・予行演習完了! 実践に向けてGo dash!!
「うんっ、わかったよっ、師匠っっ!!」
「クゥンッ、わかってくれたか弟子よっ!!」
覚悟を決めた俺はコギ仙人がひっくり返るベッドにひざまずいた。
そして一思いにだらしないお腹に口を付けた。
「キュ、キュゥン……♪ 今じゃっ、ペロペロしてチューチューするのじゃっ!」
「は、はい、師匠!!」
「キュン……キュゥゥーン……ッ♪」
あ、あれ……?
俺はいったい、何をしているのだろう……?
これで正しいはずなのに、なぜだかすごく、間違っているような気がしてくる……。
論理的には正しいはずなのに、人として何か重大な過ちを犯してしまっているような……。
コギ仙人のおっぱいは甘くて、毛でぼーぼーで、抜け毛が口の中にからんで少し不快だった。
でもしゃぶっていると段々、自分が子犬のように感じられてきて――
「戻ったぞ、大将。やれやれ、ママは俺様のことを魔法の馬車か何かと勘違いしているふしが――うっっ、うおぉぉぉぉぉーっっ?!!」
そこにシルバが帰ってきた。
身軽なシルバは窓から帰ってくることも珍しくなくて、コーギーのおっぱいを吸う主人の姿に絶叫していた。
「お帰り、シルバ」
口元のクリームを手で拭った。
「な……っ、何をやっている大将おおぉぉーっっ?!!」
「あのね、コギ仙人にエッチを教わってるんだ」
教わっている最中だけど、まずシルバの足を拭かないと。
「キャウンッ?!」
「え、なんで逃げるの?」
「や、止めてくれ大将っ、俺は雄だっ!!」
「シルバのおっぱいなんて吸わないよ。ほら足出して」
「ク……クゥン……」
シルバの足とお腹を布で拭いてあげた。
後で入念にマダニのチェックもしておかないと。
「そこな灰色狼」
「ぬっ!? お、俺様か……!?」
「ちと、吸ってゆかぬか? このままじゃとベタベタしてかなわぬのじゃよ」
姿勢を戻していたコギ仙人は、またひっくり返って両足を開いた。
「グルルルル……貴様ガルガンチュアァッッ!!」
「ぞい?」
「俺様の大事な大将に!! 何を教えてやがるこのド変態めがっっ!!」
「ひょっひょっひょっひょっ、ちとワシ、扇状的過ぎたかのぅ?」
「やかましいこのクソビッチコーギーがっ!! 大将が貴様のような変態に育ったらどうしてくれるっっ!!」
親であり保護者は俺のはずなんだけど……。
でもやっぱり、これは一般的ではない特殊なエッチだったようだった。
「キュゥン……♪ 食べないで、シルバ様ぁ……♪ ぞい?」
「その腸食いちぎってやろうかっっ!!」
怒り心頭のシルバが飛びかかると、コギ仙人は飛び上がって窓際に逃げた。
足は短いのに意外と身のこなしが軽かった。
「わひょひょひょひょ! パルヴァスよ、今教えた技をファフナに施すがよい。フレーバーはジャムでも蜂蜜でもなんでもよい」
「ファフナさんに? えっと、待ってっ、じゃあ、カチューシャさんには何をすればいいのっ!?」
窓から帰って大丈夫か少し心配な短足ワンコを引き止めた。
「おお、あのおもしろ女か」
「え……? コギ仙人はカチューシャさんのことも知ってるの……?」
「うむ、ちとな。あの女なら何も心配ないぞい」
「で、でも……俺、師匠の予行演習がないと、何もできないんだけど……」
「受け身でよい。デートの段取りから全て、自分でセッティングすると言っておったぞい」
「そ、そうなんだ……? それはそれでなんか、ちょっと不安になってくるけど……」
教わった通りに自分からするのは平気だけど、されるとなるとどうだろう……。
ファフナさんに追いかけ回された時のように、逃げたくなる気持ちになるような……。
「心配はいらん、大将。おかしなことをしたら、尻に恥ずかしい噛み痕を付けてやると、あの女を脅しておく」
「脅しちゃだめだよ! 噛むのもだめ!」
「だが変態はどこに潜んでいるかわからんぞ。そこに一匹いるようにな」
「ワヒョヒョヒョ、主人想いで妬けるぞい! うむ、なかなか快感なペロペロじゃったぞい♪」
「貴様喰い殺すぞ、ガルガンチュアッッ!!」
「おお恐っ、しからばさらばじゃ弟子よ! よく励むのじゃぞーいっ!」
コギ仙人が窓から姿を消すとやっと平穏が訪れた。
「はぁぁぁ……。ガルガンチュアは悪いやつではないのだがな……本能に忠実というか、自由気まま極まりないというか……」
「コギ仙人とは前からの知り合いなの?」
「ああ、そんなところだ。……それより大将、俺からもう少しまともなエッチを1つ教えよう」
「本当!? どうすればいいの!?」
俺が期待に駆け寄ると、シルバは行儀よくお座りして背中を伸ばした。
「以前、貴族子弟の間ではやっているのを見たのだが、大将は【棒プレッツェルゲーム】を知っているか?」
「プレッツェル? もちろん好きだけど?」
「そうか、では少し待ってくれ、酒場から細サラミを調達してくる」
「サラミでもできるの?」
「ああ、サラミの方が俺様向けだ」
シルバはそう言って、部屋のドアではなく窓から飛び出していった。
そしてその後、俺はシルバから【棒プレッツェルゲーム】を教わった。
こんなことで恩恵があるとは思えないけど、でも……。
「どうだ大将、楽しいだろう!」
「う、うん……唇噛まれそうで少し怖いけど、とても勉強なるよ!」
愛狼とする【棒プレッツェルゲーム】はとても楽しかった。
ありがとう、シルバ。
ありがとう、コギ仙人。
俺、2匹に教わった技でエッチをがんばるよ!
口に残っていたコギ仙人の腹毛を吐き出して、俺はエッチの覚悟を決めた。
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