プロット集②

「今だ! 紙切れ!!」

「応よ!」


相手の間合いに飛び込む事はしない。そんなことすれば。死、あるのみだ。

頭目とその相棒さんが離脱したのを、この目で確認した。


手の中で先程紐解いた、自信作である魔法の巻物を広げる。

今回の一品は初めてたった1人で、制作にチャレンジした格別の品だ。


水をよくとどめる怪物グレムリンのなめし皮で出来た紙に、幻獣ケルピーの血で書き綴った自信作。


言っちまえば俺の冒険譚の処女作だ。

そいつを広げ、まさしく今、使い切る。


コイツが俺の、今の魂だ。


「特と御覧じろ!!」


水噴流、ジェットウォーターの魔法が、勢いよく飛び出していった。


「ガァアアアアアアアアア!!?」


まるで積み木が崩れていくかのようだった。

何本もの水の線が暴れまわり、ねじれ、眼の前のトロルと周りの猛犬に似た魔獣共を、バラバラになます切りにした。


地面についた水は地に筋を残して、水たまりすらできず、代わりに血の花が多く咲き、血溜まりを残した。


辺りは一気に鉄臭くなり、刺激臭もしていた、魔獣の血のせいだろう。

残酷極まりない結果だが、実際に使ったスクロールの完成度はイマイチだった。


魔法の収束が満足できん、このままでも使えるが改善の余地ありだった。


「よし!、あとは下がれ!」

「警戒しとく!、頭目!」

「おう!」


頭目とその相棒さんは手慣れた様子で、姫さんが多少板に付いた形でトドメを指しに行った。


俺の手の中で、自信作のスクロールは、塵になってボロボロと崩れていった。


「────ハ、後腐れなくていいが、今回はチリぐらい、持って帰るか…」


なんの役にも立たない、下らない記念品ってのも悪くないだろう。

時に冒険者はこの心血注いだ、スクロールみたいに。塵になるんなら、…尚の事だ。



☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆★★★☆☆☆




ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


少しでもこのプロット集が、読者様のご参考にしていただけるなら幸いです!


他にも「冒険者の仕立て屋さん」シリーズはあるので、是非御一読頂ければ嬉しいです♪


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る