第67話 終章:1

宇宙に出てから、かなりの距離を行く。


フォーリアが小さくなる。


無重力の中。 イクルとゲルド。


2人は対面する。


「こんだけ離れてれば十分だろ。 ゲルド。 望どおりに、本気を出してやる。


お前も、本気を出せ。」


ミーアの存在値を吸収して。 さらにブーストも宇宙にでてから2回重ね掛けしている。


今までは、それを抑え込んでいたが。


フォーリアから十分に離れた所で、一気に開放。


イクルから、膨大な迄の存在値が溢れ出していく。


しかし、イクルは。 これでも、本気を出し切ったゲルドと同等くらいだと読んでいる。


ミーアから受け継いだ存在値。 それは、シオンからオマケで付けて貰ったブースト2回分に匹敵している。


それを、目の前でイクルに譲った・・・


恐らく、予想だが。


ゲルドは、既に2~3つの次元宇宙くらいは無に・・帰している。


そして、それを極限まで抑え込んだ状態が、ゼアルへの憑依状態。


今の状態は、巨大な氷塊が、水面からの上の部分が見えている程度。


そして、その隠れた分が浮上する。


イクルの本能が警鐘を鳴らす。


(やっべ! ブースト!)


更に回のブーストを重ねがけ。


ゲルドが存在値を解放した瞬間。


空気抵抗も何もない筈の宇宙空間が震えた気がした。


「つっ!おっ!」


4回目のブーストを使った時に。 イクルの意識が一瞬だが飛びかけた。


(なんて細工してんだよっ! あの人!)


シオンがイクルに授けたブーストの使用総回数は23回分。


ブーストは近くに無の存在値が無いと発動しない仕組みにもされている。


それと、もう1つの細工が。


ブースト3回目迄は加算たしざんだが。


4回目からは、乗法かけざんになるように細工していたのだ。


これは、シオンの思いやり。


一気に、ブーストで強化してしまうと、イクルの身体がブーストの強化状態に耐えきれずに、弾け飛び散る可能性が有る。


と言うか。確実に弾け散る。


そこで、3回目迄を慣らしとして。 4回目からは、一気に強化ドーピング状態に入る。


今のイクルは。 1+1+1×4=12


これに、ミーアを降した分の存在値が乗る。


12+2=14


一気に、10倍以上の存在値を得たイクル。


身体中が悲鳴を上げている。


しかし、そんなイクルの存在値を感じてゲルドが。それこそ、一瞬で近接してイクルの胴を薙ぐ。


「ぎっ! あ!がぁぁっぁぁぁぁぁx!」



薙ぎ払われるゲルドの剣を、自分の赤い刀の刀身で掬い上げて受け止める。


だが。 イクルが振りぬいた攻撃を止めようとした時。


イクルの右手が、赤い刀を持ったまま、肘の所からげて、そのまま刀と一緒に飛んで行ってしまった。


更にイクルと言えば。 そのまま超高速の回転状態に入ってしまい。 ゲルドの目の前でクルクルと回ってしまっている。


だが、ゲルドはイクルに向かって追撃をする。


超高速で回転しながらもイクルはゲルドの攻撃を躱す。


「遊んでいる訳では無いようだな。」


「制御しきれてなかった。」


ようやく回転する自身を止めたイクルの右肘から先は無い。


そう思ったのも一瞬。


イクルの肘から先が 一瞬で復元された。



神人かみびとも、無の化身でもあるゲルド。


2人とも、身体の破損や欠損など、一瞬で治せる。


なら何故ミーアの欠損した箇所が治っていなかったのと言えば。


無の化身であるゲルドに、ミーアの欠損箇所がに帰されていたからだ。



なら神人かみびと同士で争えばどうなるのか。


相手の存在値を全て・・吸収しない限りは、神人かみびとの存在は消えない。


存在値さえ残っていれば、次元宇宙にセカイが必要とした時に復活するか。


時間の経過と共に、完全修復された状態で、何処かにPOP湧くする。


それは、次元宇宙が。星が。 神人かみびとを必要とするから、決して神人かみびとの存在を消そうとしない。


神人かみびとが、その存在を消せるのは。


自身の産まれた次元宇宙がに帰された時か。


次元宇宙が神人かみびとを必要とみなさなくなった時。


ミーアは自身の産まれた次元宇宙を亡くしたために。


イクルに降されることが出来た。

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