失恋から6日目

 そうだったのか……。


 雅彦は私が勘違いしていることに気づいたのだろう。


 私はマンションに戻り、1人泣いた。じわりじわりと実感がわいてくる。


 翌日は昼近くまで寝て、何か甘いものを食べることにした。傷ついた心を癒したい。


 少し都心に出て、有名なパンケーキ屋さんに向かう。


 行列に並んでいると店員からメニューを渡された。新作は「季節のフルーツパンケーキ メイプルシロップ添え」。これにしよう。


「ややこしいことになる」と雅彦が言ってたのは……思い込みの激しい女が暴走するということか。


 

 失礼だな。ちゃんと話してくれれば、私だってわかるよ。


 そんな不満を抱きながらパンケーキを口に運ぶ。フルーツが少し酸っぱく、メイプルシロップによく合う。


 雅彦は不誠実じゃない? 付き合ってなかったにしても、仲の良い友達くらいには思ってたはずだ。それなのに彼女の帰国に合わせてサヨナラなんて。


 私は黙々と、アイスティーを飲みながらパンケーキを口に運ぶ。


 雅彦のことがわからなくなったよ。優しい人だと思ってたのに、あれは見せかけだったの?


 単に「誰にでも優しい」のかもしれない。人に嫌われるのが怖いから。



 そう自分に言い聞かせてはみるものの、やはり悲しいし、まだ好きな気持ちも残っている。



 パンケーキ屋さんの帰りに公園により、ベンチに座った。砂場で子どもたちが遊んでいる。


 一生懸命砂でお城を作っても、すぐ壊れるんだよ。そんな切ない気持ちを抱きながら家路についた。


 今夜はスマホの電源を切ろう。

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