いちまう前に済ませよう」
「はい、急ぎます」
姫さんは後ろで青い顔をして、口を抑えているかと思ったが、血を採取するのを手伝ってくれた。
正直、人型で俺は少し躊躇ってたのに。すげえな。
ウチの女性陣は頼もしくて良い。
「猿とかの解体は、経験がありますので」
「そうか、かなり経験あるんだな」
「この前は大きなハエを退治しました、アレ気持ち悪いですね。砕けるんで」
「会いたくはないな…」
「全くです」
姫さんは女性のエルフで、若いらしい。らしいというのは、エルフの実年齢は見た目では分からないからだ。
永遠の命を生きる彼らは。その年齢の積み重ねで、老いることが一切ない。
大概は病気や怪我で、その尊い生を失ってしまうものなのだ。
人間やドワーフから、極々稀に生まれる種で、美麗で、妖しい魅力がある。
頭目から伝え聞く話では、「云うなれば、長い耳と、外せない最高級の宝石を、常に身につけている種族」らしい。
理解はできる。彼女の風貌はとてつもなく整っている。
真顔で見つめ合えば、恐れから平静では少し居られないほどだ。
つまりは誘拐にあったり、嫉妬から穢されたり、人々に害されやすい種族なのだろう。
なんとなくだが、…そのせいで苦労してそうな娘だった。
「よし。予定通り、聖堂に引き上げるぞ!」
「道はわかる?、クック」
「…古馴染だ、迷いようがねえよ」
「…そう」
俺達は当初の打ち合わせ通り、この近くの朽ちた聖堂で休む事にした。
今聞いた通り、聞けば頭目の縁の地でもあるらしい。
是非話を聞きたいもんだが。…触りだけにしとくか。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
少しでもこのプロット集が、読者様のご参考にしていただけるなら幸いです!
他にも「冒険者の仕立て屋さん」シリーズはあるので、是非御一読して頂ければ嬉しいです♪
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