第63話 神人

と、言う経緯いきさつを話す生来イクル


「へぇ・・・」


「へ、へえぇえ・・・。 何と言うか・・・。」


父さん武彦叔父母さん菜々美叔母が、物凄く微妙な表情で、言葉を詰まらせて返事を返してくれている。


うん・・・。 分かります・・・。


俺も、自分で言ってて、無茶苦茶だってのは理解してるんで・・・。



「端的に纏めると。


お主は、神を凌ぐ存在でありながら。


人でも在る存在。


と、言う事で良いのだな?」


カルドラが、生来イクルに聞く。


「そう言う認識で間違っていないよ。」


「怖い物なしじゃないか!」


武彦叔父さんが言う。


「残念だけど。 神人かみびとには制限が掛かっていてね。


決して、【俺TUEEE】って無双状態じゃないんだなコレが。」


「制限?」


菜々美叔母さんが聞き返す。


「うん。神人かみびとは、確かに神をも滅せられる存在だけど。


その能力チカラは、【神】と【神と同等】か、【それ以上】の存在にしか発揮されない。」


俺の言葉に、父さんと母さんが、わからんと言った風に表情を崩す。


「ふむ。 つまり、【普通の】生命たちには、神人かみびと能力チカラは働かないと?」


さすがカルドラ。 理解が早い。


「そう言う事。 神人かみびと能力チカラは、神とも呼ばれる存在をほふ能力チカラ


それ以外のモノ生命種には、神人かみびとではなく、人としての能力チカラで対応される。」


シオンさんから貰った記憶では。 神人かみびととしての存在値を格上げしていくと。


神人かみびと以外の能力チカラでは、神人を傷付ける事は出来なくなるらしいけど。


今の俺は、産まれたての神人かみびとだから。


かなり存在値が低くて、普通の武器や魔法でも傷付ける事が出来る。


それでも、このフォーリアでは、人類最高値以上の能力値ステータスを保有しているがね。


「一つ、尋ねたいのだが。」


カルドラ生来イクルに聞く。


「お主が、神人かみびとに生まれ変わったと言う事は理解した。


そして、ワシの思っていた通りに、あの魔王ゼアルも、他次元の神と理解した。


だが、それでも。 お主が神人かみびととして、このフォーリアに降り立った理由には乏しい気がする。」


さすがカルドラ様。 星神と言えど、俺の存在意義には疑問を持ちますか。


「そうだね。 普通、星が1つ2つ消滅しようが。


次元宇宙には関係ない事柄です。」


俺の言葉に、父さんと母さんが、陰鬱な視線を俺に向ける。


だけど仕方がない。


言葉の通りに、星の1つや2つ。


いや、数十数百の星が消滅しようとも、次元宇宙にほころびも入らなければ、星の消滅自体は何処かの並行宇宙で起こっている。


それが、次元宇宙のことわり


カルドラも、自分の管理する星が消滅するのは宜しくないが。


それが、次元宇宙のことわりなら納得諦めもできる。


なら、何で。 俺が産まれたのか疑問に思うのも当然。


多分、カルドラも理解しているのだが。 俺の口から確信しんじつを得たいだけなのだろう。


魔王他次元の神の中に。 【無】が宿っているからです。」


俺の言葉に、父さんと母さんは、何だそりゃ?って表情に。


カルドラは諦めたような表情に。


「無ってなんだ?」


武彦父さんが聞いてくる。


「父さん。 消滅って言葉を説明できる?」


「在ったモノが消える。 もしくは無くなる。って感じだな。」


「うん。 それでも、消滅して無くなっても、そこに在ったって記憶は残るよね。」


「まぁな。 無くなっても、そこに在ったと言う記憶は残るだろうに。」


「そうだね。 父さんと母さんが死んで、存在しないとなっても。


父さんや、母さんの記憶が消える訳じゃないからね。」


俺の言葉に苦笑する2人。


「でもね。 無ってのは、無くなるって事じゃない。


もっと根本的な場所ところが違うんだよ。」


俺の言葉に、訳が分からないと言う表情になる。


「無って言うのは。


消えて無くなるのじゃなくて、元からなかったことになるんだ。


父さんと、母さんが。 元から居ない人で、誰の記憶にも残っていない。残らない。


いや、最初から居ないのだから、記憶に残る筈もない。


それが、無って事なんだ。」


生来イクルの言葉に、更に困惑度が増す2人。


「例えば、重力の定義を起こしたニュートンと言う人物(他にも、アリストテレスや、ロバートフックなども存在する)。


仮だけど、ニュートンと言う人物が、無になったとするよ。


すると、どうなるのか?


