第35話 三大陸合同会談:3
獣人族、亜人族の町村の被害状況も同じく生存者の数は少ない。
「戦争をしておるんだ。 市民に被害が出るのも仕方があるまい。」
アブノ外務大臣次官の言葉に、過半数の代表者達の視線が刺さる。
当の本人は、その視線に気が付いてさえいない。
一緒についてきた、護衛の騎士の方が恐縮しているのにだ。
俺も、内心ではイラっと来ているが。 今は我慢だ。
まだ、怒る所ではない。
「そうですね。 その
それでは。 次に、こちらの資料に目をお通しください。」
次に渡した資料には。 魔人族の兵士たちが
「これは・・・」
「言いたい事はあると思いますがっ! いまは、お静かに願いますっ!」
代表たちが何かを言いかけた所で、大きな声を出して、出しかけた言葉を止める。
「アブノ外務大臣次官。 この資料を見て、どう思われますか?」
「どうとは。どういう意味だ。」
「いえ。代表者の方のうち。 その資料を見て、顔色を変えなかったのは。
アブノ外務大臣次官と、
何とも感じられなかったのかと思いまして。」
「ふん。 田畑や家畜にも被害が出るのは当たり前だろう。」
「うむ。 俺としても同じ意見だが・・・・。」
そこまで言って。トーマが、同じ獣人族の代表者たちの表情を伺う。
「すまん。 同族の表情を見るに。 何かあるのだろうが。 正直、俺には分からん。
良ければ、その理由を教えてはくれぬか。」
「ふん。これだから、獣人族は・・・。」
トーマを馬鹿にする。 アブノ外務大臣次官。
「お・・。」
「失礼ですが。アブノ
トーマの言葉を遮り、アブノ外務大臣次官に言う。
トーマを押さえるように、
「さっきも言っただろう。 人にも作物にも被害は出るのは当たり前だと。」
ガタっと。 音がしたので、音の方を見ると。 アキトが椅子から腰を浮かしかけていた。
それをアレスが、両肩に手を置いて、アキトが立ち上がるのを押さえている。
声を挙げていないだけでもマシな方か。
もうちょっと我慢しててくれ。
「それでは、アブノ卿の護衛の騎士様。 失礼ですが、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「ノーマ・ルーダと申します。」
俺の言葉に、護衛の騎士が、一瞬表情を変えるも、きちんと答えてくれた。
「それではノーマ殿。 ノーマ殿は、この数字を見て、思い当たることはございませんか?」
俺の言葉に、ちらりとアブノ外務大臣次官を見る。
「合っていようが、間違っていようが構いません。 必要なのは答え合わせをして、この場に居る人たちに知って貰う事なのですから。」
「判りました。 私の見解を言わせていただきます。 できれば、当たって欲しくないのですが・・・。」
少しだけ間を開けて語りだす騎士ノーマ。
「この資料に目を通して、内容を考えるに。 魔人族と言う種族以外の、全ての種族の根絶・・・・。」
ノーマの言葉を聞いて。
「何を言っておる!ノーマ! そんなバカげた妄想を!」
「しかし!アブノ外務大臣次官! 私には、それ以外の考えが浮かびません!」
「何を根拠に言っておるのか貴様はっ!」
「アブノ卿。 理解しておられないのは、もはや貴殿、お独りだけですよ。」
そう。基本、脳筋のイケイケの獣人族の
「そこの虎獣人も理解しておらぬかったではないかっ!」
「トーマさん。 今なら、理解しておられますよね?」
「ああ。 そこの騎士殿の言葉で理解した。」
「ならっ! 言ってみろっ!」
怒りの形相で、大声でトーマに言い放つアブノ外務大臣バカ次官。
「簡単な事だ。 獣人族の中にも。 亜人族の中にも。 人族の中にも。
トーマの出した答えにさえ、何を言ってるのだコイツ?っと言う表情を浮かべるアブノ外務大臣バカ次官。
「ご理解しておられない様なので、率直に申し上げさせていただきます。 アブノ外務大臣バカ次官殿。」
「きっ、きっ、きき!貴様! 誰に向かってそんなことを言って!」
「黙れっ!」
言ったのは俺ではない。 ホーデン王だ。
「ホーデン王! それは我が国に」
「黙れと言ってるのが判らんのかっ!」
アブノ外務大臣バカ次官を睨みつけるホーデン王。
「先に言っておくがアブノ卿。 今回の会議の重要性を認識しておらぬのは、お主だけだ。」
「何をおっしゃられるのかホーデン王! 私はスラブ帝国の代表として此処に来ているのですよっ!」
「はぁ・・・。」
アブノ外務大臣バカ次官の言葉に、ホーデン王が大きな溜め息をつく。
「一つ、大きな勘違いをしておられるようなので、私から言わせていただきます。 アブノ外務大臣バカ次官殿。」
「貴様!」
アブノ外務大臣バカ次官の言葉を聞き流して言葉を続けるイクル。
「今回の会議に置いて。 人族の各国と、獣人族、亜人族ともに。 国や種族の代表者に、お集まりいただいております。
その中で。 なぜ、貴方がおられるのでしょうか?」
「私は! スラブ帝国の外務大臣次官だっ! 私が、国の代表として此処に居るのが何がおかしいっ!」
「だから、それがオカシイのです。アブノ外務大臣バカ次官殿。」
アブノ外務大臣バカ次官が、何やら言ってるが、俺は無視して言葉を続けた。
「おい。バカ次官。 ハッキリ言ってやる。 今回の会議の、ホントの主催者は、スラブ帝国のマゾダ外務大臣だ。」
「なっにゅっ!」
真っ赤な顔から、一気に顔色が蒼くなっていくバカ次官。
スラブ帝国マゾダ・カラモット外務大臣。 この人物から。
今回の会議で、他の種族と他国の意見を、是非とも聞いておきたいと。
マゾダ外務大臣からの手紙がホーデン王と、各人族の国と、種族代表者たちに届いた。
そして、各国代表と、種族代表者たちに。 会談の日付と場所を段取りしたのがホーデン王とスミニ王。
なので、表向きには、ホーデン王とスミニ王が主催と為って要るが。 実際の主催者は、スラブ帝国のマゾダ外務大臣と言えるだろう。
「で。 なんで、アンタが
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