第61話 神

(・・・ここは?)


果てしなく暗い場所に生来イクルは居る。


一瞬の間、呆けていたが。


自分が死んだ事を思い出す。


(と、為ると。 次は、俺を呼び出したかみと逢うのかな。)


「察しが良すぎるのも面白くないな。」


何処からか、若いとも老いているとも。 それでいて、男性とも女性とも聞こえそうな声が聞こえて来た。


カルドラ?)


「正解。」


 生来イクルの目の前に、白い霧の様な物が現れる。


(この霧の様な物が神様?)


カルドラを見て最初の感想が。それだった


「それは、君が無神論者で。 僕の姿を想像していないからさ。


君たちが、神と呼ぶ存在。 私たちには本来。姿形も性別も無い。


君たち、知的生命体が想像し、描いた姿が私たちの姿に為る。」


(成程ね。 俺が無神論者だから、カルドラの姿が定着していないだけと・・・)


そう思い。 フォーリアのカルドラを祭る教会で見たカルドラ像を思い浮かべる。


教会で祭られているカルドラ像は。 老齢の男性カルドラだった。


カルドラは霧の様な物から、老齢の男性に姿を変える。


「それで。 僕を、このフォーリアに転移させた理由は?」


「物怖じしないね。君は。」


「バカ何で。」


そう言って、肩を窄める生来イクル


どうせ、もう既に死んでいるし。 ナチュラルに、思考まで読まれているんだ。 此処で怖じ気づいていても仕方がない。


ならば。 開き直るしかないでしょう。



「君を、このフォーリアに招いたのは確かに私だ。


だけど、招いたのはる人物の願いでね。」


「違う次元の星に、知り合い何て居ないと思うんですが?」


「なら。 逢わせてあげよう。」


カルドラが、そう言った瞬間に。 男性と女性が、カルドラの横に現れた。


金色の髪に、緑の眼の男性。 金属の軽装鎧を身に纏っている。


女性の方は、オレンジの髪に黒い眼。 そして、ローブ姿。



「よっ! 元気してたか!?」


男性が、俺に声をかける。


「あのねぇ。 死んでいるのよ。 元気な訳が無いでしょう。」


男性の言葉を聞いて、女性の方が呆れた表情で言う。


(あれ? あれ? どこかで会ったような・・・・)


必死に思い出そうとするが思い出せない。


歯と歯の間に、物が詰まったような感じで物凄く気になる。


2人を、ジーッと見詰める。



「何だ何だ。 まだ分からないのか?」


「アナタねぇ。 私達、若返っているのよ。 分かれって方が無理でしょ。」



(若返る?・・・・。 !!)




父さん武彦 叔父さん!? 母さん菜々美 叔母さん!?」



「久しぶりだな。」


「久しぶりね。いっくん。」



そう。 髪色と目の色は違うけど。 昔に写真で見た事がある。 若かりし頃の父さん武彦叔父さん母さん菜々美叔母さん



カルドラの話だと。


俺たちの地球で事故に遭った、武彦さんと菜々美さんは。


カルドラチカラで、フォーリアに転生したらしい。


それも、勇者の末裔としてだ。



そして、当時の勇者(500年前)の仲間になる。


魔王を結界に閉じ込める役の加護持ち5人。


所が。 些細な事故で、加護持ちの1人が欠けてしまった。


この時に、欠けた加護持ちの代わりに、父さんと母さんが、自分たちの命と引き換えに結界を張り。


その間に、勇者が魔王を浄化した。


その時の功績を、カルドラが恩賞として簡単な願いで在れば叶えてくれると言ったので。


父さんと母さんは2人で同じ事を願ったそうだ。


俺が、老衰以外の事で死ぬような事が在れば。 このフォーリアに転生させてやって欲しいと。


とどのつまり。 俺は、帰宅中の電車で寝ている時に。


電車が事故に合うか何かして、本当なら地球で死亡していたと。


カルドラは、2人の願いを叶える為に、俺が死亡したと同時に魂だけを拾おうとした。


だが、此処で問題が起きた。


本来なら、俺はカルドラチカラで転生して、赤子からの人生を歩むはずだった。


だが、転生させようとした時に。


カルドラチカラに、干渉したチカラのせいで。 転生では無く、転移として、この星に来てしまった。



「じゃぁ。 一体、誰が俺を?」


その時。 時が止まった。


俺、以外の時が止まった。


「違います。 正確には、アナタの体感時間感覚を数億倍にまで加速させているんです。」


俺に話しかける声が聞こえた。



 * * * * * * *



一瞬。 カルドラは何が起こっているのか理解できなかった。


自分が支配する空間で、異変が起こったからだ。



「っ!!」


突然、目の前の人物イクルの魂が変化を始めた。


魂だけの存在から、肉体を持った存在へと。



「ぐっ!? ああああああ!!」


突然、生来イクルが苦しみだす。


膝を着き、痛みに耐えるように、両手で身体を抱きしめるようにして。


生来イクル!。」


「いっくん!」


武彦と、菜々美が、突然苦しみだす生来イクルに近づこうとするが。


だが、見えない壁に阻まれて、イクルに近づく事が出来ない。


武彦と菜々美が、カルドラを見る。


「私ではない。 私よりも高位の存在だ。」


カルドラよりも高位の存在?」


この星フォーリアの神はカルドラでしょ!?」


「私は、フォーリアを管理している星神にすぎぬ。」


「星神?」


カルドラの話では、神にもランクが在るそうだ。


最下層の神。 信仰や恐怖から生まれる【宗教神】。


次に、星を管理する【星神】。


宇宙を管理する【宇宙神】。


並列する次元宇宙を管理する【次元宇宙神】。


全ての次元を管理する【時空神】。


そして、全てを産み出したとされる【創世神】。


もっとも。 星に直接関与するのは、星神と呼ばれる神たちで。


星神よりも高位の神たちは、宇宙・次元を壊さない様にしているのだとか。


何せ、カルドラも。 存在自体は知っていても、他の次元の星神以外とは交流が無いそうだ。


その時、痛みで苦しむ生来イクルの動きが止まった。


「いってえぇ~。」


仰向けになり、右腕で顔を押さえるようにして深呼吸を数度繰り返す。


出す声は、ガラガラだった。


「いっくん!」


武彦と菜々美が、生来イクルに駆け寄り、心配そうに生来イクルの横にしゃがみこむ。


「大丈夫か?」


「大丈夫に見えた?」


尋ねる武彦に、聞き返す生来イクル


「全然、大丈夫そうに見なかったな。」


「そう・・・。 いてて・・・。」


顔から腕をどけて、胡坐あぐらをかく生来イクル


「あら、あら。」


「おう。おう。」


生来イクルの顔を見て、武彦と菜々美が、驚きの声を上げた。


「ん?」


武彦と菜々美が驚くのも無理もない。


生来イクルは若返っていたからだ。


おそらく、20代前半と言った所だろう。


「お主。 何に為った?」


生来イクルを見て、カルドラが問う。


「あぁ~、やっぱり解かりますか?」


軽い口調で言う生来イクル

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