第23話 受験者視点

 舞台は100km四方程度の元スラム街。受験者は部下役の三人を連れ、視覚情報をシャットアウトされ、ランダムな位置にドローンによって運ばれていた。小屋程度の構造物にカーテンを引かれて、小一時間待たされている。この間に隊員のリアニマの把握、作戦時どのような配置にするか、そしてどのようにノクスを倒すかを会議する。

「絶対に中心に座して待つと思うんで、直行しましょう!」と能天気な隊員101。

「腕試し上等だぜ!」と熱血な隊員102。

「何か裏があると思うので、様子見がいいと思います」と臆病な隊員103。

 指揮官である少年は熟考する。今回配置された隊員はどれも臨界深度:壱の単純強化系のみである。剣で作り出した方位計はスラム街の中心の南西部近辺を指している。そして直前に追加された謎の人物であるノクスの重要度を向上させられていた。

「ロボを破壊しつつ、様子見しながら、南西側を攻める」

「さすが隊長! そっちにいるんですね!」

「熱くなってきたな!」

「命令ですよね……」

 少年はまとまりのなさに不安を覚えるが、やることは変わらなかった。逃げの一手。試験への参加意欲を見せるためにロボは狩るが、嫌な予感がまとわりつく。

『ブオオオオォォォン』

 サイレンが頭の中に響き渡る。チョーカーから発せられる警音が試験開始の合図だ。周りを囲んでいたカーテンもドローンに熱量吸収される。

「出動」

 少年の合図で隊員たちは走り出す。白い廃墟の中をずんずんと進む。

 そうするとロボが出現する。その姿はルインダーに似せ、黒色塗装されている。無数のキャタピラによって巨体を動かしており、戦車の如く装甲も厚い。大きさ的にスケール2の怪物だ。

「103は右翼に展開、銃にてロボの注意を引け」

「ラジャー」

 アニマニウム製の弾丸が重い銃声と共に発射された。ガグン、ガグン、ガグンと弾丸が跳弾すると共に、怪物は103に向かっていく。

「101、102は左翼にて気を取られたロボの機動力をそげ」

「ラジャー」

 両隊員はロボの腹部に飛び込んで飛び蹴り。自らが大砲の弾丸となることでロボの体勢を大きく崩すことに成功する。

 そこに巨大な剣を携えた少年が飛び込む。剣の硬度と速度に熱量変換して、ロボを一刀両断した。

『スケール2相当のロボの討伐を確認。2ポイント獲得しました』

 チョーカーから放たれる機械音声に少し安堵する。しかしながら、それは束の間だった。

「全員防御体制!」

 水銀の雨が部隊を襲う。少年は物質化させた剣で切り伏せるが、その他の隊員は蜂の巣にされて、モノリス化した。

「嫌な予感、的中かよッ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る