第29話 使徒との再会③
ローに殺されたノクスは、またも自身の心象世界にいた。使徒はまたもここにいる。
――生き返れると思う。けど。
「進展してきたね、ノクス〜」
人の心象世界に普通に存在している這い寄る好奇心が言葉を発した。影から見て手を振っているように見える。
「色々聞きたいことがあるんですけど」
ノクスの声には怒気が含まれている。ふざけた態度が癪に触った。
「答えるかは、僕の自由だよ〜」とそれでもなお、ふざけるのを辞めない使徒。
「スイを助ける方法はあるんですか?」
「無理ゲーって思ってきた? うん。可能性はあるね。世界線というよりも世界状態は無限に存在しているわけだし、ありえてもおかしくない」
「世界線?」
「そこら辺の話は、また別の機会にね。それ話してると君、戻っちゃうし」
「分かりました」
ノクスは諦め半分に綴った。ローが信念を持っているように、目の前のふざけ倒した人影も特定の目的がある筈である。
ならば、得られる情報を得ようと割り切った。
「なんで僕だけ狂気への耐性があるんですか?」
「うわ〜、ややこしすぎて答えられない質問だね! 耐性の話だけすると君はまあまあ強い程度。ローの方が全然高いんだよなぁ、これが」
ノクスは使徒の言葉を遮って、次の話題へと変える。
「もういいです。この現象ってローの言ってた記憶の引き継ぎのある時間遡行なんですか?」
「やっぱり聞いてくるかぁ。なんて言えばいいのかな。まぁ、そういうことでいいよ」
ノクスでさえ使徒の態度は、のらりくらりとやり過ごそうとする感じが見え透いていた。
「なんで投げやりなんですか」
「いや〜、こればっかしは答えられないね。大人の事情ってやつだ。だからこの現象は、君の特別なリアニマ『悪夢』だったってことでお目溢しを〜」
使徒の言葉を境に世界に光が溢れる。
――なんの解決にもなってないよ……。でも、遡行現象は僕の「悪夢」の影響にしたいけど、違う誰かの影響ってことだよね? 多分だけど。生き返れそうだからいいのかな。はぁ……
ノクスのため息と共に意識が覚めてゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます