第59話 イクル死す
アキトが神速の如く踏み込みで、ゼアルに向かって神の鎧を身に纏い右手に持つ神剣を振り下ろす。
ゼアルは無言のまま、アキトの振り下ろされた剣を、いつの間にか手にした剣で受け止める。
「お前はああああああ!」
怒りに任せて、アキトの理性が飛び。
力任せに、手にした神剣でゼアルに切り着ける。
魔王ゼアルは、顔色一つ変える事も無く。
軽くアキトの剣戟を受け止め流す。
「
「
アキトがゼアルに剣戟を浴びせると同時に、スタンとイライザは左右に別れて、魔王に向かい魔法を放っていた。
放たれた魔法は、アキトと切り結んでいるゼアルに直撃する。
「!!」
魔法が直撃したにも関わらず、ゼアルは無傷だった。
「無粋な真似をするでない! 我は、勇者との戦いを楽しんでおるのだ!」
アキトの剣戟を右手だけで捌きながら、空いている左手をスタンの方に向かって軽く振るう。
それだけで、何かがゼアルの手元から飛び出し、革鎧で守られている腹部を切り裂きスタンの腹部から大量の血が流れ出た。
「
アレスの後ろに姿を隠しながら、ソニアが慌ててスタンに向かって回復呪文を掛ける。
ソニアの魔法で、スタンの傷が瞬く間に塞がっていく。
「助かりました。 ソニア。」
そう言って、気丈に振舞いはするが。
スタンの顔色は宜しくない。
ソニアの回復魔法は、失ってしまった欠損箇所ですら修復できる。
だが、失ってしまった体力や血液までは回復できない。
遠目で見ていても判ったが。
ゼアルの攻撃で、胴体の半分を切断されたのだ。
スタンの足元には、おびただしい量の血溜まりが出来ている。
「スタン! イライザ!」
アレンが、スタンの名を呼ぶ。
それだけで理解しているのだろう。
スタンと、イライザは、アレンの後ろに回り込む。
アレスの盾は、この日の為に新調した
材料は、アキト達が討伐した
ちょっとや、そっとの攻撃では壊れない。
アキトの神剣の攻撃でさえも、十数度の打ち合いには持ち堪えている。
アキトも、ゼアルに対して攻め立てているのだが。
ゼアルは、相変わらず片手だけでアキトの猛攻を受け流している。
「まだ、本気に為れるのか。」
「くっ!あああああああ!」
アキトの剣戟の速度が上がる。
「まだだ。 まだ、届かぬ。
もう、1人、2人くらい死ねば本気になるのか?」
そう言って、大楯を構えるアレスに向かって左手をかざす。
「させるかあああああああぁっ!!」
アキトが左手に向かって蹴りを放つが、それよりも早くゼアルの左手から何かが放たれてアレスの構える大楯に当たり。
大楯を豆腐の様に貫き、アレスの腹部を貫き、アレスの後ろに隠れている
ゼアルと切り結びながら、アキトは仲間の方に視線を向ける。
アレスは痛みに耐えながらも大楯を持ち、それでも踏ん張り切っている。
が。
アレスの後ろの
胸からは大量の血を流して。
「・・・・・」
一瞬の静寂が、その場を支配する。
「ソニアっ! アレスの回復っ!」
その静寂を破ったのはセレナだった。
「
ソニアの回復魔法で、アレスの傷が一瞬で塞がる。
「すまん。」
「イクルっ!」
アレスを回復して、イクルの方に視線を向けるソニア。
だが、
「胸を撃ち抜かれているのよ。 即死よ。」
「そんな言い方!」
「甘えないでっ! 誰かが死ぬのは判り切っていたでしょ! 他の事に気を取られると、次に死ぬのは私たちの方なのっ!」
構える弓は小刻みに震え、怒りに燃える形相で唇を噛みしめ、ゼアルからは視線を外さないセリア。
愛おしい者を殺されて、悲しない者は居ない。
それでも、此処は戦場なのだ。
他の事に気を取られると、待っているのは
その時に泣けば良い。 悲しめば良い。
自分から死ぬような事はしない。
それでも、力及ばず倒れた時には・・・。
《
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