プランツドール ~中~
『本日は世にも珍しいプランツドールの芸術家!あられ先生にお越しくださいました!』
司会者の紹介と共に盛大な拍手と今回の主役を隠していた垂れ幕が開かれ、その姿をあらわにする
ツヤのある褐色の肌に大きかった紫色の目は少し垂れ色っぽく昔に比べて幼さが消え大人っぽくなたがフワフワした軽くウェーブのかかった髪は今も健在で、その美しい姿は誰もが見とれ息を呑む
『写真で見るより実際の先生の方がとてもお美しいですね』
『ありがとうござい、これも私を作ってくれた技術者と愛を下さったマスターのおかげです』
『愛と言えばあられ先生、今はマスターがご健在では無いようで、それでも枯れずにこうして巷を騒がせるという事はすごい事ですよ!それこそあなたのマスターの最愛を感じますね』
その後も頭ごなしに褒める司会者やキャスト、黄色い歓声を上げるゲストが映る
「見ましたかマスター皆は私の姿を見て貴方の最愛を感じているんですよ」
薄暗い部屋の中地べたに直接置いてあるテレビに顔を擦り付け、今は亡き愛しい人に向けて静かにつぶやく
「貴方が残してくれた愛はとても愛おしいと共にとても残酷で、この寂しいと思う感情だけで枯れてしまいそうになる
貴方をまた感じたい…
肌を…
温もりを....
視線を....
貴方の全てをまた…」
完全に人になれなかったこの体は涙を流すことは出来ないけれど、何ヶ月何年立とうとも枯れる事も許されず
誰に何人に愛されようともただただ思い出の人に愛されていた事実だけが残り消えてまた寂しさに代わっていく
忘れないようにと彼が好きだった絵で自分の、彼への思いを感情のままに描いた、だが思い出せば思い出すほど描けば描くほど行き場所のない思いが募っていくばかりで、どうしようもなくなる
何度このまま枯れたいと思った事か
何度このまま壊れたいと思った事か
それももう終わる…
自分はそう長くないのだとまるで他人事のように思う
何年何十年もただ彼を思い生きてきた
この部屋も彼がいなくなってから随分と冷たくなった
どこもかしこも彼を思い出すこの部屋で過ごすのももうじき終わる
暖かく包み込むような大好きな彼と寝ていたベットに雪崩れ込み
思い出の瓶と共に目を閉じる
自分の中での神様は彼だけなのでどうか同じ所へ行けるように祈る
どうせこれで終わるのなら最初で最後に聞いた貴方の声をもう一度聴きたかった
「私も貴方を愛しています」
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