第55話 答え合わせ

その時。 後方で扉が開く音が聞こえた。


後ろに視線を向けると、アキト達。


この場に居るのは、アキトを入れて11人。


アキト、アレス、スタン、ソニア、セレナ、イライザの6人に。


白虎ホワイトタイガーのトーマ。


妖精族フェアリーのシン。


ドワーフのギルガン。


戦闘執事バトルメイドのルカ。


ホーデン王国近衛騎士団長のラガン将軍。


他の数人は、パーシバルの魔力に当てられても普通に立って居られたのだが。


下の階で倒れた人を守ると言う事と、退路の確保と言う名目で残っている。



パーシバルが扉を開けて、アキト達が中に入り目にしたのは。


イクルと、イクルの側の魔人族の女性と、玉座に座る魔人族。


「イっ!? イクルさんっ!?」


「イクル!?」


アキトと、セリアが驚きの声をあげる。


「よっ!」


対して、イクルの返した言葉は軽かった。


「何で!ここにっ!?」


「いや、この女性ひと。 エルレインさんに拉致られてな。


魔王陛下の所まで連れてこられた。」


そう言って。 セリアの問いに、肩をすぼめながら、手の平を上に向けて、両腕を腰の辺りまで振り。


参った。って感じをするイクル。


その様子に、セリアとソニア以外の者は呆れた表情を見せた。


「まぁ、皆も揃ったし。


ちょうど良いので、答え合わせをしましょうか。」


イクルと、アキト達の会話中も、ゼアルは無言のまま、面白そうに見ていただけだった。


「まず、エルレインさん。


魔人族が、他種族を滅ぼす事で弊害が出る事は理解されていますよね。」


いつの間にか立ち上がって、ゼアルの方を向いて黙っているエルレインに話しかけるイクル。


だが、エルレインは黙ったまま答えようとはしない。


「理解はしているけども、御自分の口からは言いたくない御様子なので、僕が話しますね。」


そう言いながら、何気ないげなく歩きだして、アキト達の方に寄っていく。


その際に、ちらりとパーシバルを見るが話しを始めた。



この星は、自分イクルたちの住む地球と似ているようで違う。


確かに、地球でも戦争は起きているし。


過去に、違う種族(原住民)を滅ぼす事柄も起こしている。


それは、このフォーリアでも同じ事で。


種族間での争いで、根絶した種族も在る。


だが、普通の戦争での大半の目的は領土の拡大。


自分たちの土地では手に入りにくい物を、領土を奪い手にする事で、自分たちの国を潤そうと言う理由に為るのが多い。


この星フォーリアでも、それは同じである。


まぁ、もっとも。 そんな欲を出すのは、大半が人族なのだと言うのが何とも困った所でもあるのだが。


所が。 この星フォーリアには、地球と大きく違う所が1つある。


何かと言うと。 地球の人ならば【魔法】と言うだろうがハズレだ。


では、何かと言えば。


魔獣と魔物の存在だ。


魔法は、地球で言う所の科学と思って良い。


魔獣も、野生動物だと思えば、まだ何とか範疇内だ。


魔獣の血肉は、貴重な食材にも材料にもなる。


ところが、魔物。


これだけは違う。


魔物は、全種族共通の【敵】なのだ。


魔物は、全ての種族に等しく襲い掛かる災害。


魔物達との対話は出来ない。


意思の疎通も不可能。


何処から生まれて、どう言った理由で人を襲うのかも不明。


1つ判っているのは。


魔物達は、この星フォーリアの命ある全ての生命を奪うだけの存在。


それが魔物。



今の状況で、この星フォーリアが平和に見えるのは、人族、魔人族、獣人族、亜人族。


その全ての種族たちが、協力して魔物達を駆除しているからだ。


実際の所。 魔物たちが居るから、大陸間での戦争が勃発しにくいと言ってもいいだろう


魔人族が他種族を滅ぼす事が、1つの種族だけなら、かなり際どくなるが均衡は保たれるかも知れない。


2種族、全種族。 魔人族以外の種族の根絶なんてしてみろ。


魔人族だけで、魔物全ての対処が出来るのか。


答えはNOだ。


1種族を根絶させるだけでも、残った種族全体を脅かすかもしれないのに、魔人族以外の他の種族を滅ぼせば。


それは、この星フォーリアの生命の根絶にも繋がりかねない。


だからなのだろう。


魔人族以外の種族の根絶。


そんな事はしない。


実行すれば、自分たちも危うくなるのだから。


この星フォーリアの国の重鎮たち(主に人族)は、魔人族が他種族の根絶などするものかと思い込んでいるのだ。


その結果が、いま人族の大陸で起きている。 貴族たちの反乱。


呆れて物も言えなくなるよ。


獣人族や亜人族は、基本的に人族ほどの権力や地位に固執する者は少ない。


全ての亜人族と獣人族と言う訳では無いが。


ここ迄、一気に話す。



「面倒くさいので、ハッキリ言いましょう。」


一呼吸おいて、ゼアルに視線を合わせるイクル。


「陛下。 貴方は、この星フォーリアの生命を滅ぼしし尽す気ですか。」

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