第42話 災難は突然に:3

「それじぁ。 開幕は、イライザと私で魔法を打ち込んであげるわ。」


「わかった。」


セリアの言葉に頷きながら答えるイライザ。


「魔法のタイミングは任せる。味方に当てないでくれよ。」


ビルが注意を促す。


「行動開始っ!」


ビルの言葉で、3方向に向かって散らばる部隊。



「集え風。」


イライザが、キュプロス達の少し上を指差し力ある言葉を紡ぐ。


「集え光。」


セリアも、キュプロス達に向かい指差し力ある言葉を紡ぐ。


2人の指先に魔力が集まる。


魔法名を言わない限りは、詠唱の段階力ある言葉で待機できる。



「「「ガアアアアアアッ!!!」」」


ビル達の姿を見て、キュプロスが咆哮を上げた。


切り裂けウィンド・バースト!」


貫けレイ・ライン!」


イライザの魔法が、魔物キュプロスたちの上空から魔物たちを襲い体中を切り刻む。


セリアの魔法が、魔物に向かって行く騎士たちの合間をうように光がり抜け、魔物たちの身体を貫いていく。


イライザとセリアの攻撃で、豚人オーク16匹と、大鬼オーガ6匹が倒れた。


魔法を唱え終えた2人は、魔物たちに向かって駆け出した。



 * * * 視点:アキト * * *



イライザさんと、セリアさんの魔法攻撃で、キュプロス達が慌てふためいている。


僕は、豚人オークオーガを無視してキュプロスに迫る。


キュプロスが、僕めがけて巨大な棍棒代わりの武器を叩き付けるように振り下ろす。


僕は、左腕を目の前にかざして、その棍棒モドキを左腕1本で受け止める。


「グガ!」


自分達よりも、はるかに小さな生き物が、自分の攻撃を受け止めた事に驚きの声を出すキュプロス。


久しぶりの大型の魔物との戦闘で、アキトが昔の事を思い出して苦笑する。



初めて大型の魔獣と戦った時は、身体強化フィジカル・マジックは使っていたが、物質硬化マテリアル・マジックの魔法まで使っていなかったせいで。


キュプロスサイズの魔獣の攻撃を受け止めたのは良いけど、腰近くまで両足が地面に埋まってしまってしまい、かなり慌てた記憶がよみがえる。


良く、漫画やアニメだと。


巨大な敵の攻撃を受け止める主人公たちが居るが。


主人公たちの、足を着けてる地面とかが影響を受けないってのはオカシイ色々と無理が在るよね?


アニメや漫画だと、巨大なクレーターが出来たりしてるけど、アレも無理出来ない


実際に、受け止めて理解したよ・・・。


地面に刺さるからね・・・。 杭のようにっ!


巨大な魔獣や魔物と戦う時に使用するのが、物質硬化マテリアル・マジック


自分を中心に、半径10メートル四方に魔力を流し周囲の物質の硬度を強化する魔法。


この魔法を使用しないで大型の敵と戦うと、攻撃を受け止めた時に、アキトの様に身体が地面に埋まりこんでしまう。


中型・大型の魔獣と魔物も、物質硬化魔法マテリアル・マジックの魔法は常時発動していて。


極小の範囲で使っている為に、自分の体重で地面に脚が埋もれると言う事は発生しない。


また、魔力の質と言うのも、指紋と同じように全く同じ物が存在しないために。


物質硬化魔法マテリアル・マジックの効果が干渉し合って対消滅するようなことも無い。


この物質硬化魔法マテリアル・マジックが、騎士と兵士を分けると言う判断基準でもある。


そして、アキトは思った。


地球での、アニメ制作者や漫画家に言いたいと。


実際は、 埋まるからねっ! って。


「埋まるんだからねっ!」


思っていたことを、叫んでしまいながら。


左腕で棍棒モドキを力づくで押し返す。


アキトに押し返されたことで、キュプロスが態勢を崩す。


その隙を見逃さず、キュプロスに向かってジャンプして、右手に持つカルドラから貰った剣でキュプロスの身体を真っ二つに上下に切り分ける。


黒い霧となって消えていくキュプロスを見ながら。 アキトは思う。


大きかったとアレが


そして、新たに悩む。


何で、スキルも使っていないのに。 刀身の長さよりも大きいキュプロスの身体を、刀身で真っ二つに出来るのだろうと・・・。

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