ニュートンと言う人物が、無になって存在が誰の記憶からも、記録からも消えてしまい。


後世の人類に記録として残るのは、他の人の定説が植え付けられてしまう感じに為るんだ。」


「記録からも消える?」


「そう。 全ての書物と言う記録からも、最初から居なかった事になってしまうんだ。


それが、無って事。


消滅在ったモノが無くなるとかじゃなくて。 言葉の通りに無。 最初から、なにも存在しなかった。」


「それを、今の魔王ゼアルが宿しているの?」


母さんが聞いてくる。


「そうだよ。 まぁ、まだ存在値が大きくない。


多分、生まれたての無って感じかな。」


「その、無ってのに。 お前は勝てると?」


父さんが聞いてくる。


「とどのつまり。 神人かみびとと無は、対極なんだ。


無が存在を無くそうとするモノなら。


神人かみびとは存在を護ろうとするモノ。」



「「はぁあ・・・」」


俺の言葉に、父さんと母さんが、ひときわ大きな息をついて俺を見る。


「それに、この無ってのは厄介な存在でね。


存在値が小さな内は、星を消滅させるくらいだけど。


育って存在値が大きくなっていくと、星を無に還し宇宙をも無に還していき。


更に存在値が大きくなっていくと、やがては次元を越えて並行宇宙を無に還し。


ついには次元宇宙の壁をも超えて、他の次元宇宙をも無に還して行く存在になっていくんだよ。」


「全次元宇宙の危機・・・」


それまで黙っていた、カルドラが呟く。


「まぁね。 でも、それこそ、億とか兆の時間ときの単位じゃなくて。


さらに上の京や該どころか、もっと上の単位かも知れないけどね。」


そう、神人かみびとと、無の存在値上げはイタチごっこ。


何処かで無が消えれば、どこかで神人かみびとも消えている。


あるいは既に、幾つもの次元宇宙を無が無に還していて。


その無を、神人かみびとくだしているのかも知れない。


何処かで、新しい次元宇宙が産まれれば。


何処かで、無が次元宇宙を還す。


なら、一体。 神人かみびとと無とは何なのか。


シオンから受け継いだ記憶には無い。


恐らく、神人かみびとと無の関係を、こうだと言える存在は、始原の神人かみびとのシオンと。


生来イクル神人かみびとして誕生うまれさせた時空神。


それに、創世神と呼ばれる神だけだろう。と、生来イクルは思う。


「さってと。 そろそろ・・・。」


アキト達の所に戻ろうか。と言いかけて、生来イクルは或る事を思い出す。


「あぁ~。 あのさ。 カルドラ様。」


「どうかしたのか?」


「1つ。お願いしても良いかな。」


「内容に寄り蹴りだ。」


「俺の居た地球のさ。 家族に会いたいんだけど。」


生来イクルの言葉に、カルドラが目を細める。


「あっ! いやっ! 別に本人たちに直接じかに逢いたいって事じゃなくてさっ!


夢とか、記憶の中でとかでも良いから、逢えないかなぁ~って・・・。」


今の生来イクルは、神人かみびとに為ったと言っても生まれたての状態に等しい。


次元宇宙に渡る次元跳躍どころか、並行宇宙を移動する次元移動のすべさえも持ち合わせていない。


それらは、これから数百数千の時間ときを生きて、神人かみびとしての能力チカラに目覚めていく。


今の生来イクルは、ただの神と神に近い存在を屠れる存在。ただ、それだけなのだから。


「それくらいなら、構わん。


向こう側には、夢として残るように配慮しておこう。」


そう言ったカルドラの言葉と同時に、目の前に生来イクルの家族が現れた。

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